神代凌牙はデュエルをしない   作:さらさ

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ま た せ た な !
気が付いたらこの小説を登校して約1年たっててびっくりしました
今思えばこの小説、本当に凌牙ちゃんはデュエルをしないで小鳥ちゃんみたいに傍観者(観測者?)ポジションの予定だったのにどうしてこうなった
ちなみに初期の神代凌牙はデュエルをしないでは、凌牙ちゃんは最後ベクターと一緒にドン千に吸収されて死亡→主人公を璃緒ちゃんに交代し、メラグとして遊馬達にラストバトルを仕掛ける予定でした

そしてやったぜ次のVRAINSはスタンディングデュエルだ!
展開的にはもうリボルバー出て来たしクライマックスなんだけどこの先どうなるのか楽しみだな
あ、今回視点変更が大量にあるのでお気をつけて


48/神代凌牙とベクター

ギリギリと首が締め上げられ、壁に体を押し付けられ、息が絶え絶えになる

ひゅっひゅっと口から空気がおかしな音を立てて出て行くのが分かる

 

「わかってんのか!お前は俺に散々裏切られた、お前が前世でどれだけの仕打ちを受けたか知ったうえでだ!」

 

もうベクター自身、自分が何を言ってるんか半分も理解できてないだろう

なんで彼は、ベクターはこんなに怒っているのだろうか

俺の事なんてただの使い捨ての道具のようにしか思ってなかったのに

それともベクターも俺達と過ごす中で、仮初でも友情を感じてくれたのだろうか

ああそうだ、ドルべはあの伝言をベクターに伝えてくれただろうか、なんて場違いな事を考える

 

「それ、でも」

 

理由なんて自分でもわからない

この思いが何なのかわからない

それでも俺は、お前に会いたかった

……会えて、よかった

 

「やめろ、見るな」

 

ベクターは急におびえたように後ろに下がる

その拍子に俺の体が壁から離れたせいか、ベクターの腕だけでは俺を持ち上げるのが不可能になりべしゃりと床に落ちた

げほげほとせき込み、呼吸を整える

尋常じゃないベクターの様子に思わず恐怖を忘れて、その頬を落ち着かせるように撫でる

 

「大丈夫か?」

 

俺の言葉にベクターははっとして俺を見る

その眼は、俺から見ても淀んでいた

 

「見るな、見るんじゃねぇ!

 ……あいつと同じ目で俺を見るんじゃねぇ!」

 

「ベクター!」

 

その言葉を皮切りにベクターは俺の手を振り払い、通路の奥へと駆け出していってしまう

スカイ・ペガサスの遺跡で珍妙な罠があったし、ここでもなにがしかあってもおかしくはない

俺はすぐに体勢を整え、すぐにベクターを追いかける

なんで俺はベクターの為にこんなに必死になってるんだろうか

……なんかこの遺跡に来てからそんな事ばっかり考えてるなぁ

幸いにもベクターはすぐに見つかった

壁にもたれかかるように座り込み、両手で頭を抱え込んでいる

 

「違う、凌牙はあいつじゃない……うるせぇ、わかってる、No.は絶対に俺が……」

 

ぶつぶつと何か独り言を言っているが、あまりに声が小さすぎて何を言っているのかわからない

 

「……ベクター」

 

うつろな目をこちらに向け、その視界に俺を捉える

しかしぼんやりと俺を見つめるだけで何も示さない

 

「ベクター」

 

もう一度呼びかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ベクター』

 

『ナッシュ……やっぱり私には、この国を治めるなんて』

 

『またベクターのお父様に何かいわれたの?』

 

『……私は、争いが嫌いです、だから少しでもこの国の戦乱を収めたい

 国を治めるのに戦争を止めたいのに、父上は……』

 

『あの人根っからの戦争屋だからねぇ……

 まぁなるようになるんじゃね?』

 

『なるようにって……』

 

『ぶっちゃけ即位したらこっちのもんだから、今は耐えるしかないよ

 俺も出来るだけの支援もするし』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『なんとかなる、絶対に大丈夫」』

 

幻影と声が重なる

その言葉にベクターがやっと俺に焦点を合わせる

 

「ナッ」

 

 

 

ザ ク リ

 

 

 

「……え」

 

ベクターが何か言いかけた時、そんな音が俺の体から聞こえてくる

体が、おなかが熱い

恐る恐る視線を下に下げると、黒い何かが俺の体を貫いていた

 

「な、ん」

 

後ろを振り返るも、誰もいない

黒い何かを視線に辿ると、それはベクターの影に繋がっていた

……いや、黒い何かがベクターの影に繋がっているのではなく、黒い何かがベクターの影なのだが俺を貫いているのだ

 

『ああ、まったく面倒なことだ

 あやつも面倒なものをこの世界に引き込んだものだ

 ……いや、こいつが居なければ今頃七皇は空中分解していたか』

 

頭の中にそんな声が聞こえる

この感じは、サルガッソで俺が聞いた声と似ている

でもあの時の声とは違う、あの声より圧倒的強者の、より強い力を持った声

 

「え、あ、ナッ、凌牙、?」

 

ズグリズグリと影がより深く俺に突き刺さっていく

その様子を呆然とベクターは見ていた

俺はベクターの方へ手を伸ばす、けど腕が思うように上がらない

というかなんでおなか貫通してるのにこんなに俺は冷静なのだろうか、あれか、前世のアグレッシブな経験が原因か、それとも多少なりとも俺がデュエリストだからか

 

『「あ、あ……?ナッシュ?』」

 

どこかの遺跡

地下の闘技場のような場所

幻影が、見える

ああそうだ、そして俺はこう言ったんだ

 

『「泣かないで、俺の世界で一番』」

 

その言葉を言い切る前に、俺の視界は暗転した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで、どうして

何かを紡ぐ前に彼女は俺の影に刺さったまま力なく体を浮かせる

影が貫通しているにもかかわらず、血の一滴も流れていない

いや、違う、俺が、私が、彼女を、この手で

彼女は死んだように動かない、私が、殺した、?

ああそうだ、私の剣が、彼女を貫いて、それから……

それから、体が冷たくなって、私の、私の大切な

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

彼女を、私が、

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

彼女を掻き抱く

いやだ、また、彼女を失うのか?

弔いたくない、もう失いたくない

お願いだ、もう、私を、俺を

 

「置いて逝かないでくれ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだ、早い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識を無くしたようにベクターは壁に寄りかかる

……まさかベクターがここまでこやつに執着していたとは思わなかった

ナッシュに……神代凌牙に突き刺した影をそのままに、記憶を改竄する

まさか殺したはずのナッシュが人間としての生を受けていることには驚いた

 

『さて』

 

ぐずりぐずりと、ナッシュを侵食し奴の残骸を回収する

奴はかなりナッシュに食い込んでいたらしく、魂の損傷が激しい

まぁ、どのみちサルガッソで奴を召喚しようとしてたし、その時の干渉でかなりの精神ダメージを受けたようだ

 

『それにしても、ペンデュラムモンスターにリンクモンスターか』

 

神代凌牙がナッシュだったころは前世の記憶というものが無く、朧気に覚えていた程度で自覚するすらなかった

しかし神代凌牙という人間に転生し、どういうわけがナッシュの記憶ではなく、奴がこの世界に来る前の世界の記憶を思い出すとは思わなかった

ナッシュの知識は使える

どんどん影を侵食させ、その知識を吸収していく

……そして、我の欠片をナッシュに植え付けておく

今は泳がせて、ナッシュはこのままにしておこう

ここで我の元へ来させるのは簡単だ、ナッシュの魂はバリアンの力を失っておらず、それどころか前世……武藤マナミを思い出してより一層その力を増していた

我の力であるオーバーハンドレットナンバーズもナッシュの魂の奥底に眠っているので、それを媒介に洗脳するものたやすい

ただ武藤マナミを思い出した代償か、また別の要因かはわからないがナッシュの魂は王の時より、バリアンの時よりも損傷していた

今からバリアンとしての力を多用すればナッシュの魂は壊れてしまうし、仮に壊れなかったとしても魂はこの次元に固定されていない

へたに今こちらに引き入れても、力を多用し、器を失った魂が次元の狭間に落ちてしまったら、せっかくの駒が無くなってしまう

だから今はこの時の記憶を改竄し、我の欠片を植え付けるにとどめておく

ナッシュは一度懐に入れた相手を絶対に裏切れない

少しずつ、少しずつ我の欠片で侵食し、自分の意思でこちら側に行くように誘導する

いずれナッシュは己の真実を知るだろう

そして……ナッシュはこちらにつくだろう、ナッシュは無辜のバリアンを切り捨てられない

 

『次はベクターだな』

 

ナッシュに突き刺していた影を引き抜き、そのままベクターへ突き刺す

そしてナッシュ同様に記憶の改竄を行い、より深い洗脳を施す

錯乱した今の状態なら、ベクターの人格を壊さずともさっきまでよりも深い洗脳が出来た

……それにしても、今もそうだがベクターのナッシュに対する執着は凄まじいものを感じる

執着、というか依存、と言った方が正しいだろう

ベクターは、いや、他の七皇はわかっているのだ

ナッシュは何があっても裏切らない、絶対に信じてくれる

そういう不思議なカリスマ性があるからナッシュがデュエルをしなくても、七皇はナッシュを王とするのだ

 

「……逝か、ないで」

 

ベクターのそんな声を無視して記憶の改竄を進める

また何かのきっかけでベクターが前世を思い出さないように、念入りに

安心するといい、この事は全て忘れてより忠実な我の手駒になる

ナッシュもベクターも、この遺跡と関わりが深い為に共鳴現象が起こり、記憶が戻りかけるとは思わなかった

それはまだ早い

記憶が戻るにしても、まだ残りのNo.は回収できていないし手駒がベクターだけなのは少々動きずらい

そう、彼らの記憶が戻るその時は……

くすくすと笑う声が、遺跡に響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凌牙!凌牙!」

 

『おい凌牙!返事しろ!』

 

「ダメ、Dゲイザーも出ないわ……」

 

「シャークの奴どこ行っちまったんだよ……」

 

『やはりこれも遺跡の罠か?』

 

声を張り上げながら通路を進むが、凌牙の姿は見えない

ブラック・ミストも必死にあたりを探し回っているけど、それも無駄みたい

あの階段を下った後、私たちは凌牙が居ないことにようやく気が付いた

全員階段を上り凌牙を探そうとしたが、階段上から巨大な岩が転がり落ちてきてそれどころではありませんでした

それからも落とし穴が発動したり、天井が落ちてきたりと某トレジャーハンターのような仕掛けが私たちに襲い掛かり、気が付けばこの遺跡のどことも知れぬ場所に迷い込んでしまった

 

「璃緒さん……その、シャークは絶対に見つかります!大丈夫です、きっとひょっこり出てきますって!」

 

「……ふふ、そうね、ありがとう小鳥さん、少し元気が出ましたわ」

 

大丈夫、きっと凌牙は見つかる

凌駕の悪運は強い方だし今慌てても仕方がない、凌牙が無事だと信じて今は前へ進もう

 

「遊馬、アストラル、凌牙の捜索は一旦打ち切ってNo.を回収しに行きましょう」

 

『……いいのか璃緒?』

 

「ええ、凌牙だったらNo.の方が優先順位が上だろ!っていいますし、No.を手土産に凌牙を見つけた方が何の遠慮も無く殴れますわ」

 

『お前ら双子はなんでそんなに攻撃的なんだ』

 

喧嘩はもっぱらリアルファイトだったからその影響でしょう

捜索を打ち切ってから私たちはとにかく遺跡を歩き回り、何とかしてNo.を探しだそうとしたが如何せんこの遺跡は広い

時間だけが過ぎていき、このままではバリアンに先をこされてしまいます

 

『なぁ璃緒』

 

「……?どうかしまして?」

 

ブラック・ミストが遊馬達に聞こえない程度の声で話しかけて来たので、私も小声で返す

ちらりとそちらの方を見ると、なんだか不安そうな顔をしているけどどうしたのかしら

 

『お前、凌牙が心配じゃないのか?』

 

「あら、心配に決まっていますわ」

 

ブラック・ミストが何かほざいているようなので即答で返す

 

「いきなり何を言っていますの?」

 

『いや……だって、なんだかんだであっさり凌牙の捜索を打ち切ったし』

 

「聞きますけど、凌牙探しに集中していてNo.を取られました、なんて話を凌牙にしたら殴られますわよ?」

 

『そうだけどよ…』

 

「ブラック・ミストが凌牙を心配するのはわかります、でもこれ以上時間を無駄に出来ませんわ

 それに凌牙なら何があっても絶対に私たちの元に帰ってきてくれます、だって凌牙が私たちを置いてどこかに行くなんてありえないから」

 

その確固たる自信があるから私は凌牙捜索を打ち切ることが出来るのだ

凌牙は絶対私たちから離れない、絶対に帰ってきてくれる

そう信じられるから、私はこうやって前に進めるのだ

 

『璃緒……お前は「居ましたわ!」』

 

突然張り上げた私の声に皆が一斉にこちらを剥く

しかしそれに構わず私は走りだした

 

「いもシャ!?え、どうしたんだよ!」

 

遊馬達も続けて走りだす

遊馬達が後ろからついてくるのを確認し、さらに速度を上げる

常日頃から説教から逃げる凌牙を追いかける為私の速さはかなりものになっている(ただし凌牙には追いつけない)から速度を遊馬達に合わせないと遊馬達が私に追いつけませんからね

 

『璃緒は以前、病院から姿を消したシャークを探し当てることが出来た、もしかしたら今回も』

 

「ええ、凌牙の気配を感じますわ」

 

わかる、凌牙はこっちにいる

その感覚に従い、遺跡内を走り回る

遺跡の通路の先に今までに見たことのない大きな扉があり、それを半場け破る形で扉を開け放つ

……そこは、処刑場だった

部屋の中央には円形の広い空間があり、その周りは深い堀のようになっており落ちたらひとたまりもないだろう

壁には斧や剣などの武器が飾られており、壁には檻が埋め込まれていた

そして、私たちの正面には玉座があり、そこには

 

「よぉ、やーっと来てくれたか」

 

ベクターが座っており、そのベクターに抱えられるように眠っている凌牙が、いた




次回、やっとデュエルします!さぁ、相手は誰だ!?そしてベクターのデッキはどうなっているのか!?
ドキドキ遺跡編でやっとデュエルします
え、遊馬とスカイ・ペガサス戦?あれは半分スキップしてたから(震え声)

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