The Last Stand   作:丸藤ケモニング

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今回は某逆脚屋さんから一部アイデアを貸出ししていただきました。
具体的には『あなたの隣のナザリーマート♪』と某ssのキチガイ三人集の一部ですね、はい。

コラボ、なのか?

ふんわりと読んでいただければ幸いです。

本家は面白いけどこっちは面白くないよ。


15,幕間 ナザリーマートの恐怖

 カルネ村の騒動から三日経った。

 俺ことリュウマは暇をしている。ん?もて余していると言うのが正しいだろうか?

 そんな風に考えるほどに、暇である。

 もちろん、俺に割り振られた仕事はあるんだ。トブの大森林の調査って言う、外に出れる仕事がね。けど、一緒に行くはずだったアウラが真顔で、

 

「いやぁ、大丈夫ですよリュウマ様?正直レンジャー技能持ってないから役に立たないなぁ、とか思ってませんよ全然大丈夫ですから大墳墓の中で休んでてくださいよ。決してアルベドと茶釜様に何か言われた訳じゃないんですよホントデスヨホントデス」

 

 いや、あれは真顔じゃなかったな。死んだ魚の目だったような気がする。いったい、あの二人に何を言われたんだか。

 

「あうわー、暇だわ~」

 

 自室のベッドに飛び込むと、フワフワのお布団が俺を柔らかく包み込んでくれる。アモーレ!しかし睡眠無効の指輪をつけてるので眠れない。

 そんな時だった。俺の部屋の扉が全く遠慮なしに、コンコンよりもゴンゴンよりな感じで叩かれたのは。

 

「失礼するっすよ~。リュウマ様、一緒にご飯食べるっすよ」

 

 ルプスレギナだった。そう言えば、俺の専属メイドになったんだっけか?しかも自分で立候補したらしい。何でだろうと思って尋ねたら、

 

「リュウマ様には気を使わなくていいっすからね!一緒にご飯とかタメ口きいても怒られねぇっすもん!」

 

 なんだとこの狼!その通りだ。堅苦しいのは抜きにしよう。俺の精神の安定のために。念のために言っておくと、モモンガさんの専属メイドはいない。どうやら持ち回りで複数のメイドがお世話をしているらしい。リア充か、ヘルニアになってしまえ。

 

「今日のご飯はどこで食べるっすかねぇリュウマ様」

「いや、メイドなら飯を持ってこいよ」

「面倒だから嫌っす。さぁさぁ、こんなところに引きこもってないで、ご飯食べに行くっすよ!」

 

 別に引きこもっているわけではない。そう言う俺を引きずって、ルプスレギナは上機嫌でご飯を食べに向かうのだった。

 結局ご飯は食堂で取ることになった。

 俺の前にあるのは、本でしか見たことのない純然たる純和食。湯気をあげる味噌汁は、出汁の芳醇な香りをうんぬん、白米は艶やかにうんぬん、アジの開きはその身から芳醇な油以下略、この青菜のおひたしなど省略である。まぁ、理屈抜きで旨い。こんなのはあっちじゃ高級品だからな。今のうちにちゃんと味わっておこう。

 目の前で、山盛りの肉をモギャリモギャリと咀嚼して行くルプスレギナ、とエントマ。なんか珍しい組み合わせだと思ったらさに非ず、比較的一緒にご飯を食べることが多いんだそうな。肉好きと肉好き、共鳴しあうのか。

 お味噌汁をズズッと啜りこんでいると、エントマがこっちを見てた。仮面蟲だから表情は変わらないが、なんか言いたそうな雰囲気だ。で、この雰囲気と言うのを、俺はここ数日何度も味わっている。あれだ、俺が恋愛後見人だかなんだかと呼ばれ始めてからだ。

 

「なんだ、エントマ?何か聞きたいことでも?」

「え~とぉ、あ、違うぅ……リュウマ様に折り入ってお聞きしたことがあります」

「エンちゃん普通に話して大丈夫っすよ、リュウマ様なら。モモンガ様に普通に話しかけたら、アルベド様に下顎もぎ取られるかもしれないっすけど」

 

 うん、まぁ、普通に話しかけてもらって構わないけど、アルベド、どんだけ怖がられてるんだ。

 

「あぁ、うん。エントマ、普段通りに話してくれていいぞ?そっちの方が、俺も肩がこらなくていいからな」

「そぉですかぁ?ではぁ、そぉさせてぇいただきますねぇ」

 

 うん、可愛い。出来ることなら本来の顔で言っていただきたいものです。

 俺がそんなことをハスハスしながら考えていると、エントマが可愛く首をかしげた。思わず俺も首をかしげる。なぜかルプーも。

 

「ご相談なんですけどぉ、実はぁ、好きな人が出来ましてぇ」

 

 ああ、はいはいそんなこったろうと思いました。しかし、部下の相談だ。しかも相手はエントマ。食欲の化身、蟲愛でるメイドなどの呼ばれ方をする彼女が恋愛、これは応援せねば。

 

「ええと、そいつはどこのどいつだ?」

「恥ずかしいぃんですけどぉ、そのぉ……デミウルゴス様ですぅ」

「なるほど、デミウルゴスか、デミウルゴスかぁ、デミウルゴスゥ?」

「はいぃ」

 

 ええ~、予想外の人だったよ。思わず救いの手をルプーに!あ、ダメだ。ルプーも驚いてる。

 

「これは意外だったっす!で?で!?どこが良かったんすか?」

「興奮しすぎだ、ルプー」

「ぐえっ…!」

 

 詰め寄るルプーの後頭部に手刀を叩き込んだら、そのままテーブルに顔を叩きつけられるルプー。やり過ぎたかな?

 

「まぁ、恋愛は自由だと発言した俺がエントマを止める理由は無い。だから、いつでも相談に来てくれ」

「ありがとぉございますぅ。ではぁ、ですねぇ……」

 

 そうしてエントマとしばらくの間恋愛相談をした後、ルプーと一緒に食後のコーヒーをのんびりと飲んでいたら、今度はやまいことユリが現れた。しばらく俺たちに気づかない二人を観察することにする。

 

「料理長、僕はオムライス五人前」

「私もオムライスを二人前で」

 

 二人とも、よく食うなぁ。なぁ?とルプーに言ったら、

 

「いやぁ、ユリ姉はともかく、やまいこ様は毎回あれくらい食べるっすよ」

 

 と、言う返事を聞けた。あれか、やっぱ半魔巨人だからか、よく食うのは。

 そんなことを話していたら、やまいことユリが俺たちの前に座った。

 

「ちょうど良いときに見つけた」

「え?あ、はい。あれか?仕事か?」

 

 俺がワクワクしながらそう聞くと、やまいこは頷いて、無限の背負い袋から何やら四角い箱を取り出した。一面にはボタンの類いが幾つか、一面には水晶板が、一面には丸っこい水晶玉が。はてこれは?

 

「るし★ふぁー作、動画撮影機~」

 

 うん、某猫型ロボットな、似てない。ユリ、なんで拍手してるのかね?いや、待て、なんか不穏な名前が聞こえたような。

 

「るし★ふぁーさんが作ったのか、これ?」

「うん、そう。腐れゴーレムクラフターが、ゴーレムが暴れているところを撮影するために作ったって。後に僕にくれたもの」

 

 そう言いながら、俺の手の上にこれを乗せてくるやまいこ。なんだ、危険性の確認でもしろと言うのか。

 

「一応お仕事としては、これを使って各階層を撮影、イメージビデオを作ること理解した?」

「OK理解した。理解できないのはなんでそんな仕事をするんだってことだな」

 

 その言葉に、待ってましたとばかりに仕事の内容と経緯を教えてくれた。

 物凄く簡単に言うと、この先様々な種族をここに招き入れる可能性もあるが、いちいち案内するのが面倒だから、動画をつくって各階層の案内の代わりにするのだとかなんだとか。まあ、第八階層なんか危険極まりないし、第五階層や第七階層なんて、普通の生物じゃまず入れないしなぁ、これを作っておくと、いざというとき役に立つかもしれない、か。

 

「分かった、暇してたから引き受けるわ。〆切は?」

「特に決まってなかったよ。まぁ、暇なときにでもやっておいて」

「了解、んじゃぁ、行きますか、ルプー」

「ういっす。ほいじゃユリ姉、また後で」

「気を付けて行ってきなさい。ちゃんとリュウマ様のフォローをするんですよ?」

「分かってるっすよ。それじゃぁやまいこ様もお疲れさまです」

 

 モグモグオムライスを頬張るやまいことユリに手を振りながら、俺たちは一路、動画の撮影に向かうのであった。

 

「さて、では第九階層から始めようか」

「ういっす!……って、なんでリュウマ様がそれを構えてるんすか?」

「そりゃぁおめぇあれよ。むさい男が階層を案内するよりも、美人かつセクシー、笑った顔が超キュートな女の子が案内した方が、見ている奴らが皆喜ぶってなもんだぜ」

「ええ~、そうっすかマジっすか~?」

 

 まぁ、ちなみに八割くらいはマジだ。ついでに映像的にも女性がやった方が受けがいい。その点、ルプスレギナは本人の前では絶対言いたくないが、美人だこれで受けないわけがない。

 とりあえず言いくるめて、まずは客間、笑顔を振り撒くルプー。いいねいいね!

 そこから次は、この階層でも結構重要なプレイルームの案内だ。

 最初はなんかショッピングモール(超豪華)だったんだが、皆が悪のりした結果、城の中に城があると言う意味の分からない状態へと変貌して、今のシックで落ち着いた店が並ぶ一角へと進化を遂げたと言う妙な場所である。

 キラキラとしたちょっとした町並みの中、ルプスレギナが笑って各場所を説明し、それと同時に遊んだり試食したり試飲したりしながら、撮影は順調に進んでいった。

 そう、この階層で最も危険な場所へとやって来るまでは。

 

 第九階層の一角にある、やや古い形の四角い建物がある。看板には『ナザリーマート』と書いてある。そう、この建物こそ、この階層で揃わないアイテムなどあんまり無い!と豪語するアイテムショップであり、そして有数の危険地帯なのだ。ここに到達した瞬間、俺は装備していた防具や武器一式を、聖遺物級装備へと慌てて切り替えた。気がつけば、なぜかルプーがこっちを見ながら顔を赤くしていた。どうやら、俺の着替えを見て恥ずかしがっているようだ。だが、恥ずかしがってもいられないのが、この『ナザリーマート』なのだよ、ルプー。

 

「ええと、なんで着替えたっすかリュウマ様」

 

 その問いに、俺は無言で返し、そのまま撮影機器を、そこから生えてきた三脚で固定、『ナザリーマート』全体が収まるように設置して、ルプーに向き直る。

 

「いいか、ルプスレギナ。あの店に入って危険だと思ったら即座に脱出しろ。無理なら俺を呼べ。俺が、守ってやるから」

「うぇっ!?い、いきなりなんすか、もう……じゃ、ねぇっすよ!」

「あそこの店長は比較的話が分かるからあれだが、他の客に気を付けろ……では、行け!」

 

 なんかうえぇ、とか言ってたが、大丈夫だ、ルプスレギナなら。

 たぶん。

 

 ルプスレギナが店の入り口に立つと、その扉が音もなく開く。『お、お邪魔しますっす~』と言う声が店の中に消えていった。

 数秒後。

 

『お~い、パイ食わねぇかぁ!?』

『は、はぁ!?』

『外にいるやつもおいでぇ。さもなきゃこいつにお見舞いするぞぉ!?』

 

 やばい!今日はあのキチガイどもがいやがった!

 俺は、撮影機材を置いて店の中に駆け込んだ。

 

~以降はダイジェストでお送りいたします~

 

『新商品のプリンうどんかき揚げです』

『なんじゃそれ!?』

『おごごごぉぉぉぉぉ!』

『待て!ルプーに手を出すな!』

『プリンっすね……いや、うどんか?』

『焼きプリンでございます』

 

『だからねぇ、リュウマよぉ。あのシャルティアのバカップリ、なんとかしてくれよぉ』

『いや、店長、俺にそんなことを言われても』

『そんなことよりこの皮剥ぎ君EX、いかがですか?』

『う、うおおおお、やめろ俺をそこに突っ込むな!ぎゃああああああ!』

『あ、その顔、超萌えるっす』

 

『議題は、このずんだ餅をどうするかだ』

『それな』

『ばっかお前、あれだよ、リュウマに食わせればいいんじゃね?』

『それな』

『それなじゃねぇよ、俺にふるな!』

『大丈夫だ、ドンと構えなリュウマ』

『ちくわ大明神』

『それな』

『誰だ今の』

 

『あ、すまん店長。商品落っことした』

『なんですって?どうやら死にたいようだな』

『なんでそうなる!落ち着け店長!』

『お前には、どうやらお見舞いせねばならないようだなぁ』

『ま、待て、それは例の!?』

『おい、リュウマぁ、パイ食わねぇかぁ?』

ドスンドスンバキンバキンスットコドッコイゴスンゴスン、スパァァァァン!!

 

 ナザリーマートの扉が開く。それと同時に全身クリームとパイにまみれたリュウマが放り出されて地面に転がる。その後、ホクホク顔のルプスレギナが無傷で出てきて、店の中から『ありがとうございました』と言う声が聞こえたところで、映像は途切れてしまった。

 

 

 

「ああ、酷い目にあった」

 

 具体的何をされたのか言いたくないようなことをされた。だからあの店にいきたくないんだ。俺がブツブツ言ってる横で、ルプーが終始ニコニコしながら歩いている。

 

「いやぁ、めちゃくちゃ面白いところだったっすね。またいきましょうリュウマ様」

「だが断る!」

 

 そう言いながら俺たちが食堂に戻ってくると、やまいことユリが待っていた。優雅に紅茶を飲みながら、だ。

 

「ほれ第九階層は撮影したぞぉ」

「お疲れ。それで疲れてるところ悪いけど、モモンガさんが僕たちだけで会議するから集合するように、だって」

「マジかぁ……あ~、じゃぁ、行くか」

 

 緊急だなぁ。俺達は頷きあって席を立つ。

 

「じゃ、ルプー、ご苦労さん。通常業務に戻ってくれ」

「了解っす!」

「ユリ、付き合ってくれてありがと。またよろしくね」

「もちろんですやまいこ様。それでは、いってらっしゃいませ」

 

 二人のメイドに見送られながら、俺達は指輪を起動させて円卓の間に移動するのであった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 二人が指輪を起動して消えたのを確認して、ユリは自分の妹に顔を向ける。いつも通りの天真爛漫な笑顔で、二人が消えた地点を見ていた。

 

「お疲れさま、ルプー」

「お疲れさまっすよ、ユリ姉」

 

 いつも通りの会話を済ませ、二人は揃って歩き出す。歩いている間も、ルプスレギナは何があったかを楽しそうにユリに語って聞かせていた。反対に、ユリは聞けば聞くほど頭が痛くなっていく気分だった。

 

「ルプー、あれほど仕える主人を守りなさいって言ってるでしょう?しかもパイって何よパイって」

「パイはパイっすよ。まぁ、あの人達が投げたら岩を砕くっすけどねぇ。それを受けて平気なリュウマ様、まじ至高のお方っす」

 

 笑いながらそう言うルプスレギナに、ユリは深々とため息をついた。そうして分かれ道についた二人は、軽く声を掛け合って別れるのが常であったが、ユリは言葉を吐き出した。

 

「ルプー。リュウマ様はお優しい方」

「そうっすねぇ。知ってるっすよ」

 

 快活に答えるルプスレギナに、ユリはもう一回ため息をつく。

 

「そうね、今のあなたを許してるんだからわかってるのよね。なら、あまり細々と言わないけど、一言だけ。あまり調子に乗ると、リュウマ様に見捨てられるかもしれないわよ?」

 

 笑顔が凍りついた。それを見届けて、ユリはもう一回だけため息をついてその場から離れる。

 置いていかれたルプスレギナは、凍りついた笑顔のまま、しばらくの間、廊下に立ち尽くすのであった。

 

 




そしてギャグは難しい。

あ、面白くはないですよ、ええ。

では次回。

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