君とボクと   作:律@ひきにーと

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【 今なら素直に好きといえる 】

雪那は悩んでいた

素直に好意を言えない自分の性格を

 

いつもいつも恥ずかしくて強い言葉で誤魔化してしまう

そんな自分こそ恥ずべきことだと思った

 

セリカはいつも素直だ

好きなことには好きと言い嫌いなことは嫌いとはっきり言う

 

自分に素直な生き方をするセリカがいつも羨ましく思えた

自分もそんな生き方をしてみたいものだと

 

とりあえず考えを変えるためにとりあえず今日から少しだけ素直になってみようかと考えた

 

なので

 

「好きだ、セリカ」

 

正面から言ってみた

 

「はい、僕も好きですよ雪那」

 

と、あっさり返されて終わり

 

正直、ガクっときてしまった

 

せっかく正面から好きだと言ったのにさっぱり伝わってない気がした

どういう時にいえば伝わるのだろう

 

いろいろ悩んで悩んで悩んで

いつもの時に伝えても伝わらないと考えたのだが

 

「(じゃあいつ言えば伝わるんだ……?)」

 

と、逆に考え込む結果になってしまった

 

なんでこんなことで悩まなきゃならないんだ……と頭を抱えたりした

 

普段からセリカはどんな時に好きと言ってくるだろうか

ちょっと思い出してみた

 

 

朝食の後、二人で身支度を整えている時

不意に背後から、ぎゅっと抱きしめられた

耳元に、吐息が、当たる

 

「好きですよ、雪那」

 

「分かってるから離せ」

 

 

 

お昼時、コーヒーを飲みながらくつろいでいる時

こちらの目をまっすぐ見つめながらセリカが言う

 

「好きですよー雪那」

 

「知ってる」

 

 

 

夜、『事』の最中に

「愛してますよ、雪那」

 

 

 

……思い出すだけで顔が火を吹きそうだ

と、雪那は顔を抑える

 

とりあえず分かったのは雪那は雪那、セリカの真似をしてもなんにもならないということだ

 

なら自分はどうすればいいのか、そう考えて考え抜いた末の答えが……

 

 

「あのー……雪那?」

 

雪那は今ベッドの上でセリカに覆いかぶさっている

悩んだ末に出した答えはボディーランゲージという単純な答えだった

雪那らしいといえば雪那らしいのだが

 

「セリカ……」

 

「はい、なんです?」

 

「私は、お前を……」

 

そう言いかけたところで、雪那の唇にセリカの指が重なる

 

「言わなくても伝わってますよ、ちゃんと」

 

「いや、それでもだな……ちゃんと言わないと」

 

伝わらないこともある……と言いかけたところで

 

「言わないからこそ、伝わることもありますから……ちゃんと貴女の気持ち、受け取ってるつもりですよ?」

 

と、優しげに微笑むセリカに雪那は何も言えなくなってしまう

 

いつもいつもこういう時の駆け引きはセリカの方が上なのだ

 

「お前はいつもずるい……」

 

「はい、ボクはずるいんです……だから」

 

グイッと雪那の服の襟をつかんでこちらに引き寄せるとその耳元で

 

「無論この先も、期待してますから」

 

と、悪戯っぽく笑う

その声にやはり勝てないと確信する雪那なのだった

 

End


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