The Last Stand   作:丸藤ケモニング

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 ドーモ、ハジメマシテ、丸藤ケモニングデス。
 初投稿、駄文ですが、楽しんでいただけたら何より何よりです。



1,プロローグ 愛は伝えられず次へ

「また、どこかでお会いしましょう」

 そう言ってヘロヘロがログアウトする。

 この黒曜石のような輝きを放つ巨大な円卓に座るのは、俺ことリュウマと、このアインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターモモンガさんだけになった。

 

「……二人だけになっちゃいましたね、リュウマさん」

 

 乾いた笑いをため息と共に出しながら、モモンガさんは肩を落としている。

 

「まぁ、しょうがないな。しかし、ブラックなところに就職したと聞いていたが、あれほどとは」

「あはは~、そうですね」

 

 俺のいった言葉に、モモンガさんは笑顔のアイコンを浮かべてそう返してきたが、モモンガさんも大概な所で働いているから大差ないんだが?

 

「所でモモンガさん、今は何時くらいだろう?」

「えーと、十時半ですね。それがどうしました?」

「……いや、もうすぐ終わりだと思ってな。どうせだったら、モモンガさん、玉座の間に移動しないか?円卓の間で終わるのは味気ないだろう?」

 

……少し強引だったか? モモンガさんが顎に手を当てて考え始めてしまったぞ。

 大体、俺にこんな事を頼むのが間違っているんだ。あいつが直接来れば良いだけだろうに、何が「やだっ、恥ずかしい」だ。絶対後でブッ飛ばす。

 と、俺が脳内でこんな面倒なことを頼んできたやつをボッコボッコにして鬱憤を少しでも晴らしていると、モモンガさんが顔をあげて笑顔のアイコンを三回ポップさせた。いや、なんか言え。

 

「じゃぁ、行きましょうか」

「はい、そうしましょう。と、その前に」

「? どうしたんだ、モモンガさん」

「いやぁ~、最後なのにこの格好はないな、って、思いまして」

 

 照れたようにそう言いながらモモンガさんは、装備を交換していく。みるみるうちに、邪悪そうな大魔術師(骨)に早変わりだ。

 

「ほら、リュウマさんも着替えてくださいよ」

「ん? ああ、そうだな」

 

 そう言いながら、俺もすべての武装を、本来使用している神器級装備へと変更する。全身を緋色の武者甲冑で覆い、額には同じく緋色の鉢金、腰には地味で古ぼけた刀を帯びて、俺は完全装備になった。目の前に全てのパラメーターが上昇したことを示すアイコンが現れては消えていく。

 

「おお~、やっとナザリックの斬り込み隊長が姿を表しましたね~」

「俺の前にはなぜか魔王がいる、ワロス」

「何で笑うんですか!? そんなこと言ったら、リュウマさんは酒呑童子じゃないですか!?」

「失敬な、俺は酒に酔う前に、そいつら全員をぶっ殺すんで」

「う~わ~」

 

 ドン引きされた。なんでだ。

 

「まぁ、それがリュウマさんですもんね。それじゃぁ、行きましょうか」

「ちょっと待った」

 

 言うだけ言って部屋を出ようとするモモンガさんを押し止め、忘れ物があると、いってやる。

 モモンガさんがしきりに首を捻っているもんだから、俺は壁にかけてあるとある杖を指差してやる。

 ギルド武器❲スタッフ·オブ·アインズ·ウール·ゴウン❳。俺が、いや、俺たちギルメン全員が血眼になって作り上げたギルドの象徴にして、モモンガさん専用の最強のスタッフだ。

 

「え~と、持っていくんですか?」

「無論だろう。ギルドマスターがそれを持つのは当たり前で、それは我々の象徴だ。そして、それに触れていいのはモモンガさん、あんただけだ」

 

 まぁ、ここにこれてない奴らにも許可はとってあるから問題は無い。

 モモンガさんは少し悩み、おずおずとスタッフを手に取る。

 スタッフからどす黒い赤色のオーラが吹き出た。そのオーラが人の苦悶の表情を象り、崩れ消えていく。

 

「作り込み、こだわりすぎ」

「いい出来だな。いよいよ魔王っぽくなっ……? ちょっと待っててくれモモンガさん。メッセージが来た」

 

 そう言ってモモンガさんから離れた俺は、向こうの相手とひそひそ話っと。

 

「あいよ、なんだよ」

『……遅いんだけど? 僕も彼女も待ちくたびれたんだけど?』

「わかってるっつぅの、今からいくから待機しててくれ」

『わかったよ、寄り道しないでよ?』

 

 そう言って一方的に切られた。なんつぅ態度か。人が協力してやっていると言うのに。

 

「お話終わりましたか?」

「ああ、大丈夫だモモンガさん。んじゃ、ちょいと急いで玉座の間に向かいますか」

 

 円卓の間を出た俺たちは、途中を飛ばして第十階層へ。そこで、NPCである、セバスと六人のメイドを後ろにつけ、いよいよ、玉座の間に入った。

 ため息が出るほど荘厳華美絢爛、この世の贅全てを使って作り上げたと言わんばかりの世界。その中央には、その名の示す通り玉座があった。そこへ向かって歩みを進めると、普段なら玉座の横にたっているはずのNPCの姿がなく、代わりに奇妙な物体がたっていた。その姿を見たモモンガさんが息を飲む。

 そこに立って(?)いたのは、ピンク色の肉塊、ぶっちゃけると卑猥な肉の棒だ。ローパーという異形種で、フィールドで出てくれば高い耐性と高耐久力でなかなか煩わしいモンスターだ。まぁ、こいつは違うが。

 

「え、ええ?」

 

 モモンガさんが驚きの声を出す。んでこっちを見た。見るなよ、恥ずかしい。

 そのモモンガさんを無視して俺は、その人物に声をかける。

 

「ほいよ、連れてきたぞ」

「遅いんだけど?」

「触手で威嚇するな、卑猥だぞ」

「リュウマさん、ぶくぶく茶釜さんが来てるの、知ってたんですか!?」

 

 普通に会話している俺の方へ詰め寄ってきて、モモンガさんが火を吹いた。

 

「まぁ、ね。色々相談されてたんだよ、やまいこに」

「え? やまいこさん?」

「ここにいるよ?」

 

 その声は玉座の裏から聞こえた。覗き混めば、そこには体育座りで待機してる巨人の姿が。

 

「やまいこ、なにしてるんだ?」

「やっ、顔を会わせづらいなって、思ってさ」

 

 そう言いながら立ち上がって、やまいこはモモンガさんに軽く手をあげて挨拶。

 

「久しぶりだね、モモンガさん」

「……お久しぶりです、やまいこさん、ぶくぶく茶釜さん」

「うん、久しぶりももさん」

「おい、やまいこさんよ、ちょいとこっちへ来ておくれよ」

「あ、うん。じゃぁ、茶釜さん、頑張って」

 

 俺の呼び掛けに答えてやまいこがこっちに来る。

 

「茶釜さん、ちゃんとできるかな?」

「ガキじゃあるまいし、そのくらい出来るだろ、心配しすぎだっての」

 

 ピンクの肉棒と骨の大魔術師が喋っているのを横目で見ながら、そういったものの、なんというか妙な感じだとも思う。

 隣に立つ大柄な女――リアルでは別に大柄でもなく普通くらいだったが――やまいこから相談を受けたのは二ヶ月ほど前。なんでも茶釜さんに好きな人が出来たというかいたというか、そんな話だった。まぁ、十中八九モモンガさんだろうとは思ってた。別にそういう兆候があったとかそう言うわけでもなくて、頭の中で仲間たちを列挙、候補を削除していった結果、その結論に至った、それだけだ。

 俺に相談した理由もわかってる。俺が最後までモモンガさんとユグドラシルをプレイしていることを二人とも知っていたからだ。そんなわけでスケジュールやらなんやらの調整をした結果、この最終日以外に時間がとれずに、この記念すべき最終日がモモンガさん非リア充卒業の日になったと。

 んなことを考えている横で、やまいこが俺の顔を覗きこんできてたから、俺は?アイコンを浮かべてそっちへ向き直す。

 

「どうした?」

「そういえば礼を言って無かったなって。ありがと、お陰で助かったよ」

「飯、奢りな?」

「それくらいでよければ」

 

 笑い声で肯定したやまいこだったが、まだこっちを見ている。まぁ、前からあんまり積極的になんか言うタイプではなかったが。

 

「どうしたんだ?」

「ん? 変わってないなって」

「人間、そんなに簡単に変わるものかよ」

 

 それもそうね、そう答えてやまいこは二人の方へ顔を向けて嘆息する。

 そっちへ顔を向けると、まぁ、なんか、全然別の話をしているようだ。なんかコンソールを開いてそこにかかれている文章を読んで、あ、すごい早さでスクロールした。

 

「「えっ?」」

 

 あ、なんか絶句してる、なんだ?

 

「なにが、あったんだろう?」

「さあ?」

 

 二人が見ているコンソール画面をのぞきこんで、やまいこと俺の目が点になった。

 そこにはたった一文、

 

『ちなみにビッチである』

 

 輝かしいまでの一文であった。

 

「なんぞ?」

「タブラさん、これはないでしょう」

「いくらなんでも、女の子の設定にこれはないわ」

「……最低」

「モモンガさん、これ、もしかしてアルベドの設定?」

「ええ、まぁ、そうです、はい」

「無いわぁ」

 

 全員でそんな事を言いながら茶釜さんとモモンガさんの様子を盗み見る。うん、打ち解けてる。まぁ、元々仲がいい二人だったし、モモンガさんがわだかまりとかを持ち込むような性格じゃないからその辺は端っから心配してない。だが、これは。

 

「ちょい、茶釜さんよ」

「何よ、芋侍」

「誰が芋だ、肉の棒め。そうじゃねぇよ、告白はどうしたんだよ」

「……えへっ☆」

「えへっ、じゃねぇよ、この木偶の坊ならぬ肉の棒、当初の目的を忘れるなよ」

「いや、だって……」

 

 言葉をつまらせた肉の棒を見ながら、俺はため息をつく。言いたいことは分かる。だが、いくらなんでも臆病すぎるだろ、おい。

 

「んじゃぁ、別の日にするか? 俺が一応、別の日にオフ会の機会を作ってやるよ」

「あ~、うん、それじゃ、あの、ごめんね、お願いできる?」

「はいよ。まぁ、細かい話は後で、今は……」

 

 時計に目をやれば残り時間はそれほど無い。

 

「最後くらいは、このメンバーで厳かに終わるってのも、いいか」

「あ~、そうだね、今日で最後なんだもんね」

 

 いかん、ちょっと湿っぽくなったか。苦手なんだよ、湿っぽいの。

 

「おらー、モモンガさん、さっさと玉座に座れー!」

「えっ、ちょっ、まっ!! リュウマさん、何を!?」

「俺らのギルド、んでもってユグドラシル最後の日だ。せめて最後は」

「玉座に座って悪のギルドっぽく居丈高で終わる、僕はいいと思うな」

「そうだよ、モモンさん、さぁさぁ座って座って」

「えっ? えっ? ええっ!?」

 

 前衛職三人に担ぎ上げられ無理矢理玉座に座らされたモモンのを中心に、モモンガさんから見て右側に、ぶくぶく茶釜、やまいこと並び、反対側にNPCのアルベド俺、そして玉座の階段の下に、セバスとメイドたちを並べて臣下の礼をとらせて準備万端だ。

 

「……三人とも、最初から打ち合わせ済みでしたね?」

「なんの事か分からんなぁ」

「本当に隠し事が好きなんだから、リュウマさんは」

 

 恨みがましそうな台詞ながら、笑いを堪えたような声でそう言って、モモンガさんは天井を見上げた。

 そこには、俺たち❲アインズ·ウール·ゴウン❳のメンバーのサインが垂れ下がっている。

 

「たっち・みー」

 

 モモンガさんを、俺を救ってギルドに入れた人。その恩は忘れられないだろう。

 

「死獣天朱雀、餡ころもっちもち」

 

 次々とメンバーの名前をあげていく速度が上がる。

 

「ぶくぶく茶釜さん」

「はい!!」

 

 元気よく触手を振り上げる。

 

「今日はありがとうございます。忙しいのに」

「あっ! やっ! そんなこと無いですよー!? ひ、暇、でしたし? 呼んでもらえて嬉しかったですし……」

「それでも、来てくれないんじゃないかって思ってたので、本当に嬉しかったですよ」

 

 照れて何も言わなくなった茶釜さんをひとまず置いておき、スタッフで次のフラッグを指し、名を呼ぶ。

 

「やまいこさん」

「はい……」

「同じく、最後に来てくれてありがとうございます」

「僕は、茶釜さんの付き添いだから」

「それでも、ありがとうございます」

「……うん」

 

 そして最後は。

 

「リュウマさん」

「応!」

「リュウマさん、本当に今まで一緒にプレイしてくれて、感謝にたえません」

「別に礼を言われるほどの事じゃない」

「いえ、それでもですよ。リュウマさんがいなかったら、今ごろ自暴自棄になってたかもです」

「まぁ、他のメンバーからも頼まれてたし、俺もやりたくてやったんだ、気にするな」

 

 女二人の失笑みたいなものを聞きながら、俺は胸を張る。

 

「楽しかったな、モモンガさん」

「ええ、本当に」

「僕たちも楽しかった、ね? 茶釜さん」

「うん、楽しかったよモモンガさん。モモンガさんがいたから、私達は楽しめたんだ。だからね、こっちからもお礼を言わせて」

 

 茶釜さんがそういうと同時、モモンガさんを抜いた三人がモモンガさんに向き直り、

 

「ありがとうございました!!」

「……皆さん……」

「おっと泣かせてしまったようだな茶釜さん」

「困ったね茶釜さん」

「私だけが悪者か!!」

 

 笑いがおき、空気が弛緩する。だがしかし、時間は刻一刻と迫る。

 

「最後はどうする、モモンガさん」

「そうですねぇ……じゃぁ、アインズ·ウール·ゴウン万歳って叫びますか」

「うん、そうしよっか」

「僕も賛成」

 

 時間は迫る。残り一分。

 

「それでは、リュウマさん、音頭をお願いします」

「俺かよ!? ……しゃぁねぇ……それじゃ皆さん、お手を拝借」

「宴会か!?」

「うっせぇ……それじゃ、アインズ·ウール·ゴウン万歳!!!」

「「「アインズ・ウール・ゴウン万歳!!!!」」」

 

 そう、これで終わるはずだったんだよ、これで。

 だが、そうは問屋が卸さないってね。




 とりあえず、まずはあっちに行くところまで。
 原作からどれだけ解離するか分かりませんが、なるべく頑張る所存です。

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