君とボクと   作:律@ひきにーと

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あけましておめでとうございます
今年もセリ雪の二人をよろしくお願いします


【 責任取ってしあわせにする 】

【 責任取ってしあわせにする 】

正月元旦

今日ばかりは仕事もお休み

依頼も来ない

 

そんな日に唐突に

 

《ピンポーン》

 

来客の様子

 

セリカははいはいといつもの調子でドアホンのモニターに向かう

そしてそこに映し出されたのは

 

「はぁい♪元気してるぅ?」

 

「お、お、おおおお祖母様!?」

 

そう

紛れもないセリカの祖母、水無月聖その人であった

 

「あら、お祖母様だなんて。ちゃんと私のことは聖さんとお呼びなさいな」

 

「いえ、その……聖さんは何の御用で来られたのですか?」

 

「可愛い孫の顔を見るついでに新年の挨拶をとね」

 

 

 

……………………

 

 

 

とりあえず聖に家に上がってもらい、お茶などの準備をするセリカ

 

その間、雪那が聖に応対することになった

 

『十二皇家の姫』『不死の魔女』『千年姫』等と様々な異名がつくこの女性、見た目こそ完全に10代後半の少女のそれであるが実年齢はゆうに1000歳を超えると言われている

 

一体どんな魔法や薬でも使えばそうなるのか、それについてはいつも「秘密よ」とはぐらかされてしまう

 

雪那の家、如月家は水無月家に代々仕える家として存在していた

それ故に聖の話はよく聞き及んでいた

 

それに1度セリカと共に水無月本家に戻った時に会っているのだが、いまだに彼女が本当に1000年も生きているのか?と疑問に思うことがある

 

そういう人物は大抵浮世離れしているものだが聖はそんなことは全くなく、至って普通の人間のようである

俗世に疎いわけでもないし、一体この女性のどこに1000年もの時が詰まっているのだろう、と疑問に思う時がある

 

逆にそれが彼女の底知れなさを思い知らせてくることにもなるのだが……

 

「雪那ちゃんも久しぶりねぇ、本家に来て以来だから三年ぶりくらいかしら?」

 

「えぇ、ご無沙汰しておりました聖様……」

 

「そんなに堅っ苦しくしなくていいのよ、さんでいいわ、聖さんって」

 

「はい、聖さん……」

 

恐ろしさがある

えも言えぬ恐ろしさが

 

言葉一つ一つ吐き出すにも気を使う

この人の機嫌を損なえばどうなるか……考えたくも無い

それ故に慎重に言葉選びをする

 

「セリカとの仲はどう?上手くやってる?」

 

「えぇ、よくしてもらっています」

 

「よくしてもらってる、じゃダメよぉ お互いに良くしなきゃ」

 

言葉一つ一つが本当に重い

ストレスで胃が痛い

会話とはこんなにも息苦しいものだったか

 

雪那がそんなことを思っていた時に、セリカがコーヒーを持ってきた

 

「聖さん、コーヒーしかないのですけど宜しいですか?」

 

「コーヒーは好きよ、いつもお茶しか飲ませてもらえないから」

 

と、セリカからカップを受け取り軽く1口

うん、苦いわね、と率直な感想を言いカップを置く

 

「貴女達、幸せにやってる?」

 

唐突な質問にセリカも雪那も固まってしまう

少し拍を置いて、セリカが聞き返す

 

「幸せに、とは?」

 

「あれだけ啖呵を切って飛んでったんですもの、祖母としては孫の幸せが気になるのよ」

 

そう言って、楽しそうに笑う聖

 

「そうですね……とても幸せです、昔よりずっと」

 

「雪那ちゃんは?」

 

と、話を振られ雪那は少し動揺するがそれを顔に出さないようにして

 

「私も幸せです、昔より」

 

と、聖はふふふ、と笑い雪那の前へ歩み寄る

雪那は反射的に半歩後ずさりしてしまう

 

聖は雪那の前に立つと、人差し指を雪那の額にこつん、と付け

 

「責任持って幸せにしてあげなさい」

 

と、笑顔で言った

 

 

 

……………………

 

 

 

その後聖は適当にセリカたちと談笑した後に帰っていった

 

雪那はソファーに突っ伏していた

あんなに疲れるとは思わなかった

 

物怖じせずに話せるセリカの根性が羨ましく思えた

 

一方セリカはというと、聖の持ってきたおみやげのおせち料理(非常に高そうな五弾重ねのお重にびっしりと入っていた)をどうするか悩んでいた

 

雪那はその姿を見て、なんだかさっきまで色々と戸惑っていた自分が馬鹿らしくなってきた

 

なので雪那は

 

「聖理香」

 

「はい……はい?」

 

大切な時にだけ呼ぶ大切な名前で

 

「責任持ってお前を幸せにしてやるからな、聖理香」

 

と、宣言するのだった

 

End


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