少女はお辞儀することにした   作:ウンバボ族の強襲

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とりあえずできたので更新します。
変な更新で申し訳ないの!

祝! 評価バー赤! ヒャハー!!


The Only Crazy Thing to Do

「ラ、ラドフォード」

「あ?」

「そ、その……今度ホグズミードに行くだろう?」

「だな」

「そ、そのーだなーー……ほ、ホグズミードに行く相手はいるのかい?」

「お前に教える意味」

「実は僕は結構ホグズミードに詳しいんだフォイ! だから――そのー……どうだろう? 僕とクラップとゴイルで……えー……そうだ、ノットの復帰祝いをしないかい!? おいしい紅茶の店を知ってるフォイ!」

「ノットて誰」

「思い出せラドフォード! 去年穢れたグレンジャーに喧嘩売った挙句敗北し、天井にぶっ刺さり、最終的には君が公開処刑に処したスリザリンの爆弾魔だフォイ!」

「そんな奴いたっけ?」

「この前ニンバスを爆殺してたのに!?」

「あー。偽ゴブレットの人か。盛大な爆破でしたお疲れさまでした」

「……何話してんだコラ」

「ちょうどいいノット! 今君の復帰祝いパーティーをやろっかなーとか話してんだフォイ! やるよな!? やるよな!? じゃあ皆でホグズミードいk――」

「……いらねーよカス。それ以上ふざけたことをピーチクパーチク鳴いてみろ。テメェら全員すてきな練炭に転生させてやるぞ」

「あら、何ですって練炭? イギリス人の主食じゃない。食べ物に生まれ変わるとかお伽の国までぶっ飛んだメルヘンは存在だけにして頂戴ね腐れアンデッド野郎」

「……ともあれ俺はレイブンクローのアホ共に呼ばれてんだわ。だから復帰祝いなんざいらねぇ」

「ですって、残念だったな這いつくばって絶望しろフォイカス」

「ひとつだけ聞きたいフォイ。お前らの倫理感は脳に御在宅でしょうか」

 

 マルフォイは玉砕していた。

 素直にデートしたいって言えばいいのに言えなかったのはおそらく思春期特有の馬鹿さ加減故だろう。

 男の子は正直じゃない。

 

 と、ションボリするマルフォイ。

 するとスリザリンの談話室に今年入ってきたばかりであろう1年生の少女が現れた。ノットとべスは何となく見覚えがある顔だな、とか思った。

 

「ラドフォードさん、ちょっとその言い方はあんまりすぎるんじゃないですか?」

 

 かわいらしい少女はマトモな思考回路の持ち主だったようだ。

 思わずマルフォイは感動し目を見開いた。

 

 すごい、ふつうだ。マトモなことを素面で言ってる! 

 

 

 

「マルフォイさんがお誘いしてくれてるのに、断り方がひどすぎます。もうちょっと相手のことを考えたらどうですか?」

「あ?」

「……よく言ったな1年生。もっと言ってやれ」

「あなたも同罪ですノットさん」

 

 少女はぴしり、とスリザリンの爆弾魔へと人差し指を向ける。

 

「練炭とか脅迫するのは本当にひどいと思います! あなたが言うと冗談には聞こえません!」

「……サーセンでした。お辞儀しますペコリ」

 

 ノットの下げた頭に踵落としを食らわせた少女はぴしり、と言い放つ。

 

「うぉお、ありがとうございます!!」

「そんなんで許したらウィゼンガモット法廷はいりません!!」

「どの道いらないでしょあんな金の力で腐ったカス法廷」

「言うなフォイ……」

「お前の父親がその汚職の筆頭でしょーが」

「ミスター・マルフォイを悪く言ってはいけません!!」

 

 

(え? コイツ何なの? カスの権化たるマルフォイ家の回しモンなカスなの?)

 

(……マルフォイのシンパか……消すか……?)

 

 

 マルフォイは行動は過激でも自分のことをよく言ってくれる謎の少女に感謝すら覚えていた。

 

「ともあれ二人共もっとマルフォイさんのことを――」

「ふぇ……アスティどこぉ~~」

 

 どこか舌っ足らずのふわふわした声色を聞き、あ、ダフネだ、とノット、べス、マルフォイは理解する。

 と、同時に少女の正体も悟った。

 

「あ、ダフネのボガード」

「ボガード(真)!?」

「もう……何ですか姉さん!」

「だ、ダメだよぉ……アスティ! そいつらの世界に入門すると帰ってこれなくなるよぉ!」

「フォイ……それ僕も入ってんのか?」

「ようこそ、『超越者』の世界へ」

 

 ダフネのセリフからすると少女の名前はアスティらしい。

 しかもどうやらダフネの妹らしい。

 確かに顔立ちがところどころ似ている。

 アスティは幼いながらもどこか凛とした居住まいでべスをまっすぐに見た。

 

 

 

「はじめまして、エリザベス・ラドフォードさん。アストリア・グリーングラスです」

 

 

 

「あっそ」

「……ふーん」

「フォイ……えー……ダフネの妹かい?」

「ふぇ……アスティ、そいつらの目を見ちゃだめだよぉ! 感染するよぉ! 狂気が」

「そんなラドフォードさんにひとつ言いたいことがあります」

「何でしょう、純血なので聞きます」

「ありがとうございます感謝をこめてお辞儀します」

「綺麗にお辞儀ができるいい子だと思いました。褒めます」

 

 アストリアはぴしゃりと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの純血思想はマジでクソだと思います! 死んでください! 心から!」

 

 

 

 

 

 

 

「駄目だよぉアスティーーーーーーーーーー!」

「ハイクをよめ」

「……カイシャクしてやる」

「うるせえな、黙って死ねよ、レイシスト。純血主義なんざクソくらえ! です!!」

「あー……個人的に考えには賛同できないフォイけどそうゆうことをラドフォードの前で叫ぶ勇気には敬意を表するフォイ……」

 

 マルフォイだけが何か評価した。

 

 

「はい人の話を最後まで聞きましょうってママに習わなかったんですか? ご使用の脳みそは最新バージョンですか?」

 

「言うなコイツ」

「……大丈夫だ、問題ない」

「ふぇ……妹つおい……」

 

 

「ラドフォードさん、貴女が純血至上主義者のクソカスビ●チだってことは、よく分かります! だけど、それ言われた人の気持ちとか考えたことあるんですか? あなた自分がどれだけひどいこと言ってるのか、自覚はないんですか?」

 

「ねーな」

「……清々しいほど外道」

「べスちゃんクズすぎるよぉ……」

 

 

「ラドフォードさんは一回死んで転生することをお勧めします! 練炭に!」

 

 

「何よ、流行ってんのか練炭転生」

「……イギリス料理は練炭錬成」

「錬金術師という名のコックが味覚の暴力を振るうよぉ……!」

「それなんてニコラス・フラメルだフォイ?」

 

 

 

「大体、『穢れた血』だなんて差別用語を普通にガンガン乱用して恥ずかしいと思わないんですか!? 信じられない! 本当にプライドの欠片もないんですね! 人間として終わってます!!」

 

 

 マルフォイが吐血した。

 

 

「ゴフォイ!!」

「何血吐いてんのコイツ」

「……あぁ~~流れちゃったよ~~純血の血が~~~www」

「ふぇ……アスティそれ言葉の無差別攻撃だよぉ……しかも標的には一切効果ないよぉ!」

 

 

「あ……あれ……? どうしてこうなった……?

 

 と、ともあれ私は貴女の純血主義を否定しますから!!」

 

 

 言いたいことだけ一方的に言ったまま、アストリアは自室へと踵を返した。姉のダフネをそれを追う。

 

 

 

「え? なんだったの……今の……?」

「……言ってることが正論すぎてぐうの音も出なかったな」

「なんであの子スリザリンにいるのかしら?」

「……忘れたのかあのクソ組み分け帽子を」

「あぁ、帽子なら仕方ないわね。そろそろ燃やしたほうがいいわよねアレ」

「……同感」

 

 

 血の海に沈んだマルフォイが超哀れに請願してきたので、べスは仕方なくホグズミード逝きに付き合ってやることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マルフォイは実に楽しそうだった。

 右手にゴリラ、左手に美少女その隣にはやはりゴリラという鉄壁を築いていた。難攻不落だ。

 だが一番ガードが堅いのは黒い髪の美少女、べスだったりした。

 さすがのマルフォイも自覚していたのだ。

 あー自分、恋愛対象にこれっぽちもなってねーなー……と。

 

 だが逃げる獲物が逃げれば逃げるほど追いかけたくなるのが男のサガである。

 そして、マルフォイはまだ発展途上な、少年だった。ゆえにその愚かさにすら気づいていない。

 むしろ目の前に現れた初恋に夢中になってしまっているのだった。良くも悪くもバカだった。

 

 マルフォイは、ロスメルタの店でべスと一緒にバタービールを飲みながら「あぁ、幸せだなぁ」なんて思っていた。

 べスは「ファッキン便座屋がないわ。クソだなホグズミード、こんな村焼き払ってやる」と思っていた。

 

 

 

「全部ブラックのせいだーー」

「知ってますか、ブラックはジェームズ・ポッターとその嫁リリー・ポッターの親友だったのですよ」

「だけど裏切ったのだー」

「その通りです。例のあのお辞儀人から二人と赤ん坊だったハリーを守るために『秘密の守り人』とかそんな感じのメンドクセー術使ったのに台無しにしやがったのです」

「最悪だなブラック」

「ブラック死すべし慈悲はない」

 

 

(……ん?)

 

 ホグズミード焼き討ち計画を立てていたべスの耳にふと妙な会話が流れてきた。

 どうやらホグワーツの教授陣が話しているらしい。

 ブラックとか闇の帝王、という単語が聞こえてくる。

 ……どうやらキナ臭い話をしているらしかった。

 

 

「で、奴はお辞儀帝王にチクった後にサッサと逃げやがったのです」

「で、ソレを追い詰めた奴ーーえーっとなんて言ったっけ、確か挽肉と化した奴」

「ピーター・ペティグリューですわ……可哀想に、あの二人をいつも英雄のようにあがめていました……能力から言って決してあの二人の仲間にはなれなかったレベルのカスです……。私は時にあの子につらくあたりましたわ。今では後悔している」

「そしてマグルと哀れなピーターというカスを惨殺した後魔法省にとッつかまってアズカバンにいたはずなのだが……不思議なことに奴は正気だった。

 あそこにいる連中はたいていは狂っている。独房にうずくまってブツブツと独り言を言っている。

 なのに、ブラックは『正気』だったのだ。ありえない吸魂鬼で正気を保っていられるなどと、『あの』例外を除いては存在しないは――――」

 

 べスはそこから先はどうでもいいなーと思ったのでスルーした。

 そんなことより大事なことに気づいてしまったのである。

 

 

(え? 何ブラックって……『こっち側』だってこと? 闇の帝王陣営ってことよね?)

 

 話の流れから憶測する。

 

(つまり――、脱獄した理由は――帝王をお探しするためか……もしくは……)

 

 

(ハリーをぶっ殺すため……よね)

 

 

 それは、ふと光差す一筋の道のように思えた。

 

 

 

 

 

 

(じゃあ……ブラックと合流すれば――――祝! 私!死喰い人デビュー!!)

 

 

 

 

 べスの顔がぱぁあああと輝く。

 そんな笑顔を見て「やっぱかわいいなぁ」と思うマルフォイであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同日、深夜。

 

 

 スコットランド地方にて。

 

 

 

 

「あ~~今日も独立運動集会楽しかったな~~~~。決起はいつかな~~。早くイングランドから独立したいな~スコットランド最高~~~~イングランド人は皆殺し~~~~」

 

 楽しそうにそう言った青年――ジョックはがっしりとした体格に高い身長、という典型的なハイランダーだった。

 今日はスコットランドの集会に出ていたのだ。今から自家用車を運転して家に帰る。

 車の中にはアザミの押し花と『Wha daur meddle wi me』の標語が飾られていた。

 アザミはスコットランドの元国花であり、標語は『我らに触って無事に帰るものはいない』の意味である。

 

 家路を急ぐジョックはふと、道端に人影を認めた。

 

「ん? 困ってる人がいるぞ。女の人かな? いかん、スコットランド人として、助けなきゃ。人助けだ~」

 

 近くに愛用のハイエースを止めた。

 

 夜目にも輝かんばかりのシルバーブロンド、血の気が失せたような美しく白い肌。

 うわぁ、女神だぁ。とジョックは思った。

 

 

「すみません……あの……私、ハイランドに行かなくてはいけなくて……でも、このあたりのことはよくわからないのです……」

 

「そうですか、それは奇遇ですね僕はハイランドに今から帰ります」

 

「まぁ……あの、差し出がましいのですが……乗せてっていただけませんか? お礼はいくらでも」

 

「とんでもない! 同じスコットランドの女性を助けるのがスコットランド人ですよ! どうぞどうぞ。狭くてくっせー車内ですが遠慮なさらずに!!」

 

「……まぁ、ありがとうございます。お優しい人」

 

 

 女性はさっと助手席に乗り込んだ。

 よく見るとトンデモナイ美人だった。

 形のいい目は、アクアマリンのような透き通った宝石のようである。うわぁ美人は目まで綺麗なんだな、とアホなことをジョックは思った。

 

 

「あ、そうだ。気を付けてくださいね。なんか~~このへん『幽霊』が出るってウワサなんですよ~~」

 

「……まぁ、『幽霊』?」

 

「なんか~~霊感がある同志が言ってたんですけどね~~。黒っぽい服きた幽霊が出るらしくって~~~~。そんなばかな、って思ったんですけど~~でも最近体調崩してる奴が多くって~~~~」

 

「………………まぁ、それはそれは」

 

「なんか~~『二度と幸せになれない』とか『嫌なことばっかり思い出す』らしいんですよ~~~。怖い話ですよね~~。チョコレートが効くらしいんですけど~~~~」

 

「…………そうですか。怖い話ですね」

 

「ですよね~~、なんだか最近物騒でいけねぇやぁ。お姉さん知ってます? なんでも凶悪な銃撃殺戮マシーンがこの辺指名手配されてるってウワサでさぁ。いやぁ、そんな人是非スカウトしたいですけどね~~~~」

 

「…………その凶悪犯、なんて名前かしら?」

 

「あー、確か変な名前でしたよ~~~~えーっと星の名前だった。苗字はそう……ブラック」

 

「…………ひょっとして、シリウス・ブラック、ではありませんか?」

 

「そうそれです~~~~。シリウス・ブラックだぁ。キラキラ輝いてる名前ですよね~~~~しかも一等星で」

 

「…………だ」

 

「え? なんです~~~~?」

 

「どこ、だ……」

 

「……え? お姉さん??」

 

 助手席の女が、ジョックの首筋をつかんだ。

 

 

 

 

 

 

「どこだぁあああああああああ! シリウス・ブラァアアアアアアアアアアック!!!!」

 

 

「う、うわあああああああああ!」

 

 

 

「どこに居る!? クソが。あの野郎絶対許さない……! 必ず見つけ出してやる!! 私が見つけて!」

 

 

「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!?」

 

 

 

「殺してやるぁああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 スコットランドは今日も平和だった。

 

 

 

 

 

 






ねつさがらない。
かゆうま。

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