君とボクと   作:律@ひきにーと

20 / 33
【キスのために言葉を捨てて、(キスあり) 】

キス、きす、Kiss

唇と何かを触れ合わせること、接吻、口づけ、言い方は様々

 

そして、キスの仕方も様々

唇と唇、手の甲、指先、頬、額、人には言えないあんなところまで

 

とにかく人はキスをする

理由は様々、親愛だったり愛情だったり

 

でも自分からすることは少なくて、相手からすれば愛情が偏っているのではないかと疑いたくなるようなそんな比率

 

雪那はそれに悩んでいた

 

自分から進んでキスすればいい、それだけの話なのにそれが出来ない

 

理由はわかっている

単に恥ずかしいのだ

まるで生娘かと思われるかもしれないが子供の頃から剣一筋に生きてきた雪那に恋愛は難しすぎるのだ

 

しかし、それでもセリカのことを好きだという気持ちは誰にも負けない自信はあった

自信だけは、だが

 

後はそれを行動に移すだけなのだが、それがなかなか上手くいかない

 

自分からキスしよう、とすると何故かタイミングを外してしまうのだ

いつも大体間が悪くて、そのタイミングを逃してしまう

 

こんなままではいつになったら自分から自然にキスできるのか……

そんなことを悶々と考えているうちに今日の仕事が終わったことに気がつくのだった

 

 

「あぁ、おかえりなさい雪那」

 

「ただいま」

 

事務所に帰ると、セリカがコーヒーを淹れて待っていてくれた

いつも雪那が帰ってくるタイミングでコーヒーが淹れられているのだが、これはどうやってタイミングを図っているのだろうかと不思議でならない

 

セリカに問いただしてみると

 

「秘密ですよ」

 

と、はぐらかされてしまう

とにかく不思議なものである

 

ソファーにどっしりと腰掛け、淹れてもらったコーヒーを口にする

雪那の好みで少しぬるめ、砂糖は普通より多めだ

 

外の寒さに心から冷えた体にコーヒーのぬくもりが暖めてくれる

砂糖の甘さも疲れた体には嬉しかった

 

「今日も力仕事、お疲れ様でした」

 

「なに、この程度大したことじゃない」

 

「力の無い僕が行っても足手纏いになりますからねぇ」

 

つかつかと歩いてきて、雪那の隣に腰掛けるセリカ

そのまま雪那の顔を覗き込んで

 

「本当に、感謝してますよ雪那」

 

と、微笑んだ

 

その優しげな顔を見て、あぁ愛しいな、と思った雪那は

 

何も言わずにその唇に自身を重ねた

 

1、2、3

 

十数秒経ってからだろうか、特に示し合わせたわけでもなくお互いに体を離す

 

「……ちょっとびっくり」

 

「何がだ」

 

セリカは唇を抑え、とても嬉しそうに笑い

 

「貴女からキスしてくれるだなんて」

 

雪那はその顔を見ただけで自分のしたことの恥ずかしさを再実感したのか顔を赤らめた

 

「私だって、たまには、だな」

 

「たまには、なんです?」

 

「……えぇい、言わせるな!!」

 

そう言うと雪那はもう1度セリカに口づけて、すぐに身を離し

 

「これでわかるだろう、言わなくても」

 

「えー……わからないですねぇ」

 

ニヤニヤと笑うセリカ

からかわれている、と思った雪那はとりあえずそのニヤケ面を軽くつねるのだった

 

End


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。