君とボクと   作:律@ひきにーと

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【 君も僕も相思病 】

「恋って病みたいなものだと思いませんか」

 

「急にどうした」

 

夕食を食べ終えて風呂にも入り終わり寝る前に二人一緒にベッドでゆっくりとしていたところ、唐突に語り出したセリカに雪那は問いかけを返す

 

「だってそうじゃありませんか?」

 

「例えば?」

 

そうですねーとセリカは少し悩んだ後に

 

「例えば相手のことを思うと胸が締め付けられる思いになるとか、ご飯が喉を通らなくなるとか、ずっと相手のことばかり考えてしまうとか」

 

「まぁ典型的な例だな」

 

それとそれと、とセリカは付けさもその人中心に考えてしまって何をするにも手につかないとか」

 

とまくし立てる

 

雪那はそこまで聞いてセリカが何を言いたいのか分からなかった

というより何を目的としてそんなことを言ったのか

 

「だからですね、年中雪那に恋してるボクは病気なんじゃないかと」

 

と、おどけて言うセリカ

 

「言ってろ」

 

というのは雪那の言葉 そっけない態度である

 

「恋の病ってなかなか治らないと聞きますよ」

 

「相手と結ばれれば治るんじゃないのか?」

 

恋と言うのは相手と結ばれるまでが恋であって、結ばれてしまえば愛になる……という少しロマンチックな論法だが雪那はそれが正しいのでは?とセリカに問う

 

対してセリカは

 

「いいえ、逆に結ばれた方が悪化しますね」

 

と、断言する

 

「何故だ」

 

「だって今まで1人で想像してたことが現実になっちゃうんですよ?」

 

と、言い

それに続けて

 

「きっと更に病は進行してしまいます 末期になりますよ」

 

と笑って見せた

 

「末期、とはどういう感じだ?」

 

雪那は少し面白くなってきた、と話に乗ってくる

 

「もうその人の事しか考えられなくなりますしその人無しじゃ生きていけなくなります こうなったらもう病から逃れる術はありませんよ」

 

ふふふ、とイタズラっぽく笑うセリカ

雪那はそれを見てふっ、と笑うと

 

「なら私も病気か」

 

と、言う

 

「雪那もですか?ボクと同じく?」

 

セリカが顔をのぞき込むと雪那はその澄んだ緋の瞳を覗き返し

 

「全く同じ病気にかかっているよ」

 

と優しげな笑顔をセリカに向けた

 

セリカはその向けられた笑顔に屈託の無い笑顔で返す

 

「本当、仲いいですよね、ボク達」

 

「今更だろう」

 

セリカは雪那の腰にそっと手を回し、優しく自分の方へと抱き寄せた

 

「毎晩『仲良し』してますもんね」

 

「それも今更だろう?」

 

と、雪那が言うとセリカはクスクスと笑った

何かおかしいのか、と雪那が問うと

 

「貴女が素直なのが」

 

と、答えた

 

雪那は応えるようにセリカの腰に手を回して

 

「病気同士なんだ、お互いにお互いを治す手伝いをするべきだろう?」

 

と柔らかな笑顔で、セリカの耳元に囁きかける

 

その囁きがくすぐったくて、セリカは少し身をよじる

しかし雪那の腕はセリカを逃がすまいとしっかり捕まえてきた

 

「普段からそうやって素直ならボクも苦労しませんがね」

 

「いつかお前が私を猫と称しただろう 気分屋だとな」

 

そう言えばそんな事も言ったことがあるかもしれない

かなり前にだが

 

雪那は続けて

 

「猫を可愛がるなら機嫌がいい時にしろ」

 

と言った

 

セリカははい、と言うと、部屋の電気を落としたのだった

 

End


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