少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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飛行訓練

『飛行訓練のお知らせ

 

 木曜日獅子と蛇が一緒にやるよ。よろしく』

 

 

 

 掲示板に紙が張り付けてあった。

 

 

「グリフィンドールと一緒かよクソが」

「よし、獅子寮の女のパンツ見たい放題」

「…………ねーわ」

 

 マルフォイがそわそわしていたので、ここぞとばかりにベスは話題を振ってやった。

 

「おはよマルフォイ。何か言いたそうにしてるわね喋ってみろ」

「フォイフォイフォイフォイ。何だいラドフォード、君も僕のホウキの話を聞きたいのか? しょうがないな、話してやるよ。

全く朝から何度話してるか数え忘れちゃったじゃないか。どいつもこいつもコレしきのことで浮かれるなんてさ」

「笑い方キモ」

「あーあ、どうして1年生はクィディッチのチームに入れないんだろうね。僕には全く理解に苦しむよ。危険だとかまだ体が出来てないとか言い張っているけど……魔法族の子供たちが今まで一度もホウキに乗ったことが無いなんて訳がないだろう? きっとコレはマグル出身のせいだろうな。あいつらはホウキなんて掃除にしか使わないと思っているからな」

「私乗ったことないけどな」

「おやソレはすまなかった。まぁ、君は女の子だからご両親も怪我をさせたくなかったんじゃないかな。綺麗な顔に傷でもついたらじゅ……純血の名家との結婚とかできなくなるじゃないか……」

「パパは死喰い人として誇り高く死んだし、ママはアズカバンだっつってんだろ何度言わすんだいい加減にしろカス。親にホウキの柄持ってもらって乗り方なんぞ教わったなんかことねーよクソが。ねぇコレで満足かしら?」

「あー……うん……。でも君はクィディッチは知ってるだろう?」

「大体な」

「そうだよな! ははっ! マグル出身の奴らはソレだって知らないんだよ! だからホグワーツに来て初めてクィディッチなんか目にするんだろうね可哀想な奴らだ」

「やっぱりマグルって雑魚なのね。なんで穢れた血なんて入学させるのかしらね。よしダンブルドアを殺そう」

 

 

 

「あの人達って何でああゆう話しかできないのかしら……」

「ハーマイオニー、早く早く! バランスを崩さないためにはどうすればいいんだい? 教えてよ僕不安で死にそうなんだよお願いだからお願いしますハーマイオニー大先生!」

「あ、あぁそうね……えっと……確かこの本には……」

 

 ハーマイオニーが必死こいて講義をしていると、フクロウがばっさばっさ飛んできた。

 マルフォイ家の鷲ミミズクが優雅に空を駆ける。それを目ざとくみつけたスリザリンの生徒たちがぞろぞろと集まってきた。

 

 

「おい、マルフォイ今度はまたスゲェな。高級チョコレートがドッサリきたぞ。これガチなやつだ」

「私これ欲しいなぁ……ねぇねぇ、ドラコ君? これくれない?」

「いいよ、別に。減るようなものじゃないしね」

「ありがとう~~。ミリーいっしょに食べようよぉ」

「かたじけない」

「ドラコ、うまい」

「オカシ……エネルギー……補給……」

「おい、ゴイルそれは箱だ。紙ごと食べるな、箱だっつってんだろおい。……おい……? やめろゴイル!!」

「ゴァアーーーー!!」

 

 ネビルが変な玉持ってた。

 

 

 

 

 

 午後三時。飛行訓練の時間になった。

 マダム・フーチという体育の教師が現れキリッと命令口調で声を出す。

 

 

「さっさとホウキの傍に立てウジムシ共!!」

 

 

 コレはイエス・マム! と返事をしないといけない系女教師だった。

 空気の読める奴は大抵把握した。

 

 

 

「右手をホウキの前に突き出せ! さっさとしろ!! チンタラするなウジムシ共!!」

「「「「イエス!! マム!!」」」」

「ホウキの横に立ったら『上がれ!』と言え!! ここで上げられん奴に飛行訓練をする資格はない!! とっとと寮のベッドに帰って寝てろ!!」

「「「「アイアイマム!!」」」」

 

 ネビルがもう泣きそうになっていた。

 こんな軍隊式なんて聞いてない。

 

 

「さっさと上げろクズ共が!!」

 

 マダム・フーチの気迫に飲まれた生徒たちが次々にホウキを上げていく。

 

 

「よし貴様等ホウキを持ったな!! マルフォイ! その気合いの入らん握り方は何だぁ!! 減点するぞ貴様!!」

 

「ふぉ!? 申し訳ありません!!」

 

「地面を蹴りあげ8メートルで静止! 2秒浮いたら即座に着地せよ! いいか! 私が1,2,3と言ったら始めろ!! 1,2……」

 

「すみませんネビルです。フライングしてしまいました。二つの意味で」

 

「ロングボトム!!」

 

「うわぁあああーー! 誰かー! 助けてーー!」

 

 

 ネビルが飛んだ。

 ホウキがどっかすっ飛んだ。

 ネビルが塔に引っかかった。

 ネビルが落っこちた。

 

「手首がぁ……ぼくの手首がぁ……!」

「痛そうですねロングボトム。全員傾注! これからロングボトムを医療テントに護送する!! 貴様等は全員そこで待機せよ!! 地面に足がついてなかったものは厳重処分とする!!」

「……」

「返事がないぞウジムシ共!!」

「「「「イエス! マム!!」」」」

「来い、ロングボトム……泣くな、男の子でしょう。安心しろ、すぐにポンフリー大尉が治してくれるはずですからね」

「……色んな意味で痛いよぉ……」

 

 

 ネビルの手元から落っこちたらしいガラス玉、思い出し玉をにぎったマルフォイがソレを見てからかい始めた。

 

 

「見ろよ皆。アイツの顔見たか? あのおお間抜け」

 

 

「見たわー超ウケた」

「クッソワロタwwww」

「…………落下注意」

 

「やめてよマルフォイ!」

「へぇ……ロングボトムの肩を持つんだ?」

「あら、パーバティったら、まさかあなたがあんなチビデブ泣き虫ドジに気があるなんて知らなかったわ。きっと明日には入籍ね。さっさと医務室にでも行って愛しい旦那様の腕でも撫でてくれば?」

 

 スリザリンの気の強い女子、パンジー・パーキンソンがおかっぱ頭を手櫛ですきながら言った。

 

「まぁ見ろよ。あいつの婆さんが送ってきた馬鹿玉だ。そうだ、コレをあいつの手の届k……」

「そいつを返せよマルフォイ」

「……何だポッター? また英雄気取りか?」

 

「英雄何か気取ってない。気取ったことなんか一度もない。

 だけど、ソレはネビルのお婆さんがネビルにあげたものだ。お前んじゃない……ネビルに返せよ」

「おいマルフォイ。今のハリーはガチで怒ってるぞ。僕どうなっても知らないからな」

「屋根の上に逃亡します」

 

 マルフォイがビビって屋根の上に飛ぶ。

 ホウキの操縦が上手いと自慢していたが、どうやらそれは本当だったようだ。

 マルフォイが飛んだのでハリーが下でロックオン。

 

 

「ハリーやめろ、やめなさい。退学になるわよ」

「なってもいいよ。身内との絆を馬鹿にしやがる野郎はブチ殺す」

「……なんて馬鹿なの……」

 

 本気モードになったハリーがかなり上手く飛び上がった。

 初心者とは思えない動きだった。おそらくは初心者詐欺であろう、いきなりマルフォイを箒の上から叩き落す勢いで突進していった。

 高度はおよそ10メートル、頭から落ちれば死すら不回避。

 

 ハーマイオニーという少女はヤレヤレと首を振っていたが、他のグリフィンドール生は喝采をあげていた。

 

 

 

 

「「「殺れーー! 逝っけぇえええ!!」」」

「グリフィンドールって……騎士道て……何だったのかしら……」

「決まってるだろハーマイオニー。将来闇堕ちしそうなクズをぶっ殺していくのが正義の味方の卵たる僕たちグリフィンドールの役割じゃないか!」

「……」

「ハリー! そんな奴やっつけちゃえ! 脳挫傷からのマー髭さ!!」

 

 

 

 

 

「ヤバいな、思ったよりポッター強い」

「僕の知ってる初心者の動きじゃない」

「ふぇぇ……ドラコ君死んじゃう……」

「南無三」

「ホウキ乗れるやつさっさと出ろカス。ここはドラコを助けに行くべきだわ。ブっ殺スイッチが入ってるもの」

「…………7メートル以下の低空飛行、ドラコにクソ玉投げさせて投げ返せ。アイツが玉追って来ればコレでポッターを落とせる。もしくはビビって空中停止。最悪でもポッターだけが空中に残れば僕たちが証言すればいい。おい全員話の用意しとけ」

「乗った。行くわ」

「ふぇ……? ベスちゃん……? 大丈夫なの……? ホウキ乗ったことないって言ってたのに……?」

 

 ベス発進準備。

 

「乗る訳じゃないし、テニスはやったことあるから行けるわ。ちょっとそこの角材貸して」

「分かった、持ってけ、ドラコ、頼んだ」

「幸運ヲ祈ル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 庭で薬剤物色中のセブルス・スネイプは見た。

 

「ん? 何だあれは……あぁ、ただのマルフォイか。そうか今日はグリフィンドールと飛行訓練だったか」

 

 それにしては高度高すぎじゃね?とは思いつつもスネイプはスルーしニガヨモギをマントの中に詰め込む。

 

「フム……上質なニガヨモギだ……。これならば良い魔法薬ができる。乾燥させ、乳鉢で刷り、粉末状にしてもいいな……いや、むしろ脱色し上澄みだけを使って……ふふふ……困った、困ってしまった。コレだけ質がいいと何に使うか迷ってしまうな……」

 

 内心いい材料が採取できたことにホクホク気分のスネイプだった。

 

 すると視界にあの忌まわしき眼鏡の姿が。

 

 

「ぽ、ポポポポポポッタァアア!? あの眼鏡! あの黒髪!? なぜ生き返っ――落ち着け吾輩落ち着け吾輩、眼鏡は死んだ眼鏡は死んだ……あれは息子ポッターではないか……うちのマルフォイと何をやっているというのだ……?」

 

 よく見るとマルフォイの手には何かが握られている。

 二人共1年生にしては別格のホウキの乗り方だった。だが、心なしかマルフォイの方が飛び方が安定していない。おそらくは思った以上に上がってしまったのだろう、ここまでの高度は飛んだことが無いのか、細かく震えているようにも見えた。

 スネイプは杖を構える――イザとなったら墜落する前に浮遊させなければならない。自分にはその義務があると確信したのだった。

 

 良い着地地点を目で探していたところに。

 

 

 またも見覚えのある少女の姿が。

 

 

 

 

「マルフォイ!! こっちだ投げろーーーー!!」

「え? ら、ラドフォード……? ぼ、ぼぼぼぼ僕に命令するな!!」

「早くしろ!! ハリーにぶっ殺されんぞ!!」

「は、はははっポッターに殺される僕だと思っているのか!?(高い怖い超怖い……だがソレはポッターも同じだ!)」

「マルフォイ、懺悔の用意はできてるか? 神様へのお祈りは済ませたか? 来いよマルフォイ、落としてやるよ……地獄までなぁああ!」

「フォオオオオオオオイ!!」

 

 マルフォイ渾身の遠投。

 ビビったマルフォイは真っ直ぐに斜め下に居るベスに向かって『思い出し玉』をぶん投げた。

 重力加速も加わり玉はスピンしながらベスへと直進する。

 

「おっしゃ行くわ」

 

 ベスは角材を構えた。後ろには思い出し玉を追ってくるハリーの姿がある。

 

 

 ベスは角材をまるでバットのように振るうと。

 

 思い出し玉をそのままハリーに向かって打ち返した。

 

 

 見守っていたスリザリン勢から喝さいが上がる。

 

「すごいよベスちゃん! すごいすごいー!」

「ようやるわ」

「……ここでポッターに当たって死ねば御の字。どの道奴はここでバランスを崩すハズ。そのスキにドラコを降ろせ。あとは言いくるめ合戦だ」

「腐れ外道だなノット。嫌いじゃないぜ。

 ……あー……けど見ろよ、ポッター……あいつ……避けたぞ……?」

「…………マジ……?」

 

 

 

 スリザリンの温度が下がっていく。

 

 

「……そのまま飛んでキャッチしちゃったよ……」

「やはりあの者も妖の類か」

 

 ミリセント・ブルストロードが感慨深げにつぶやいた。

 

 とか言ってたらマクゴナガルが城から出てくる。

 

 

 

「ハリー・ポッター! ここに来なさい!!」

「……すまない、皆僕はここまでだ。皆……後は頼むよ。ネビルに伝えといて、思い出し玉大事にしてねって……」

 

 グリフィンドール総敬礼。ただしハーマイオニーだけは「だから言ったのに…」と空を見上げていた。

 

「ラドフォード!! 来い!! ここに!! 今すぐ!! ここに!! くるんだ!!」

「飛んでたのはそっちのマルフォイです」

「ぼ、ぼっぼぼぼ僕は飛んでないったらありません……」

「は? 何言ってんの意味わかんない飛んでたのお前だろさっさと自首しろ」

 

 

「「「「ベスが勝手に飛びました」」」」

 

「え、ちょ」

 

 

「僕たち止めたのに」

「ポッター殺すとか言って」

「ベスちゃんが勝手に」

「飛んでいきおった」

 

「こ……この裏切り……!」

「連行」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうもこんにちわ。マクゴナガル先生に呼ばれるような気がしたのでクィレルの後頭部をヘコむレベルで殴ってきましたクィディッチ赤獅子寮キャプテンのオリバー・ウッドです。

 マクゴナガル先生この子がシーカーですね」

 

「流石ウッドです。その通りです。この子は今日初めてホウキに乗ったにもかかわらず至近弾をバック回転回避し、さらにはそのまま16メートルダイビングキャッチしてかすり傷一つ負わなかったのです」

 

「……?」

 

「早速校庭に行こう、君のその素晴らしいダイビングキャッチを見せてくれ。授業?そんなもん知るかそんなことよりクィディッチだ!!」

 

 

「任せなさい1年生の試合禁止という規則は私がダンブルドアを殴ってでも曲げさせます。この子は最高のシーカーになりますよそう……チャーリー・ウィーズリー以来の! 早速ホウキを買ってきます」

 

「(ロンのドラゴン狂いのお兄さんだ……脳筋族だったんだ……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、恐らくあのババアは考えてくるだろう」

 

「もう痴呆始まってんじゃね?」

 

「いや、あのババアは昔からあんな感じだった。基本的に人の話を聞かない上に、強引で手段を択ばないところもある。更には筋金入りのクィディッチ狂」

 

「マジかハリー死んだなやったぜ」

 

「恐らくはあのポッターをシーカーに、と推薦するつもりだろう。

 分かる……吾輩には分かる……アイツは……あの眼鏡は必ず化ける……化けるんだ化けるんだホウキに乗ってうわぁぁああ消えろ眼鏡の幻影眼鏡の幻影眼鏡の幻影ぃいい!」

 

「帰ります」

 

「帰るな。

 そうゆうわけだから選べ、今すぐここでフーチにチクられて退学になるか――それともスリザリン代表のビーターになるかを!!」

 

「正気か」

 

「何故かデリックの腕が人として曲がっちゃいけない方向に折れていたのだから仕方あるまい。代役が必要なのだお前にならばそれができると思う。吾輩もびっくりだよ。なんで折れてるのいつ折ったの」

 

「ダフネのせいです」

 

「……え?」

 

「まぁいいけど、私いままで殆どホウキなんか乗ってこなかったんですけど大丈夫かしらね? 上で玉打つほうには自信あるんだけど」

 

「恐らくお前にはクィディッチの才能があるから大丈夫だと吾輩は見た。あのポッターと同じでな。生まれつき才能のある人間は確かにいるのだから自信を持て」

 

「勇気出た。。。わかりましたやります。じゃあの」

 

「吾輩……ニガヨモギ……全部……台無し……ニガヨモギ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな訳でスリザリン代表になるっぽいわ。いいでしょ」

 

 

「マジ」

「マジか」

「マジカル」

「…………こんなん……予想できるか……」

 

 夜中、スリザリン寮談話室は1年生が集合していた。

 

 

「ベスちゃんすごーい! 1年生なのに代表選手なんてすごいね~~はいこれドラコ君のおかし」

「ありがとう。で、そのマルフォイはどこに居るのかしら?」

「もう寝た」

「早。どうしようもねぇなこれだからお坊ちゃんは」

「あとコレ内緒らしいから皆言っちゃだめよ。いいわね絶対だからね」

 

 

「わかった」

「任せろ」

「………………イエスユアグレイス」

 

 

「ところで夕食の時だけど……なんかマルフォイ、ハリーに言ってたわよね? アレ何を話していたの?」

「あぁ、アレはね。ポッターと決闘する~なんてパチこいて来たのよ。真夜中の出歩きは規則違反でしょ? 上手くすれば退学、悪くても罰則くらいにならなる、なんて思ったんじゃないの?」

「馬鹿? そんなん引っかかる奴いる訳ねーよ」

「これで引っかかったら苦労しないわよね」

 

 

 

 

 

 

 その頃。

 

 

 ハリーとロンはまさしくソレに引っかかり首が3つくらいある訳わからん化け物に出会っていたが、ベスがそんなこと知る訳なかった。

 

 

 

 

 

 

 


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