ハーマイオニーが一切の躊躇もなく微塵の慈悲もなく、ネビルを石にした時から物語は始まる。
「ハーマイオニー……君って……怖いよ……」
「ネビル一人丸め込めないようなクソ無能は黙ってろ赤毛」
「獅子の勇気とは何だったのか世界に向けて、今、問いたい」
「大体蛇寮の貴女はなんで今此処に居るのよ!!」
「僕が誘ったんだ。んー……何となーく、ベスに来てほしかったから?」
「ハリー……そのチョイス間違えなくマーリンの髭だぜ」
こんな感じで仲良く4階につく。
途中ピーブスとかいうポルターガイストが居たけどスルーしたよ。
この世を生きるのは人間だから仕方ないよね。ゴーストなんて外野には引っ込んでで欲しいからね!
「スゴいぞ!ハリー! あのピーブスを血みどろ男爵の振りして騙すなんて!」
「……だけど、灰色のレディのところに夜這いに行く、っていう言い訳はどうなのかしら……」
「まぁいいんじゃない? あのバカなポルターガイストは信じたみたいだし。脳までゴースト化してるとはね」
「死んでもゴーストにはなりたくないよね。入ります」
ガチャリ。
扉を開くとそこは―――異様な空間だった。
やけに高く、広い天井。
その中央には黒い、見たこともない犬。
デカさだけでも有り得ないのに――首が3つもくっついていた。体一つに首三つ、地味に非効率的。
ベスはふと、そこでギリシア神話の冥府を守る魔の犬――ケルベロスのことを思い出す。
古代ギリシアの人々が信じた神の一柱――竜の尾と蛇の鬣を持つ巨大な獅子の姿を。
「zzz……」
だが肝心な犬は寝ていた。
中央にはハーブが美しい旋律を奏でている。
「これきっとスネイプがやったんだ」
「つかなんじゃこりゃ」
「フラッフィーだよ、ハグリッドがダンブルドアにリースしたみたい。ギリシア人から貰ったんだって」
「あのスコッチ野郎ロクなことしねぇな。ナニコレ番犬のつもり? 暴れたらどうするつもりだったのよ? しかも高いびきじゃない。番犬って何だったのかしら」
「ゴチャゴチャ五月蠅いな! 君はハグリッドを貶さないといけない病にでもかかってるのかい!? いいからさっさと行こうぜハリー!」
「あなたこそ黙りなさいよ。血を裏切りし赤毛6男。私にいい考えがあるわ」
ベスは杖を取り出した。
と、同時にゴソゴソと懐を探る。そして、何かを取り出した。
そして呪文と共に杖を一振りする。
「ウィンガーディアム・レビオーサ」
何か謎の物体がふわり、と宙に浮遊。
何か甘い匂いがする……とハリー達3人が気づいたときには。
もう、その『何か』はフラッフィーの口の中に入っていた。
数秒後。
眠っていた犬が――――覚醒する。
「わんわんお!」「わんわんお!!」「わんわんおおおおおおおお!!」
「何しているんだよクズ純血犯罪者予備軍がぁあああああーーーー!!」
「お、起きちゃった……どうしましょう! フラッフィーが……フラッフィーが……!?」
「これでいいのだ」
「良くねーよ!!」
「何を食べさせたのよ!?」
「蜂蜜入りパンのウォッカ漬け」
「!?!?」
「何でそんなもの持ってるの!!??」
「めんどくさくなったらそこの穢れた血か、ロナウド=血を裏切る=ウィーズリーにでも喰わせて吶喊させようかと思ってね……予想外にコレを使うのが早くてベスちゃんびっくりよ」
「わんわんお!」「わんわんお!」「わんわんお!!」
「酒の力ーー!」
「いやぁああああっ!!」
「待って……ベス……これって……本当にお酒だけ? 何か他にも入れたんじゃない?」
「流石ハリーね、実はね。禁じられた森に自生していた。
『食べると幸せな気分になれる不思議なキノコ』も入れたのよ!!」
「「何してんだテメェエエエエエエエエエエ!!」」
「なぁーんだ! だだのマジ●クマ●シュルームかー。ベス、君って本当凄いよ! よくそんなもの思いついたね!」
「ありがとう、ハリー。お酒とマ●シュルームのコンボはスゴイでしょ? 上手くいけば、心臓止まるわ」
「止まりそうにないよ!!」
「ふ、フラッフィーって心臓1個よね!? ……頭3つなのに」
「脳循環が悪そうな体よね。だから馬鹿なのよ」
「脳溢血の心配なさそうだからいいんじゃない? よし!いいぞ! フラッフィー行けぇえええ!!」
お酒とマジ●クマ●シュルームの力により完全にラリったフラッフィーは訳も分からず地下の扉を突き破った!!
そのまま落ちていく4人と1匹。
下に悪魔の罠とかいう木だか草だか大量にあったがフラッフィーの敵ではない!!
ラリったフラッフィーは立ちふさがる悪魔の罠を全て蹴散らすッ!
フラッフィーは羽根のカギが空を飛んでいる幻想的な部屋の扉もブチ破るッ!!
鍵共がビビってフラッフィーを突いたり刺したりするが、ラリったフラッフィーに痛覚は最早存在しなかった。
続いてマクゴナガルのチェス盤!
コレもフラッフィーが爆殺!!
全身血まみれ、傷だらけそして粉塵塗れの三頭犬はそれでも爆走を続けていくのだった。
面白いようにサクサクすすんでいく攻略!
ロンとハーマイオニーは唖然としながらそれを見ていくだけだった……。
「何か僕の見せ場がなくなったような気がする」
血を裏切ってる奴がなんかほざいた。
次の部屋。
トロールが死んでた。
次の部屋。
扉の敷居をまたぐと、今通ってきたばっかりの入り口がたちまち火で燃え上がった。
一歩遅れたロンが取り残される。
ただの火ではない――紫いろの炎だった。
出口方面には黒い焔が燃え上がる。
完封。
「ここは……そうか……スネイプだ……!」
「スネイプの試練? ってことは大変ね」
「そうだよハーマイオニー。スネイプってことは……」
「確実に」
「息の根を」
「「止めに来てる!!」」
「流石です寮監」
アイツならやりかねないよなーとベスは思った。
「で、何すればいいんだろう?」
「何か巻紙がありました、読みます」
「頼むでー」
こんな感じだった。
『前は危険 後ろは安全
君が見つけさえすれば 2つが君を救うかも
7つの内1つだけ 君を前に進ませる
別の1つで退却の道を開く
2つは幸運のイラクサ酒
残る3つは毒薬
以下ヒント。
ヒント1 毒入りビンのある場所はいつでもイラクサ酒の左
ヒント2 両端は種類違う。尚、炎を通り抜ける薬とは限らない
ヒント3 見りゃ分かると思うが大きさバラバラ。デカいのも小さいのも死の毒薬じゃない。
『死』のな。『死の毒薬』じゃない。
ヒント4 双子の薬。左から2番目と右から2番目は実は同じ』
「なんだこれ」
「理論だ」
「偉大な魔法使いって理論のりの字もないようなガイキチが多いのよ。そうゆう人はここでさよなら、ってコトなんでしょうね、現世から」
「じゃあどれ飲んだらいいのよ」
「二人共、出題者スネイプ、ってこと忘れちゃダメだよ。そんなこと言ってきっと全員ぶっ殺す気だろうから」
「じゃあ逆に毒を呑めばこの炎の中から脱出できる可能性?」
「死ねばこの世からもエスケープできるわよ。とりあえず解くだけ解いてみましょ」
ハーマイオニーはやる気だった。
「ヒント4のまず同じ味ってこうゆうことよね?」
ハーマイオニーが空中で字を書く。
●酒●●●酒●
「もしくはこうじゃない?」
ベスも乗った。
●毒●●●毒●
「どうしてそうなるのよ?」
「だって『三つが毒』としか言ってないじゃないの。もしかしたら毒×3は全部同じ毒かもしくは3つ中2つは同じ毒であるという可能性も否定できないわよ」
「双子の酒って言ってるじゃないの。双子っていうのはつまり、二つで一つ。2人でワンセットとカウントしていいでしょ?」
「どこぞのグリフィンドール人間ブラッジャーみたいね」
「それ何てフレッドとジョージ」
「この場合は二つしかないのはイラクサ酒、つまり双子=イラクサと考えられるわ」
決定。●酒●●●酒●
「じゃあコレを第一ヒントと合わせて考えると……」
「ん?」
「あれ?」
「『毒はいつもイラクサの左』……」
毒入りビンの数は――――3本
イラクサ酒は――――2本
「……」
「……」
「……」
毒酒●●毒酒●?
「これ…これ…………!」
「……無理じゃない?」
「え、えぇっと……」
「やっぱり双子の下りが間違っていたのよ、じゃあコレ」
●毒酒毒酒毒酒
「酒増えてるじゃないの!!」
「お酒だって体に毒だわ。だから毒カウントできるという可能性が微粒子レベルに存在……?」
「じゃあ毒が増えてるじゃないの!!」
「てへっ」
「もういっそのことコレで良くないかな?」
毒毒毒毒毒毒毒
「みんな……死ぬしか……ないじゃない……」
「流石スネイプだ……ここで殺す気満々だ。ヤギの胆石持ってくれば良かった」
「だからどうしてそうなるのよ!?!?」
「だってどうあがいても無理でしょ。毒=酒の隣。酒の瓶2本で毒3本。おかしくね? 無理じゃね?」
「良く見て『always』って書いてあるわ……つまり、つまりそうよ! 毒は『とりあえず酒の左』にあればいいのよ!!」
ハーマイオニーのファインプレー。
毒酒毒●毒酒●
毒酒●毒毒酒●
「良かったわね、どの道右端は正解よ。多分これが進むための瓶だわ。
……で。問題は戻る方の薬だけど」
「毒と薬のデットヒート。帰還か、死かそれが問題だわ」
「ヒント3は?」
「視覚情報限定につき使えないわあんなヒント」
そこでハリーは考え込み、再び巻紙を覗く。
そして、ぽそり、とつぶやいた。
「ハーマイオニー、ベス……もし、もしも……だよ? 僕気になったんだけどさ……。
飲めばものすごく運が良くなる魔法薬、って存在したりしないかな?」
「え……? そんなの……あっ! え、えーっと確か……」
「あるわよ。フェリックス・フェリシス。幸運薬と言うの」
「……」
「スリザリンの寮監はスネイプよーー? スリザリンにだけ特別講義をしていないと思ってーー? ごめん遊ばせ穢れた血ーーあーあー純血で良かったわー私純血で本当良かったわ!」
「炎の中に叩き落とすわよ」
「その幸運の薬、って、凄くラッキーになるんだよね?」
「多分ね」
ハリーの眼鏡がきらめく。
光をピカァンと反射させた。
「じゃ、イラクサ酒からのどっちか飲み、コレで正解を引き当てられるんじゃないかな????」
「……」
「……」
「だってそうだろ? 『幸運の』イラクサ酒って書いてあるんだから間違いないよ!
もし、毒薬に当たっても――『超ラッキー』なら死なない、もしくはイラクサ酒が解毒剤になる可能性もあるだろ? 大体なんでイラクサ酒なんか入ってるんだよ、存在自体が場違いじゃないか」
「ロンみたいにね」
「あ?」
「ゴメンナサイ……」
「一言余計なのよあなたは。そうね、ハリー。その可能性は私も考えたわ。今ので確信が持てた。
あとは、ただ、勇気あるのみね」
ハーマイオニーが暫定酒、な右から二つ目を取る。
ベスも反対側の酒を取った。
そしてふと気づく。
「……薬、なんか……飲む必要ないじゃない」
「……え?」
「フェリックス・フェシリス―――『幸運薬』――――」
「お、おう……」
「幸運……なら……そう、超ラッキーなら……」
「……」
何だかロクでもないことやりそうだ、とハーマイオニーは直感した。
「どこであろうと……通り抜けることが……できるハズっ……!
たとえそれが……肉焦がし、骨焼く……炎の上であろうともっ!!」
「……そうね。かもね。じゃやれば?」
ハーマイオニーは思った。
コイツ、ここで死んだ方がいいんじゃないかしら、と。
「任せなさい。こんな場所で尻込みする私じゃないわ。私はベス・ラドフォード……いつか死喰い人になる女よ!! ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおーー!!」
「うわぁ……本当に行ったわあの子……」
「熱……あつぅうううううう!! 痛い痛い熱い熱い熱いぃいいいいいいいいい!!」
「凄い……やっぱり! 君って凄いよベス!! ぶっちゃけ今年で一番笑った」
「燃えてるわね。すごく単純に、燃えてるわね」
「でも生きてるよ。生きてるってやっぱり素晴らしいことなんだね。じゃあ、僕行くから、ハーマイオニーはフクロウ便を飛ばしてダンブルドアに連絡して」
「……えぇ、分かったわ……。ハリー……あなたは偉大な魔法使いよ」
「言い過ぎだよ、ハーマイオニー。じゃあ何より無事で、気を付けてね。
ちょっとスネイプぶっ殺してくる」
「わんわんお!」「わんわんお!」「わんわんお!!」
ハリーは薬を飲み干し、炎の向こう側を歩いた。
散々転げまわったベスは何とか鎮火し……肩や体に所々軽いやけどを負いつつも何とかギリギリ歩けた。
とうとう炎の向こう側に出る。
やがて、最後の部屋がその眼鏡に映り込む。
そこに居たのは。
スネイプではなかった。
ヴォルデモートですら――なかった。
「アレ? 紫ターバンじゃん」
「言っちゃった……」
ウンバボ族知ってるよ……。
シリアスぶち込めば読者は減るんだ……!