The Last Stand   作:丸藤ケモニング

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あ、ありのまま起こった事を言うぜ……!
アイデアが出ないから凍結させてあったやつを書いてみようとしたら書き上がって投稿準備が完了していた……!
手癖とか二次書いてるやつ特有の病気とか、そんなちゃちなもんじゃねぇ……!
もっと恐ろしい何かの片鱗を味わったぜ……!

そんなわけで再開しますぅ。


14,人であること⑥世界征服

 カルネ村を襲おうとしてた陽光聖典のボンクラどもをナザリックに丁重に招待した後、俺たちはカルネ村へと戻ってきた。

 どうやらガゼフ戦士長たちも無傷で生還したらしい。なんか、一緒に行ってた姉妹の雰囲気が非常に悪いのが気にかかるなぁ、俺。いや、あの槍渡して性格豹変させたの俺だけどさ。

 向こうでモモンガさんとガゼフ戦士長が話している。まぁ、トップはトップに任せて、俺は一応性格豹変させちまったエンリとネムの所に行くことにしよう。あの二人のギスギスした空気が気になるしな。

 エンリとネムは、村人や戦士長の部下から離れたところで、なにか口論をしていた。あ、いや、口論じゃないな。エンリが一方的にネムを叱っていると言う所かな?

 足音を消さずに俺が近づくと、エンリやネムが反応するよりも早く、エンリの側で大人しくしていた魔獣-いや、実は妖精らしいんだけど-の方が俺に気がつき、威嚇の唸りをあげる。しかし、エンリが手でそれを嗜めると、大人しく借りてきた猫みたいになった。しかしながら、あの目は確実に俺を警戒しているだろう。いいだろう、かかってきてみろ、ブッ飛ばしてやる。

 

「これは、リュウマ様。どうしたんでしょうか?なにか御用ですか?」

「ああ、いや、あれだ。その、なんつったらいいのか……」

「もしかして、ネムと私の事についてでしょうか?」

 

 真っ直ぐこちらを見ながら、エンリが簡潔にそう言った。しょうがないから頷いて見せると、あからさまに溜め息をついて、口を開いた。

 

「お恥ずかしい話ながら、妹が、貸し与えた子猫を使って敵兵士をなぶっていたので、お説教をしていた所なんですよ」

 

 誠にお恥ずかしいとか言いながら、エンリがもう一回溜め息をついた。……ん?なんか今、妙なことを言ったような?

 

「貸し与えた?え?何を?」

「え?ですので、リュウマ様から下賜されました、この槍で召喚した火炎猫を、妹の守りにつけているのですけど」

「へ、へぇー、そんなことが出来るのか、知らなかった」

 

 あからさまに道具の性能やらが変わっているような気がするなぁ。後でモモンガさんとチェックしとかないとな。それはそれとして。

 俺は、ネムの前に座り込んで、落ち込んで俯いているネムに声をかけた。

 

「なぁ、ネム」

「……あい……」

「なんで兵士をなぶったりしたんだ?よろしくないぞ、そう言うの。そう言うことをやって良いのはな、お前やお姉ちゃんに危害を加えようとする奴等だけだぞ」

「だって、あいつら、村のひとたちを危ないめにあわせようと……」

「そーだなー。だけどな、戦士長もお姉ちゃんも、モモンガさんや俺ややまいこもいただろう?皆強いから、お前がそう言うことをする必要はなかったんだ。分かるか?」

「……あい……」

「よしよし。エンリも、もうこれでいいだろ?」

「少々納得できないところもありますけど、大丈夫です」

 

 本当に納得してないらしく、エンリは不承不承といった感じで頷いてくれた。よかったよかった。兄弟姉妹の仲が悪いのは、ちょっと見てて切なくなるからなぁ。茶釜さんとペロロンチーノは除く。

 

「リュウマさん、そろそろ行きましょうか?」

 

 話が終わったらしいモモンガさんが、俺に声をかけてきたので、二人に別れを切り出してその場から離れる。

 二人が何度も何度も声をかけてくるのに手を振って答え、モモンガさんとアルベドに合流すると、モモンガさんがひとつ頷いて、

 

「帰るか、我が家に」

 

 俺達にのみに聞こえるような声でそう言った。

 余談だが、アルベドが嬉しそうにピョンと跳ねながら頷いていたが、完全武装だからかなり奇妙だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 モモンガさんの絢爛豪華な自室にて、我々四人とアルベド、パンドラズ·アクターが集まり報告会なうである。

 カルネ村の一件で捕獲した人間数十人、その内、最初に捕獲した騎士の扱いに関しては、後々捕獲した陽光聖典の方が重要度が高かったため、それぞれ人体を欲しがったところに回されることになった。主に恐怖公や餓食狐蟲王の所とか。まぁしょうがないね。弱いものを殺していい気になってる連中だからね。いつかこの台詞がこっちに返ってこなければいいんだけどねぇ。

 

「捕獲した陽光聖典についてですが、隊長のニグンという男に関しては、イタズラに拷問を行わず懐柔するようにとのお達しですので、牢に繋いでおります。また、残りの隊員については、氷結牢獄に送り、ニューロニストに一切の裁量を任せております」

「ニューロニストなら問題はあるまい。ただ、死体については……」

「ちゃんと伝えてありますよ、モモンガ様」

「うむ、ご苦労だったアルベド。さすが守護者とうか……」

「妻としては当然の気配りでございますよ」

「あ、はい……」

 

 さすがアルベドだ。押して押して押しまくるな。いいぞ、もっとやれ。その様子を、なんとも言えない雰囲気で見ている茶釜さん。あれくらいやらなきゃ駄目だぜ、茶釜さん。

 二人がいちゃいちゃしているのをそれぞれが色んな思惑で見ていると突然、金属音が鳴り響いた。

 発生源を見れば、部屋の隅にロングソードが転がっていた。そこへ走り込んでロングソードを華麗なポーズで拾い上げるパンドラズ·アクター。

 

「ふぅむ、通常手段による召喚に関しましては、どうも規定時間以上の顕現は難しいようですぞ我が主!」

 

 踵を鳴らして帽子を指クイ、その後敬礼と言う、無駄のない洗練された無駄な動きで無自覚にモモンガさんの心を抉るパンドラを見ながら、俺はふと考えた。あの槍で召喚されたモンスターは顕現限界がなさそうだ。ゲーム内でも無かったけど。ならば、スキルに書かれているフレーバーテキストはどうなんだろう?無論、殆どはフレーバーテキストと言うよりはスキルの説明で終わってしまっているが、なんかスペースが空いたから書いてしまえ!みたいなフレーバーテキストもあるんだよなぁ。まぁ、自分の持ってるスキルのフレーバーテキストなんて、覚えてないけどね!

 そんなことを考えていたら、俺とやまいこが腕につけている時計からアラームが鳴った。

 

「時間だね」

「時間だなぁ。んじゃぁ、俺とやまいこは先に玉座の間に行っておくから。アルベドと茶釜さんはちゃんとモモンガさんを守れよ。パンドラも、おとなしめでよろしく」

 

 それぞれの気合いの入った返事を聞きながら、俺とやまいこはその場から、指輪を使って玉座の間に転移するのであった。どっとはらい。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 玉座の間。そこに、左にぶくぶく茶釜、右にアルベド、後ろにパンドラズ·アクターとセバスを連れたモモンガが遅れて入ってくる。

 そこでは多くの者達が、ひざまずいて、その有り余る忠誠を顕にしていた。

 誰一人として動かず、呼吸音すら聞こえない静寂の空間を、モモンガは真っ直ぐに玉座へと向かう。その後ろをアルベド、ぶくぶく茶釜、パンドラズ·アクター、セバスと言う順番で追って行く。

 モモンガが階段を上がり始めると、中段辺りでリュウマが種族本来の姿で槍を片手に立ち、反対側にはやまいこが本来の姿で拳も握らず立っていた。

 二人が頷いたのを確認し、ぶくぶく茶釜のみを引き連れて玉座に腰を掛ける。アルベドは当然階段の下にひざまずいて待機し、セバスはその後方に待機、その更に後ろにパンドラズ·アクターが控えた。

 玉座に座したモモンガ、その隣のぶくぶく茶釜、階段の半ばで待機したやまいことリュウマは、階段下に広がる光景を見て、心の中でのみ感嘆の吐息を漏らす。

 そこにはほぼ全てのNPCが集まっていた。こうやって全員を見ると、もはや百鬼夜行なんじゃないかと言うほどの異形種の群れであった。これだけのNPCをよく作り上げたもんだと、当時のメンバー全員を誉めてやりたくなった。

 本当は全ての僕を集めたかったのだが、下等な僕を入れるわけには行かないと、守護者全員から反対をもらったので、少々寂しかったりするが、それは別の話だ。

 

「まずは、我々が勝手に行動し、なおかつ、勝手に皆に作戦行動をさせたことを詫びよう」

 

 これっぽっちも悪いと思ってない声で、モモンガは陳謝する。これはあくまで建前上のもので、至高の四人が謝罪したと言う事が重要なのである。

 

「さて、我々が外へ出たことにより、様々な事がこれから起こるであろう。だが、私や、ぶくぶく茶釜、やまいこ、リュウマがここにいる。そして、ここに集った我々の仲間が生み出した者達がいる。恐れなど、あろうはずがない。故に、私はここに宣言する!」

 

 力強いモモンガの声が響き渡ると同時に、リュウマが槍の石突きで階段を強く叩いた。金属と石がぶつかる硬質な音が響き渡るなか、モモンガが言葉を続ける。

 

「我らのギルドの名を世界に示せ!アインズ·ウール·ゴウンを不変の伝説とせよ!英雄が数多くいるなら全てを塗りつぶせ。我等こそ大英雄であると、生きとし生けるものに知らしめよ!より強きものが、より賢きものがいるならば、どのような手段を使ってでも知らしめよ。今はまだ準備段階であるが、心せよ!そして将来来るべき時のために動け。アインズ·ウール·ゴウンこそが最も偉大であると知らしめるためにだ!」

 

 モモンガの中には、野望がある。いや、野望ではないかもしれない。しかし、自分の全てをかけてでも成し遂げたい、いや成し遂げねばならないこと。それは、ギルドの名を世界中に知らしめ、この世界に転移してきているだろうかつての仲間に自分達の存在を知らせるため、絶対に成し遂げねばならない事だ。

 全ての僕が立ち上がり、口々に「アインズ·ウール·ゴウン万歳!いと気高き至高のお方々万歳!」と叫ぶのを止めずに聞きながら、四人は充足感で一杯になりながら、次なる一手に考えを巡らせるのであった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 主人達が去った後、まだ熱気冷めやらぬ玉座の間に、僕達はいた。絶対なる支配者からの命令を受け、そして一斉に行動を開始すると言う状況が、全ての者達の心に炎を灯していた。

 

「皆、面を上げなさい」

 

 アルベドの静かな声に引かれるように、今だ顔を下げたままだった者達も顔を上げてアルベドに注目した。

 

「各員は、至高の方々の勅命には慎んで従うように。そして、ここからは私が直接モモンガ様からお聞きした重大な話を皆に伝えます」

 

 アルベドは、主人達が立っていた玉座を見つめ、その視線を外さない。他の者達もそれに習い、玉座へと視線を集中させる。

 

「モモンガ様とぶくぶく茶釜様が夜空をご覧になられたとき仰られました。この星空を全て自分達の物にしたい、ならば世界征服だと」

 

 アルベドは微笑む。それはそれは、邪気のない綺麗な笑顔だった。

 

「私たちは世界を手に入れる。どんな手段を使っても、どんな強敵が相手でも、相手が泣きわめき許しを乞おうとも、一切の遠慮も呵責もなく。私たちの主のために」

 

 アルベドがゆっくりと皆に振り返り、その瞳を確認する。誰一人の例外もなく、その瞳には鋭く強い決意の光があった。それを見て、アルベドは満足げに頷き、もう一度玉座へ向き直る。

 

「モモンガ様、ぶくぶく茶釜様、やまいこ様、リュウマ様。必ずやこの世界を皆様の足元に」

 

 声が続くように響き渡る。

 

「正当なる支配者、アインズ·ウール·ゴウン、至高の42人の元に、この世界を」

 

 





これからは二本を何話かずつ交互に上げていこうと思っています。
更新速度はちょっと遅くなりますが、そこら辺は勘弁してくださいね。

さぁ、次回はラブい話でも書こうかな。

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