君とボクと   作:律@ひきにーと

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【 一緒にいたいだけですよ、他に理由がありますか 】

「さて、今日の予定は……3件ですね」

 

手帳を見ながら車を運転するセリカ

正直危ないから前を見ろと思う

それを言っても無駄なのだろうけど、と雪那は思った

 

「今日は力仕事が多いんだったか?」

 

雪那がそう聞くとセリカは前を見たまま答える

 

「そうですねー 引越しの手伝いが1件、家の片付けが1件、後子供の出迎えが1件」

 

「なら分担した方がいいんじゃないか?お前、力仕事は苦手だろうに」

 

と、雪那が言うとセリカは軽く頬を膨らませた

 

「イジワルですね、雪那」

 

「何がだ」

 

セリカはハンドルを切りながら目線だけを雪那に向けて言う

 

「出来る限り一緒にいたいんですよ」

 

「苦手な仕事をしてでもか?」

 

「そこはほら、愛の力でなんとか」

 

「ぬかせ」

 

そうこうしている内に目的地の家が見えてくる

小さな一軒家だ これならあまり荷物も無いかもしれない

 

「まぁいい 頼りにしてるぞ、所長」

 

「その呼び方はやめてくださいってば……」

 

そう言い合いながら2人は車を降りた

 

 

 

数時間後……

 

 

「いやー大変でしたねぇ……」

 

「あぁ、思ったよりも物があったな……」

 

物があまり無いだろうという期待は大きく裏切られたのだった

予想よりも遥かに多い物の山に2人は辟易したのだった

 

「あそこまで物溜め込んで暮らすなんて僕には無理ですねぇ……」

 

「お前は無駄を省くものな」

 

「そうですねぇ 無駄はあるより無い方が理想的です」

 

セリカはそういうタイプだった

無駄を許せないというワケではないがなるべくなら無駄がない方がいいという考えだった

 

それは時間においても同じであって

 

「さて、そろそろ二件目ですよ」

 

「ふむ……疲れたなら車の中で休んでいてもいいぞセリカ」

 

「冗談 流石にそれは悪すぎますよ雪那」

 

嫌が応にも付いていく、という顔をセリカはしていた

雪那は仕方ないな……とセリカの同行を認めたのだった

 

 

 

時刻は変わり、夕刻

 

 

「あー……今日も1日よく働きましたね……」

 

「全くだ」

 

あの後2人は家の片付け、子供の迎えという依頼を片付け事務所に帰ってきていた

 

今日の仕事は終わり、後は家に帰るだけと言ったところだった

 

「雪那」

 

セリカが窓に鍵をかけながら言う

 

「なんだ」

 

「昼間の話、覚えてます?」

 

「昼間の話?」

 

するとセリカはもう!と少しむくれ顔でこちらを向く

 

「一緒にいたいって話ですよ」

 

「あぁ、それか」

 

雪那はなんだそれかとなんともないような顔で言う

 

「一緒にいたいならいればいい それを選んだのはお前だ なら私は文句は言わないさ それに……」

 

「それに?」

 

セリカが聞き返すと雪那はふっと笑い

 

「私だって、同じことを思うのさ」

 

と、優しく言った

 

「今の台詞録音するんでもう1度どうぞ」

 

「お断りだ」

 

今日も1日お疲れ様でした

 

End


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