君とボクと   作:律@ひきにーと

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【キス魔だから】(キスあり)

「キス禁止だ」

 

「はぁ?」

 

急に何を言い出すのかこの人は

そう思ったセリカはとりあえず聞き返すことにした

 

「唐突になんです?」

 

「普段からキスし過ぎなんだ」

 

「そりゃあまぁ貴女となら幾らでもキスしたいですよ」

 

「そういうことじゃない!」

 

のらりくらりと言葉巧みに正当化しようとするセリカに雪那は怒る

 

「ボクとキスするのが嫌なんですか……?」

 

哀しそうな目をして雪那を見つめるセリカ

そんなセリカを見た雪那は罪悪感を感じながらもそれを頭を振ってそれを必死に振り払い

 

「口唇ヘルペス……とやらにになったんだ」

 

「口唇ヘルペス……あぁ、言われてみれば」

 

セリカは雪那の顎を持ちくいっと持ち上げるとその顔をのぞき込む

すると雪那の唇の端が赤くなっているのを見つけた

 

「あー……なってますね 確かに」

 

のぞき込まれた雪那は恥ずかしくなってその手を振り払う

 

「だから、当分キスは禁止だ」

 

「あー……うつっちゃいますもんね」

 

そうなると

 

「えーっと、エッチも禁止とか」

 

「当然だ」

 

ですよねー、とがっくりとするセリカ

まぁ『そういうこと』をしてしまえば当然の様にキスしてしまうので当たり前ではあるが

 

「禁止ってどれくらいですか……?」

 

「一応医者に行くが恐らく1週間程だろうな」

 

「1週間も雪那とキスできないなんて……」

 

まるで世界の終わりが来たかのような顔をするセリカ

 

よくよく考えると本当にいつもことあることにキスしている気がする

起きてすぐ、出かける前、帰ってきてから、寝る前に

 

……本当にことあることにキスしていた

まるで新婚夫婦のようだな、と思い少し恥ずかしくなった

 

「……とにかく治るまでキスは禁止だ」

 

「分かりました……仕方ないですね」

 

そうしてセリカは1週間の禁欲生活?に挑むことになってしまったのだった

 

そしてその1週間なのだが、セリカは意外にも変に雪那に手を出したりなどしないで過ごした

 

セリカはこういう所はしっかりしていて、1度ダメと言われれば本当に手を出してこないのだ

 

しかしその態度に、雪那は何故か寂しさを感じていたのだった

 

 

 

―――そして1週間後

 

 

 

「治りました?雪那」

 

「うむ、医者が言うにはもう完治したそうだ」

 

雪那が医者から帰ってきて、まっさきにセリカはそれを聞いてきた

 

まぁ1週間我慢していたのだから当然か……という雪那の考えだったが

 

「それは良かったです」

 

と、労いの言葉をかけられただけで何も無かった

 

何も無かったのである

 

1週間も禁欲していたセリカが何もしてこなかったのである

 

そんな馬鹿な……と思うかもしれないが本当に何もしてこなかった

何もしてこなかったのである

 

そんなこんなで夕食も食べ、風呂にも入り、あとは寝るだけとなったが……

 

セリカは一切手を出してこなかった

 

「じゃあ、おやすみなさい雪那」

 

「あぁ、おやすみ」

 

結局今日は何もしてこなかったな……と、少し淋しさを感じていたら

 

「と、思いました?」

 

突然セリカが覆いかぶさってきた

 

「1週間おあずけされて寂しかったのは雪那もでしょう?」

 

図星だった

 

いつもしているスキンシップが無くなるということはそれはとても寂しいことなのだ

そういうことをこの1週間で思い知ったのは他でも無い雪那の方だったのだ

 

そしてセリカはそれを分かっていたのだ

その上であえて焦らしていたのだ

 

恋の駆け引きではセリカの方が何枚も上だったということだった

 

「……お前には敵わないよ」

 

「押した引いたは恋の楽しみですから」

 

ふふふ、と嬉しそうに笑うセリカ

その顔はこの1週間の鬱憤が溜まりに溜まっている、という顔もしていた

 

恐らく自分はこの1週間の鬱憤をぶつけられてしまうのだろう、文字通り

 

そう考えた雪那は

 

「なら私は……」

 

先にセリカの唇に唇を重ね、先手を取ることにした

End

 


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