神代凌牙はデュエルをしない   作:さらさ

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今初めてゼアルを見て十一話まで見終わったわけですが……
シャークさんゲスすぎてびっくりしたし作画もあれで笑っちゃいましたwww
今回はⅣ視点の話です
次の璃緒視点が終わったら凌牙視点に戻ったらいいな


2/トーマス・アークライト、あるいはⅣにとっての神代凌牙

トーマス・アークライト、あるいはⅣにとって神代凌牙は奇妙な友人であり自身の一番のファンだ

デュエルをしない凌牙とⅣがいかにしてであったのか

それは数年前まで遡る

 

 

 

「……ったく、どいつもこいつも雑魚ばっか、ヘボデュエリスト共が」

 

Ⅳはそう言いながDディスクをしまう

ここ最近様々な大会で優秀な成績を収めているせいか、逆恨みのように襲われるようになった

だが所詮は逆恨み

雑魚が群れる程度ではⅣには勝てない

年下のⅣにいいようにされるなんてⅣが手を下さなくてもいずれはプロの世界から消えるだろう

興味なさげに踵を返し、裏路地から出ようとしたとき

 

「ふざけんなぁ!ガキなんかに!ガキなんかにぃいいいいい!」

 

一人の男が起き上がり、Ⅳに向かってこぶしを振り上げながら突進してくる

あまりに突然の出来事にⅣはとっさに動くことができなかった

いくら襲われると言ってもそれはデュエルの話だ

喧嘩は弟としていたとはいえ所詮は口喧嘩、殴り合いの激しい喧嘩などしたことがない

それに全員倒したから油断していたのもあるのだろう、男のこぶしがⅣを捉えようとした時

 

「闇討ち、暗殺、お手の物!」

 

そんな掛け声と共に男が視界から消えた

いきなりの出来事にⅣはとっさに反応することができず、その場で棒立ちになるほかなかった

入れ替わるようにⅣの視界に入ったのは青い髪を揺らす一人の少女

 

「おい!早く来い!」

 

「な、おい何するんだ!」

 

「いいから!早くしないとまたあいつらに絡まれるぞ!」

 

そう言いながら青髪の少女はⅣの手を取る

Ⅳが何かと抗議をする前にそのまま走りだした

路地裏を縦横無尽に駆け回り、少女が殴り飛ばした男以外が追ってくる

見た目はスポーツでもやってそうで、影の世界のことなど何も知らさそうなのに、こんな裏路地に詳しいなんてこの少女は一体何者なのだろうか?

 

「隠れるぞ」

 

少女はそう言ってⅣを建物と建物の狭い隙間に押し込んだ

反論させもえも許さず、そのまま少女も隙間に入り込む

数分も立たずにバタバタと足音と男たちの怒鳴り声が聞こえてくる

 

「いねぇ!あのガキどもどこ行きやがった!」

 

「な、なぁ、やっぱやめようぜ?確かにⅣだけだったら何とかなったかもしれねぇけど、❝シャーク❞もいるんだ」

 

「シャークっても子供だろ?」

 

「いや、あいつはやばい」

 

「(❝シャーク❞?こいつの事か?)」

 

男たちにシャークと呼ばれた少女は特に反応を見せず、隙間から男たちの様子をうかがっていた

隙間に潜伏しているⅣ達には気づかず、そのまま立ち去って行った

 

「……はぁ、もう大丈夫そうだな」

 

そういって少女は隙間から裏路地へと出た

こちらを振り向きⅣの手を取り隙間出させ、もう一度周りを見渡した

 

「もう平気だな、大丈夫かⅣさん」

 

「あ、平気だけど

 ……じゃねぇ!てめぇ誰だよ!いきなり連れまわしやがって!?」

 

そう言いながらⅣは少女に詰め寄る

少女はキョトンした後、罰が悪そうに顔を背けた

 

「あー、悪い、ちょっと憧れのデュエリストが絡まれてて、それでついその場のテンションとノリで……

 初めましてⅣさん、神代凌牙です」

 

そう言って少女……神代凌牙は握手するように手をⅣに差し出した

 

 

 

「Ⅳー!聞いてくれよ、また璃緒が絡まれてさー」

 

「またか!あいつどんだけモテてんだよ……」

 

「まぁ、ぼっこぼこにしてやったわけですが」

 

「そんなんだから❝シャーク❞って言われて恐れられてんだよ」

 

「なんでや!妹を守ってるだけやろ!?」

 

「だからってリアルファイトすんなよ!」

 

「黙れデュエル脳」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

「やめてください死んでしまいます」

 

公園、そのベンチにⅣと凌牙はいた

何の因果か知らないが、こうしてⅣと凌牙はたびたび顔を合わせるようになった

どうしてこうなった、俺は復讐のためにこんなことしてる場合じゃないとⅣは内心頭を抱えていた

しかし、凌牙と今はいないがその妹璃緒との会合は思ったよりもⅣは楽しんでいた

例えば凌牙と璃緒は重度のシスコンだとか

例えば❝シャーク❞の通り名(?)は璃緒にすり寄る男どもをリアルファイトで倒したため付いただとか

例えば神代璃緒はデュエルをするとか

……例えば、神代凌牙はデュエルをしないとか

おい、デュエルしないのに俺のファンってどういうことだよ

 

「そーいやお前この次の大会って出るの?」

 

その言葉にⅣはびくりと肩を揺らした

 

「璃緒がその大会に出ることになってさ、お前も出るのかなってさ」

 

「……俺も出るぜ」

 

知っている、いや、知っているからこそⅣはこの大会に出るのだ

この会合をいつの間にか知ったトロンが立てた計画

この大会に出て神代璃緒を倒し、魂を捉え、トロンを強化する

捉えられた魂は、トロンが解放するか……トロンが倒されるしか魂をもとの肉体に戻す方法はない

目の前の奇妙な友人はⅣがこんな醜い考えを抱いているなんて夢にも思ってないだろう

 

「ま、予選で俺と当たらないことを祈るんだな

 璃緒も腕が立つとはいえ俺の足元にも及ばないからな」

 

「おっと璃緒を馬鹿にするとは俺に対する挑戦状か?

 ……お前がそこまで死にたがりとは思ってなかった、表へ出ろ」

 

「凌牙、ここはもう表だ」

 

白々しい会話だ

予選で当たらないことを祈る、なんて

 

 

 

気が付いた時にはもう夕暮れで、凌牙は家へと帰って行った

俺は両手で手を覆い、必死になって叫びたくなる衝動を抑えた

凌牙、璃緒、復讐者である俺を友と呼び慕ってくれる小さな子供

そんな彼女らに自分は何をしようとしている?片割れを引き裂いて、いつ目覚めるかわからない眠りへと落とす

でも、それでもやめるわけにはいかない

あの誰よりも優しい弟が、誰よりも聡明な兄が、……誰よりも家族を愛していた父が

ばらばらになった家族の絆をもう一度取り戻すには、復讐を成しえるしかない

 

なのに、

どうして璃緒とのデュエルの場にお前がいる

 

「きゃああああ!」

 

「なんだよこれ!こんなの聞いてなかった!こんな、こんな……!」

 

「なんでもいい!Ⅳ!璃緒!こっちにこい!」

 

 

どうして目の前に炎が広がっている

 

 

 

「Ⅳ!璃緒!」

 

 

どうして凌牙が、鉄柱の雨の中にいる

 

 

 

「いやああああああ!凌牙!凌牙ぁ!」

 

「凌牙!どうしてだ!凌牙ああああああああ!」

 

 

 

どうして、血みどろになって倒れている

 

 

……もう、何も見えなくなった




なぜかシリアスになっていた不思議

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