神代凌牙はデュエルをしない   作:さらさ

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段々ドルべのキャラがおかしくなっていく……

VRAINSのスピードデュエルってあんな感じになるのか……
普通のスタンディングデュエルもある……あるよね?


3、神代凌牙のドキドキ遺跡探索
44/ベクターとカオスの神様


「どこに行くんだベクター」

 

あの戦いから数日、バリアン七皇が根城にしている建物から出ようとしていたらドルべに見つかった

ドルべはあいつらが居なくなってから自分が俺らをまとめなきゃと常に気を張っている

ましてや俺はアリトやギラグみたいに眠りについてはいないが体はズタボロだ、だから余計に俺に意識を向けているのだろう

 

「あー、ちょっとなー」

 

「はぁ、この自由人め……

 それでこれからどうする?」

 

これから、というのは遊馬達の持ってるNo.の回収の話だろう

俺が真月零として学園に潜入し、アストラルと遊馬の友情を引き裂く作戦も失敗に終わったし

 

「とりあえず何の情報がない以上どうしようもできねぇだろ」

 

「なんとか出来ないのか作戦隊長」

 

「できねぇもんはできねぇよ参謀」

 

あんな事が合った以上、あっちも相応に警戒するはずだ

下手に突撃して攻撃を仕掛けるのは危険だし、返り討ちに会う可能性も高い

 

「……今は静観するほかない、か」

 

「そういうこった」

 

何かしらのアクションがないときついだろう

また計画の練り直しかと思うとやる気をなくす、ドルべはともかくミザちゃんは脳筋だしな……

 

「んじゃ、俺は行くとこあるから」

 

そう言って俺はひらりと翻り歩き出す

そうだ、俺は行って確かめなければならない、アストラル世界とバリアン世界の戦いの意味を

 

「……ベクター、遊馬達との友情ごっこは楽しかったか?」

 

その言葉に思わず足を止める

 

「……まぁな」

 

きっとドルべの”楽しかった”は、きっと人間としての生活を指しているよな

こんな質問をあいつがしてくる事に驚きつつも質問の返答を考える

学校で授業を受けて、休み時間はあいつらと馬鹿騒ぎをして、放課後は寄り道をしたり凌牙と一緒にカイトのところに行ったり

……神代凌牙、この世界とは異なる世界からやってきた転生者

思えば真月零として生活していた時の記憶を思い出すと遊馬達よりも、あいつと過ごした時間の方が多かった気がする

この世界には存在しないペンデュラムカードや遊戯王シリーズと呼ばれるこの世界……いや、この次元とは異なる次元の話

その情報を聞き出すために凌牙に付きまとってたからな、でもそれが友情ごっこよりも楽しかったかもしれない

 

「あいつは、凌牙は言っていたぞ

 ……ベクターは友達だったと、それだけは変えられない真実だったと」

 

前世では信じてもらえず、裏切られて、最後には殺されてしまった哀れな少女

それで心が病んでしまったにもかかわらず、あいつは俺を友と呼ぶのか

何を言っていいのかわからず、ドルべに背を向けたまま歩き出す

俺は確かめなきゃいけないことがある、その為に

 

「神代凌牙は本当に……××××に似ているな」

 

ドルべのその言葉に振り返ることなく、ただ歩いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に広がるのは赤い海、別名悪意の海

ここは古くからの言い伝えでバリアン世界の神であるドン・サウザンドが眠るとされている場所だ

海の深い深い場所に眠るとされるドン・サウザンドに会うのが俺の目的

そんな古い伝承が本当かどうかもわからないけど、一欠けらの可能性があるのなら俺はそれにかける

ドボンと飛び込み、視界が赤に浸食される

悪意が俺を襲い、硫酸の中に入ったみたいに少しずつ溶ける感覚があるが不思議と痛みはない

何分か、何十分か、何時間か、体感時間が狂いながらも海の深い深い場所へ潜っていく

そしてやっと見つけた悪意の海の終着点、大きな海底の切れ目へ入っていくと伝承にあったドン・サウザンドの紋章があった

あの伝承は、嘘じゃなかった

 

「ドン・サウザンド!俺らの世界の神よ!俺の問に答えろ!」

 

ズタボロの体からカオスをありったけ搾り取り、紋章にぶつける

この方法が正解かもわからない、けれども不思議とこの方法が正解だと確信していた

 

『……我の眠りを妨げるのは誰だ』

 

頭の中に響く重苦しく、しかし不思議と頭の中にすんなりと入ってくる不思議な声

そして確かに感じる絶対的な存在感

これが、俺らの神にして頂点であるドン・サウザンド

 

「てめぇの都合なんてどうでもいいんだよ、俺はお前に聞きたいことがあってきたんだからな」

 

『その声は……ベクターか?』

 

「!?」

 

こいつなんで俺の名前を……いくら神でもこいつはさっき目覚めたばかりだ

いや、そういう”存在”だから、と言われればそれまでだが何か引っかかる物を感じる

 

『しかし何用だ、お前がただ何となくで我を眠りから起こしたわけではあるまい』

 

そうだ、俺はこいつに聞きたいことがあってきたんだ

 

「俺達はなんでアストラル世界と戦っている!?この戦いに何の意味がある!?答えろ!ドン・サウザンド!」

 

凌牙の言葉を聞いてから時々考えていた

なんでアストラル世界と戦うのか、どうしてそれが原因でバリアン世界が滅ぶのか

俺達バリアンが、数千年という長い時間アストラル世界と戦っているわけを、きっとドン・サウザンドなら知ってるはずだ

知っていなくても何かきっかけとなる出来事を知っているはずだ

 

『……』

 

ドン・サウザンドは答えない

黙ったまま、何かを思案するように目を閉じる

 

「はぁっ!?」

 

ドン・サウザンドから無数の触手が伸び俺を絡めとる

触手から逃れるように必死に抵抗するが、ドン・サウザンドを目覚めさせるために莫大なカオスを使い、さらに遊馬達と戦った傷もまだ癒えていない

逃げ切れるわけがなかった

 

『まさか七皇であるお前がその疑問にたどり着くとは、我もそろそろ動かなければな』

 

「どういう、意味だよ……!」

 

『何も疑わずにアストラル世界を滅ぼせばよかったものを……

 目障りな××××と×××を殺したのに、やはり××××の影響力は無視できないものだったか』

 

「ころ、した?」

 

こいつは何を言ってるんだ?

ドン・サウザンドの言い方だとあいつが××××と×××を殺したような

でもそれをしたのは俺だ、ちゃんとその時の記憶もある

 

『本当に?』

 

声が頭に響く

 

『それは本当にお前の意思だったか?』

 

そうだ、あれは俺の意思だ

××××達が目障りで、だから×××を盾にして一緒に

 

『本当にお前は××××を目障りだと思っていたのか?本当に?』

 

そうだ、俺は××××が、目障りで、嫌いで、だから……

本当に?これは、本当に俺の気持ちだったのか?

 

『生まれた時よりNo.に祝福された哀れな皇子

 カオスとNo.の親和性が高いお前に干渉するのはたやすい事よ』

 

「なんだよ、それ!どういう意味だよ!」

 

No.に祝福された?皇子?干渉?

一体何のことかわからない、わからないがその言葉が本当なら

 

「お前が、××××を俺に殺させたって事かよ……!」

 

『ほう、気が付いたか』

 

少しだけ驚いた声を上げ、感心したようにうなずく

なんだよ、それ、じゃぁ、アストラル世界との戦いも、バリアン世界の崩壊も、全部

 

「そうか、よくわかんねぇが全部黒幕って事かよ……!」

 

ふざけるなと叫び出したい、俺らの戦いが全部無意味な事だったなんて

バリアン世界はアストラル世界が原因で崩壊しない、だからアストラル世界との戦いも全部……無駄だった

××××を殺したのだって、俺自身そう選択したように見せかけて、全部こいつの

 

『だが今更気が付いたところでもう遅い』

 

ずくり

 

「あ、がああああああああああああ!」

 

触手が俺の体に突き刺さり、俺の体を貪る

心臓が絡み取られ、それが強烈な痛みになって俺に襲い掛かった

 

『ベクター、今この時よりお前は我の依り代となり、我の手足となり動くのだ

 まぁ、あまり自我を壊しすぎるとカオスの供給に支障が出るので強く干渉出来ないが……お前には関係ないか』

 

「い、がぁ、あ!」

 

目が霞んで視界が滲む、思考が淀んでいく

せっかく真実にたどり付いたのにこんな結末になるなんて

 

「みざえ、ど、る」

 

あいつらなら俺の変化に気付くだろうか

 

「あ、り、ぎら、ぐ」

 

目覚めない同胞は大丈夫だろうか

 

「な、め、ら」

 

俺が弔った、あいつ等は

 

『さぁ、その心臓を我に捧げよ!』

 

そして俺の意識は反転した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ダメ、何も感じないわ」

 

「いもしゃのアンテナでもダメかー……」

 

「だから!その名前で呼ばないでって何回言ったらわかるのよ!」

 

屋上で私と凌牙、遊馬、小鳥さん、ブラック・ミストで小会議を開いていた

授業中に私たちが感じた”何か”の正体を確認するため

あの感覚は一瞬で、詳しく正体を掴む前にその”何か”は霧散してしまった

 

「でも、皆が一斉に何かを感じ取るなんて……」

 

小鳥さんの言う通り普通の人間とはいいがたい私たちが”何か”を感じ取るなんて

何かしらある、そう思ってるからこそこの小会議なのだろうけど

 

『凌牙、お前は何か気が付いたこととかなかったか?』

 

「……」

 

ブラック・ミストが凌牙に声をかけるが何も反応を見せず、ただ空を見つめている

 

「凌牙!」

 

「ん?んー……あー、なんもないなー

 ただこのメンバーが何か感じ取ったとすると、やっぱバリアンとかNo.関係の可能性が高いんでねーの?」

 

私の呼びかけでようやくこちらに意識が向いたのか、そう言葉を紡ぐ

凌牙はあの戦いからぼーっとすることが多くなった

今だ癒えていないのだろう……ベクターに裏切られた時につけられた、心の傷が

でも、少し前よりはましだ、と思いたい

サルガッソの戦いから3日間凌牙は部屋に閉じこもって出てこなかった

私がいくら呼びかけても、遊馬達が声をかけても、凌牙は出てこなかった

唯一の凌牙の安否がわかるのは実体の持たないブラック・ミストとアストラルの報告だけ

その報告でも、凌牙は何をするわけでも無く、ただ部屋の隅でじっとしていたと

そして3日がたちようやく出て来た凌牙はボロボロだった

少しだけ頬が痩せこけ、目の下には濃い隈が出来上がっていた

 

「だよなー……」

 

「でもそれがバリアン関係だったとして、一体何があったのかな?」

 

「バリアン世界で何かあった、とか?」

 

『何かってなんだよ』

 

「知らぬ」

 

部屋から出て来た凌牙は力なく笑った

自分はもう大丈夫だと、時間はかかるけど、乗り越えて見せると

 

「何か大きい事でもしようとしてるんかな?」

 

「あのサルガッソの戦いであちらはかなりの深手を負ったはずですから、こんなに早く仕掛けてくるものかしら?」

 

色々と意見を出し合うけど、これといった情報は出てこない

遊馬の持っている皇の鍵が輝き、空が曇天に包まれる

そしてそこに現れたのは、あの戦いで私たちが使った皇の鍵の飛行船だった

フラッシュ・トランサーが私たちを飲み込み、飛行船の中へと誘う

 

「とりあえずアストラル、貴方むやみやたらに飛行船を出すのはやめなさい」

 

『アレすっげー目立つぞ』

 

『それは……配慮が足りなかったな、すまない』

 

素直に謝るアストラルに反省したかと小さく息をはく

ただでさえ前に飛行船が現れた時に大騒ぎになったのだから……

 

『とりえずこれを見て欲しい』

 

現れたのは球体の地図、その地図には赤い点が7つあり何かを示しているようだった

そして

 

<遊馬、アストラル>

 

ホログラムが一人の男性の形になる

探検家のような服を着ており、顔立ちがどことなく遊馬に似ている

 

「父ちゃん!?」

 

「ふぁ!?」

 

「え、遊馬のお父様ですの!?」

 

遊馬の父……九十九一馬さんの言葉だと事態は良い方向に向かってはいないらしい

そして遺跡の7枚を探せと、そういうメッセージがの越されていた

 

『で、これ見てお前はどうすんだよ』

 

ブラック・ミストが遊馬にそう問いかける

答えはわかっているが念のための確認の為だろう

 

「父ちゃんは今まで俺を導いてくれた、だから俺は父ちゃんを信じる!」

 

真っすぐとこちらを見る真っ赤な瞳が私たちを射抜く

 

「俺も行くよん!もしかしたらあのNo.についてわかるかもしれないし」

 

あのNo.というのはサルガッソの戦いで凌牙が使っていたNo.35ラベノス・タランチュラとNo.84ペイン・ゲイナーの事だろう

あの戦いの後あのNo.を探してみたが、最後まで見つかることはなかった

凌牙もなんであのNo.を持っていたかわからないし、かなり危険なNo.だというのは私たちの共通認識だ

 

「もちろん私も同行しますわ」

 

『凌牙が行くなら俺も行く』

 

「そうと決まれば出発するわよ!」

 

飛行船が動き出す

高度がぐんぐん上昇し、ハートランドから離れていくの見ながらまた新たな戦いについて考える

7枚のNo.は一体どんな力を秘めているのか、そして……

 

「……」

 

『ん?どうした璃緒?』

 

「いいえ、なんでもありませんわ」

 

No.は元々アストラルの記憶でありヌメロン・コードの鍵、それがなんらかの原因で100枚に分かれ人間世界にばらまかれた

なのに遊馬のお父様の話だと7枚のNo.はまるではるか昔からあったような言い方

それにWDCで小鳥さんと遊馬から聞いたNo.7ラッキー・ストライプも昔から美術館に保管されていたNo.と聞いたし……

アストラルがこの人間世界に来たのは最近なのにそんな昔からNo.があるのはおかしい

その7枚のNo.は本当にアストラルの記憶なのだろうか?

バリアンが持つオーバーハンドレットナンバーズもアストラルは知らなかったし、もしかしたらその7枚のNo.はバリアン側のNo.だという可能性もある

……いや、バリアン側のNo.だったらとっくにあちらが回収しているはずだ

 

「璃緒?どうしたん?」

 

凌牙が心配そうな眼差しでこちらを見てくる、少し考え事が長すぎたかしら?

 

「いいえ、なんでもありませんわ」

 

私はそう言いながら、微笑んだ




\デデーン、ベクターアウトー!/

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