あとこの話は中々たいへんでしたわぁ
「え?小鳥ちゃんが付きまとわれてる?」
そんな話を聞いたのは丁度一時間目が終わった後の休み時間の事だった
理緒は心配そうに一年教室を見ながら俺にそう言ってきたんだが……
おい遊馬、おい、お前の将来の嫁(仮)が付きまとわれてるのに何してんだ……
「なんなん?ストーカーの類?」
「そうではなくて……どうやら彼……アリト君は小鳥さんの事が好きみたいなのよ」
「……そのアリトって子もしかして最近小鳥ちゃんのこと好きになったの?
最近知り合ったとはいえ、小鳥ちゃんが遊馬の事好きなのは一目瞭然なんだよなぁ」
なんという茨道、恋する見知らぬ少年、アリトに幸あれ……
「まーいいんでねーの?あんまりにも付きまとってたら俺がデュエル(物理)しに行くし
璃緒も女子だから他人の恋愛事情を詳しく知りたいのはわかるけどそこまで酷くなかったらほっとくのもありじゃない?」
そう言うと璃緒は複雑そうにこちらを見つめている
…?なんぞや?
こういときの璃緒の顔は言いたいんだけど言っていいかわからないけど、確実に俺達双子に何等かの関わりがあるときの顔だ!(長文)
「何か言いたいことあるん?」
璃緒が複雑そうにこっちを見て、そして逡巡
「私、その時初めてアリト君と会いましたの」
「うん」
「でも、私、本当に、アリト君と初めて会いましたの?」
「ん?」
速報、我が妹が電波発病した模様
「どういうこと?」
「私、零君とあった時も、何か言いようのない違和感がありましたの
……言葉に表せない違和感で、なぜか会ったことがないのに、懐かしい
私、私は、本当に、零君と、アリト君と初めて会いましたの?本当は、どこかで、」
「璃緒」
璃緒の口元に指を持って行ってやって言葉を止めてやる
よくわかんないけど璃緒は追い詰められてるみたいで顔が真っ青になって、いつもの可愛い顔が台無しだ
というか璃緒も零に対して違和感を感じてたか……なんなんだろうなー、全然接点も何にもないはずなんだけどなー
「なーなーちょっち璃緒具合悪そうだし保健室つれていくわ、誰か先生に伝えといてー」
教室中からはーいとかわかったーなどの返事が聞こえる
皆璃緒の顔色を見て尋常な何かがあったと悟る、まぁ人に弱みを見せたがらない璃緒がこんなに弱ってるからなぁ……
璃緒の手を繋いで廊下に出て誘導してやる
「凌牙……ありがとう」
保健室で璃緒をベットに寝かせてやった時、か細く、しかし確かに璃緒のその感謝の言葉が聞こえた
「…ん?」
保健室から渡り廊下で教室に帰る途中、外からたったったと誰かが走っている音が聞こえる
そっちに目を向けると黒髪で褐色肌の男子生徒が走っているのが見えた
制服の色が赤だし一年生かな?赤色の服だしあいつの翡翠色の眼がよく合い……
……?
「まただ」
零の時と同じ、後ろ姿であいつの顔なんて見えないのにわかる瞳の色
そして、違和感……待てよ
璃緒が言っていた零と同じように違和感を感じるアリトという少年、アリトは小鳥ちゃんが好きってことは同学年って可能性が高い
もしかしてあいつがアリトか?だったら会ってみるか、今更授業をサボるなんて怖くないぜ!
渡り廊下から飛び降りてこっそりと後ろからついていく、こちら神代凌牙、ミッションを開始する
『段ボール被れよ段ボール』
いや廊下だしそんなのないよ……
こそこそと某蛇さんよろしく背後からついていく
んんー?こっちの方なーんもなかった気がするんやけどどうしたんだろうか?
んー?アリトが入っていったあの建物はもう使われてない体育倉庫だった
ヤンキーなの?ヤンキーなの?
『なんで二回言ったし』
大切なことなので二回言いました
うーん、どうする?凸っちゃう?凸っちゃう?
『知るかよ、自分で考えろ』
はーい
まぁ俺まどろっこしいのは嫌いだし?こうなら突撃しかないよね☆
というわけで俺は意気揚々と扉を開けた
「おーい一年坊主!サボってないで授業に出ろや!」
……さっきのアリト少年(推測)ともう一人の生徒がいた
二年生服を着ていて背中に羽の付いた……ほら、あの坊ちゃんとかがつけてるズボン止める紐みたいなやつ……サスペンダー?をつけた茶色の瞳の大男
この人にも、何か…何か、言葉にできない、心ではわかってるのに、それを脳がうまく処理できない……でも、でもそれよりも見逃せない事実がある
そこらへんに散らばってるカップ麺やらコンビニ弁当のごみ
レジャーシートに寝袋や目覚まし時計
そして軽快にさなぎちゃんのセカンドシングルを流してるTV
「おめーら体育館倉庫で何やってんだよ!?」
ギラグに俺の天使の話をしていたら突然体育館倉庫の扉が開いた
ここは人が来ないから好き勝手やってたけど、もう見つかるなんてな
扉の方を見ると青い髪に意志の強い青色の瞳を持ち、右目の目元、首、右腕の途中まで巻かれた包帯レディ
『アリトは頑張り屋さんだねー!そんな君には俺が直々になでなでして進ぜよう!』
『ギラグ!ギラグぅうううううううう!
今はいない、俺達七皇のリーダーの××××が、なぜか思い浮かんだ
神代璃緒とあった時も、×××の事がなぜか思い浮かぶ
「おめーら体育館倉庫で何やってんだよ!?」
そう言いながらレディは倉庫内に入ってくる
ギラグの方をちらりと見るとギラグも同じように感じているのか固まっている
「お前ら倉庫私物化してんじゃねーよ!そこの二年生も一緒になってこんなことやってんなよ……」
きょろきょろと体育館倉庫を物珍しそうに見てから俺達を見る
青色が視界に移るたびに、どうしても××××が思い浮かんで落ち着かない
「おーい一年坊主大丈夫?なんか具合悪そうだけども」
そう言いながら覗き込むようにこっちにレディはこっちを見る
「あ、ああ!アリトはなんか今日は具合が悪いみたいでさぁ!だからそっとしておいてほしいなーなんて、ははは!」
「いやーそういう君も具合悪そうですけど……」
「いや、大丈夫!本当に大丈夫だから!
あ、あー!そう名前!君の名前教えてくれないかな!?」
ギラグが必死にごまかしてるけどあれ効果あんのかなぁ……
レディは訝し気に俺達を見ていたが、少し考えるように逡巡した後答える
「なーんか気になるけどいいか
俺は二年生の神代凌牙だ、よろしくな」
「俺はギラグだ」
「ア、アリト、俺の名前はアリトだ」
カラカラの喉から出て来たのはそんな引き攣った声
神代凌牙、神代璃緒の双子の姉でデュエルをしないデュエリスト
ギラグはもちろん前この学校の生徒を洗脳したときに関わっただろうから名前ぐらいは知っているはず
「あー君がアリト君?君の事は妹から聞いてるよー
……それにしてもこれ本当にどうなってるん?マジでお前らここに住んでるの?」
あ、やっべどうしよう
これどうやってごまかそう?
いつもは適当に洗脳してるけど確かこいつ洗脳効かないんだよなぁ
「ん?どうしたん?天の……」
その瞬間いきなりガクリと前のめりに倒れる
……え!一体どうしたんだ!?
慌てて神代凌牙を支える、体にはなんの異常もないし、一体どうしたんだ?
ギラグと顔を見合わせてどうしようかと頭を抱えるのであった
「ど、どうすんだよギラグ!」
「俺に言われても!とりあえずお前が保健室に連れていけ」
「ええ!ギラグは来ないのかよ!」
「だって俺一応二年生だぞ!こいつと同じ学年だからなんか感づかれてもおかしくないだろ?」
「うぐ!そ、そうだけどよぉ」
まるで眠っているように神代凌牙はなんの反応もない
それに神代凌牙は俺の事を神代璃緒から聞いてるみたいだし、俺の方が適任かもしれないけどさぁ!
結局俺は神代凌牙をおんぶして保健室まで連れて行ったのだった
「……ん?」
目が覚めるといつの間にか保健室のベットに寝かされていた
どうしてこうなった\(^o^)/
「あ!凌牙!目を覚ましたんだな!」
声がした方を見るとアリトがいた
おいちょっと待てこれどういう状況なん?
えーっと確かアリト君をストーキングして体育館倉庫行ってー
あれ、確かアリト君とギラグと話してる時に天の声さんがなんか言ってきて……?ん?
『気にしたら負けだ』
せやな!
「んんー、なんか途中で倒れたっぽいんだけど、なんか知ってる?」
「いや、俺もいきなり倒れてびっくりしたぜ!」
なーんか最近こんなんばっかやでぇ……
バリアンだりなんだり、天の声さんだったり
なんなん?俺何か付いてるん?
いや、遊戯王次元に生きている以上ある程度のもめごとに巻き込まれるのは覚悟の上だったけどさ……
「あー……あのさ」
「?どしたん?」
「体育館倉庫の事なんだけどさー」
「ん?ああ、別にいいよ」
「え!?」
「ん?」
いきなりアリト君がそんなすっとんきょんな声を上げる
ん?
『まぁここは遊戯王次元とやら不思議が起こっても仕方ないんじゃないか?』
そうなのかなー?
でもバイクに乗ってデュエルしたり次元戦争したりカードの精霊がいたりするし普通なのかなー
「え、えっと、黙っててくれるんだったらいいんだ!じゃぁな!」
そのまま大慌てて保健室から出て行くアリト君
あんなに急いで大丈夫かねぇ?
「ところで凌牙、倒れたと聞いたのですがどういうことですか?」
シャッと音がしたかと思うと、隣のベットに璃緒がいた
……やっちまった\(^o^)/オワタ
ちなみに凌牙ちゃんが突然寝たり体育館倉庫に住んでるのに何の疑問も抱かなくなったのもブラック・ミストのせいです
RUM-バリアンズ・フォースが聞かなくてブラックミストの洗脳(?)が効いたのは凌牙ちゃんがブラックミストを信頼しているからです
もし警戒してたら効きませんでした