The Last Stand   作:丸藤ケモニング

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マジメニウムが尽きました。

今回のやっつけ感が尋常じゃねぇ……。






10,人であること②覇王爆誕

 あまりの歯応えのなさ、騎士の弱さにモモンガは嘆息する。

 転移門が開いた後、リュウマが即座に飛び出し腰に帯びた二本の刀を一閃、騎士を四つに分断した直後に、モモンガが即座に第九位階魔法〈 心臓掌握 〉を使いもう一人を殺害、さらにもう一人の騎士が現れたため、第五位階魔法〈 龍雷 〉にて、敵の強さを確認するために使用、ダメージ量で圧倒的に劣るにも拘らず騎士は即死した。

 無論、今殺した三人が極端に弱いという可能性もあるから楽観視は出来ない。しかし、緊張感が失せていくのも事実であり、失われた緊張感を戻すのも至難の業だと思われた。

 とにかく、まずはもっと力を試してみるべきだ。そう思いながらモモンガは自分に備わる特殊技術アンデッド創造を使用する。すると、もっとも無傷だった騎士の死体の兜から粘液質な闇が溢れだし、瞬く間に騎士の死体を多い尽くし、音を立ててそれを変形させていく。ほんの数秒でその変化は終わり、そこには体長2.5メートル程の、スパイクアーマーを身にまといフランベルジュとタワーシールドで武装した死の騎士が立っていた。

 リュウマが宥めていた姉妹が小さく悲鳴をあげるが、モモンガやリュウマにしてもこれは予想外であり、驚愕に値したと言ってもいいだろう。

 ともかく、死の騎士に命令したり、後詰めでやって来たアルベドとやまいこがこの姉妹をどうするかでちょっと険悪になりそうだったり、ポーションを上げるの受け取らないの、やまいこが代わりに魔法で治すのルプスレギナが代わりに治すのと色々あったがある程度話も終わり、姉妹の名前もちゃんとリュウマが聞き出していたのを聞いて、モモンガはこいつが実はペロロンチーノの同類なんじゃと疑ったりで、さてと次はどうするのか、という話になった。

 

「さて、どうしましょうかね?」

「んー、まぁこの村を助けるんだけど、このままあの騎士どもを皆殺しにするのは勿体無いな」

 

 モモンガの問いかけに、リュウマが腕を組みながら答える。それに首を捻ったのはルプスレギナだった。

 

「なんでですかリュウマ様?」

「キモい、普通にしゃべってくれルプスレギナ」

「えー?キモいは酷いですよー。それに、今アルベド様がいらっしゃいますし……」

「アルベド?」

「ルプスレギナ、大丈夫よ、リュウマ様が許可なさっておられるのだから普通に喋りなさい」

「はーい、承知っすー」

「モモンガ様にその口調で喋ったら舌の根引っこ抜くけどね?」

「承知しましたー……」

 

 慈母の笑みで怖いことを言いながら、アルベドがルプスレギナに先を話すように進める、主に斧槍の切っ先で。

 

「えーと、なんでしたっけ?ああ、そうっすよ。なんで皆殺しにしちゃ駄目なんすかリュウマ様」

「それは私が答えよう、ルプスレギナ。リュウマさんは情報を入手する先を増やそうとしているのだ。この村で得られるよりももっと多くの情報を奴らが持っていると思われるからな」

「おー、さすがモモンガ様…ですね!」

 

 いや、それを言い出そうとしたのは俺なんだが。そう思いながらも言い出せず、リュウマはやまいこがなだめている姉妹、エモット姉妹へと顔を向けると、姉と目があった。名前は確か……。

 

「どうかしたか?炎利さん?」

 

 明らかに発音が違うような気はするが気にしない。

 

「え、えと、エンリです。いや、そうじゃなくて」

「落ち着いてくれ炎李さん」

「は、はい、エンリです」

 

 ヤバイ、この子面白い。面白い子はいじりたいリュウマである。

 

「皆様、助けていただいて、ありがとうございます!」

「ありがとうございます」おお

 

 姉が頭を下げるのと同じように妹も頭を下げる。微笑ましくやまいことリュウマ、モモンガ、鼻が高くなるルプスレギナ、当たり前だろうという雰囲気のアルベド。

 

「あ、あと、図々しいとは思いますが、あなた方しか頼れる人がいないんです!お父さんとお母さんを助けてください!」

「確約は出来ないが、やるだけやってみよう」

 

 少々時間をとりすぎた、そう思いながら、モモンガは軽く約束する。エンリが大きく目を見開く。やってみようと言う言葉が信じられなかったのだろう。それからすぐ我を取り戻すと、頭を下げようとするが、その行動はリュウマの一言によって止められた。

 

「なぁ、エンリさん。一つ聞こう、父親と母親が殺されてた場合、お前ならどうする?」

 

 その言葉に、エンリは先程とは違う意味で目を見開いた。そして、わずかに考え込んだ後、まっすぐにリュウマを見て言葉を紡ぐ。

 

「その場合、私は、お父さんとお母さんを殺した奴を、許しません」

「そうか…なら、そいつは生かして捕らえておこう。その後は、お前の好きにするんだな。と、そうだ、こいつをあげよう」

 

 そう言いながらリュウマはインベントリから一本、槍を取り出す。装飾等に派手な部分は全く無い簡素な槍ではあったが、これも一応魔法の武器であり、低レベルだった頃、碌な武器が手に入らず泣いてるときに手にいれた物なのでそれなりに愛着がある品だったが、この状況ならこの子にあげても問題ないだろうと判断したリュウマである。

 

「火焔猫の槍と言う槍だ。念じると炎を纏った猫が飛び出してきてお前さんを守ってくれるから危ないと思ったらその子を呼び出すんだ」

 

 火焔猫はその名の通り炎を纏った猫から果ては溶岩で出来たこれは生き物なのだろうかと疑問に思う虎のような物までピンきりなイベント限定モンスターの総称で、そのレベル帯も10~40レベルまでと幅広い妖精、らしい。それをこの槍は召喚できる。問題は、何が出てくるか完全にランダムで、出てくる数も1~15体まで、数が増えれば増えるほど一体辺りのレベルが低くなる。高レベルになればなるほど不要なアイテムになるが、目の前の娘にはちょうどいい威力と召喚モンスターじゃないかと、思えた。

 一方、説明を受けたエンリは、よく分からないけど念じればなんか出てくるらしいと言うところだけは理解したので、こんな感じかな、と軽いつもりで槍に向かって『おいでませ~』位の感じで念じて見た。

 結果、えらいものが召喚されて、渡したリュウマや他の面子が驚いた。

 召喚されたのは、全身を赤く発光させた獅子だった。いや、5メートルもの全長に赤黒い鱗で覆われた長大な尻尾、口から漏れ出る炎の吐息など、当たり前だが全体の印象としての獅子であって、これのモンスターとしての名前は〈 炎々羅 〉。実にレベル50にもなるレイドボスである。

 

「ふわぁぁ……」

 

 エンリの口から漏れ出したのは驚愕の呻きではなく、感嘆の吐息だったが、目の前で出現したそれに驚愕したのは、それを召喚できる武器を渡したリュウマである。

 

『ちょっとリュウマさん!?どう言うことですあれ!?』

『あ~、はっはっはっ…確率0.04パーセントでこいつが呼び出せるとは聞いてたんですけど、まさかマジで出るとは…』

 

 呼び出された炎々羅は、ゆっくりとエンリに向き直り、頭を垂れ、それに対してエンリは小さく頷くと、妹ともにその背中に飛び乗り、一行の方へ首を向けた。

 

「皆様、後の事はお任せしても大丈夫でしょうか?」

「えっ、あ、はい」

 

 まるでキャラが変わったかのような自信溢れる表情のエンリに、モモンガが思わず頷いた。

 

「私と妹は、この回りに隠れている伏兵を打倒しますので、皆様は村の人々をお助けください」

「う?うむ……任せておくが良い……」

 

 答えに満足が行ったのか、エンリは魔獣ーーいや、分類的には妖精らしいのだがーーの腹を蹴り、それに答えた魔獣は一足飛びで森の中へと駆け込んでいった。一向は、それをただただ見守るしかなかったのである。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 それからは早かった。一行がああでもないこうでもないとこれからの行動を話ながら村の中央に行くと、死の騎士が、騎士達を相手に舐めプしていた。具体的に言うなら、剣と盾を捨て、素手で掴んでは死なないように投げ、掴んでは死なないように叩きつけ、心身共にへし折ると言う中々の鬼畜っぷりで遊んでいたのだ。

 それをモモンガが止めに入ったら、今度は森の中から深紅に光る魔獣に乗ったエンリが現れて、騎士達を威嚇したことにより、騎士の精神の糸はぷっつりと切れたようだ。

 これ幸いと、モモンガとリュウマが騎士を尋問し、やまいこが村人を解放し、エンリと妹が説明をしたことで、村人はようやく安堵したのだった。

 エンリと妹の父親と母親は殺されていた。その犯人はなんだか「お、おかねぇ、おかねあげましゅから、みのがしてくらはい……」とずっと言ってたが、なんでか性格の変わったエンリに許されることもなく四肢を魔獣に食い千切られ、エンリの槍で滅多刺しにされ、絶命するまで命乞いをしていたが、許されることも無く、最後は魔獣の炎で灰となって死んだ。

 その後、騎士たちは解放されほうほうの体で村から逃げ出したのだが。

 

「ん?モモンガさん、ルプスレギナは?」

 

 やまいこの問いに、モモンガは恐らく笑みを浮かべているだろう声音で、

 

「ああ、仕事に行ってくれてますよ。いやぁ、情報源が多いのはいい事ですよねぇ」

 

 と、答えるのみだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「なんで性格が変わったんですかねぇ」

 

 村人の葬儀をぼんやりと見ながら、モモンガさんがそう言った。なんとなぁく想像がついているから、一応推測を口にしてみようと思う。

 

「モモンガさん、フレーバーテキストって、あるじゃないですか?」

「ああ、あるねぇ」

「火焔猫の槍のフレーバーテキストにですねぇ、槍を持つものは覇王の資格を有する、みたいな一文があるんだよね。たぶん、その影響じゃねぇかなぁ、と」

「あの程度の武器でねぇ……そう言えば」

 

 そう言いながらモモンガさんは後ろに立っていた死の騎士を見上げ、

 

「こいつ、いつになったら消えるんだろう?」

 

 すでに召喚時間は過ぎているのに消える気配が無いと、モモンガさんは言う。この世界に来て、スキルなども色々変わっている可能性もあるからなぁ。

 しかし、今のモモンガさんの格好を見ていると、あれだ、凄いな。凄い変だ。まぁ、正体を隠したいのは分かるんだが、何も嫉妬マスクを被らなくてもいいじゃない。

 ふと、アルベドがこの格好を見てどう思うのか気になったので聞いてみると、

 

「モモンガ様は、どんな格好をしていても格好いいですわ。茶釜さんもそう言ってます」

「伝言でどんなやり取りをしてるんだ」

 

「しかし、本当に異世界に来たんだな、俺たち」

 

 少し前まで、モモンガさんとやまいこさんが村長と交渉兼情報収集を行っていたのだが、そこで分かったことを単刀直入に言うなら、ユグドラシルではなく完全に異世界に来てしまったと言うことだけだった。それが分かったからなんだと言うんだと言ったら、やまいこさんに、

 

「少なくとも、これからの行動に様々な指針ができることは大きいよ?」

 

 と、諭された。なんだろう、脳筋仲間だと思ってたやまいこさんが遠くに見える。あ、この人教師だったわ。

 ついでに言えば、ここで死んだ人たちを生き返らせる事が俺たちには出来るのだが、モモンガさんが、余計なことにならないよう配慮して、蘇生は行わないことにした。それは、全員が納得するところだった。

 

「!?ええ、そう、分かりましたわ、茶釜さん、お伝えします」

 

 アルベドが耳を押さえながらそう言ってモモンガさんの方に向かって報告をした。

 

「モモンガ様、この村に向かって四十人ほどの武装した人間が向かっているそうです」

 

 なんか、この村、呪われてるんじゃねぇかなぁ?

 そう思いながら、俺たちは丘から降りて村長にその旨を伝えに行くのだった。

 はぁ、面倒臭い。

 




じ、次回こそは真面目に、真面目にやりますから、どうかご容赦を。

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次回こそ頑張ります、はい!

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