君とボクと   作:律@ひきにーと

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【飽きたので口直しを】

「ふぅ……コーヒー煎れてきますね」

 

今日は日曜日

休みの日に2人で思い思いの時間を過ごしている時に唐突にセリカが立ち上がる

 

セリカは部屋だとかなりの確率でコーヒーを飲んでいることが多い

大抵の場合はマグカップにコーヒーが入っている

 

特に悩み事や考え事をする時にコーヒーを飲んでいると捗るらしいが……

 

今回もそんな感じなのだろうか、と思い問いかけると

 

「いや、単に飲みたくなっただけですよ?」

 

と、軽い答えが返ってきた

いつものことか、と流そうと思ったがここで引き下がるとセリカは大体の場合自分だけで抱え込むことが多いと雪那は知っている

 

なのでもう少し踏み込んでみる

何か考え事でも?と

 

するとセリカはばつが悪そうに前髪を弄りながら

 

「あー……バレちゃいましたか」

 

とため息交じりに答えた

 

「お前がずっとコーヒーを飲んでるのはいつものことだが、今日は少し数が多い気がするからな」

 

「よく見てますねぇ……愛が深い」

 

いつもの調子で茶化してくるセリカに雪那はすぱっと本体にはいろうとする

 

「ぬかせ……で、なんで悩んでる」

 

「いやー……あんまり大したことではないんですけど」

 

大したことない、というわりには少し深刻そうな顔をしているような気がした

 

「言ってみろ 何か力になれるかもしれん」

 

「いいんですか?」

 

「私とお前だ 今更だろう」

 

雪那がそう言うとセリカの顔がぱっと目に見えて明るくなった

 

わかりやすいヤツ……とは思っただけで口には出さず雪那は要件を聞く

 

「問題はですね……コーヒーなんですよ」

 

「は?」

 

「だから、コーヒーなんです」

 

なんだ拍子抜けだ……と言うとセリカは少しむっとした顔をした

 

「ボクにとってはモチベーション維持する為に大事なものなんですよ?」

 

それは先程述べたとおりである

セリカにとってコーヒーとは潤滑油のようなものでなくてはならないものである

 

「あー……それはすまなかった それで、なんでコーヒーで悩んでいるんだ?」

 

「それはですね……」

 

セリカはコーヒーの豆の入った袋を持って

 

「飽きました」

 

とだけ言った

 

「は?」

 

と雪那が呆けると

 

「飽きたんですよ、味に」

 

と、続けるセリカ

 

「豆を変えればいいんじゃないか?」

 

「そう言いますけどほとんどの豆は試しちゃったんで……」

 

そうだった

セリカのコーヒーにかける情熱はかなりのもので毎週日曜には珈琲店に行って1週間分の豆を買ってきて自分で挽いて粉を作ってコーヒーを飲んでいる

 

しかも毎回違う豆を買ってくるのだがそんなペースで買っていれば店の豆を網羅するのも時間の問題

となれば味に飽きるのも当然なのではないだろうか

 

しかしもう新しい豆は無いわけだし新しい味は期待出来ない

となるとどうすれば……と、セリカが悩んでいるところに雪那は思いついたことがあった

 

「あー……ブレンド?というやつをやってみたらどうだ」

 

「ブレンドですか……確かにやったことはありませんね」

 

コーヒー趣味も突き詰めるとそこに行き着くらしい

セリカもそこまで行く時期が来たという事ではないだろうか

 

「確かに自家製ブレンドはやったことありませんね……名案です雪那」

 

「それは良かった」

 

その言葉を聞いたセリカは早速……とコーヒー豆を探して気が付く

 

「あー……雪那、出かけませんか」

 

「混ぜる豆が無いのだろう」

 

「おっしゃる通りで……」

 

仕方ないな、と雪那が言いながら立ち上がるとすみません、と謝るセリカ

 

「何、たまにはお前の趣味にも付き合ってやりたくはある」

 

「愛を感じますよその台詞、惚れ直しちゃいそうです」

 

雪那はふっと笑うとセリカの頭をぽんぽんっと叩き

 

「お前は一生のうちに何度惚れ直すつもりだ」

 

と笑った

 

セリカはそんな雪那の横顔に軽くキスをし

 

「さぁ?でもきっと数え切れないくらいですよ」

 

と、応えた

 

End


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