君とボクと   作:律@ひきにーと

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【 誘っているように見えたので、つい。 】

ある日の休日の昼下がり

セリカと雪那はリビングでまったりとした時間を過ごしていた

 

今週はちょっと大目に依頼が入って少しドタバタとした1週間だった

正に西に東にといった具合

 

なので今日はどこにも出かけずに部屋でお互いゆっくりしようと決めたのだ

 

セリカと雪那はソファーに座り、お互いに思い思いの時間を共に過ごしていた

 

雪那は溜まっていた週刊誌の読破(雪那はゴシップ紙を週に四冊は読む)

 

セリカはその隣で買ったものの見ていなかった映画のDVDを観ていた

 

それでもお互いにぴったりとくっついたまま離れないのは、もうお互いの距離感がこの距離で固定されてるからだろうか

 

何をするにも一緒

一緒に寝て、一緒に起きて、一緒に食事をし、一緒に働き、一緒に帰り、一緒に風呂に入り、一緒にまた眠る

 

この距離感に疑問を感じたこともないし不満を抱いたこともお互いになかった

むしろお互いにこの距離感がとても安心する、と思っていた

 

自分の愛しい人が側にいるだけでも満たされる心はあるのだ

 

こうしてお互いに別々の時間を過ごしながらも同じ時間を共有することに幸せを感じていたのだった

 

とりあえずDVDを1つ見終えて、セリカは一度休憩するか……と思いプレイヤーの電源をオフにしようとすると雪那が声をかけてきた

 

「ん……観るのをやめるのか」

 

「まるまる1本観ちゃいましたからねぇ 流石にちょっと休憩しようかと」

 

「そうか……先が気になったんだがな」

 

意外な反応だった

どうやら雪那は雑誌を読みながらDVDを観ていたようだ

 

観ていたDVDはいわゆる昼ドラというやつで、内容は30代のOLが20代の若い男と職場を通じて恋に落ちていく……というありきたりなものだった 再放送ものでもある

セリカはこういう話は好きというよりはいつも昼時に惰性で見ていて今回は仕事で観れなくて抜けた話があったのでレンタルしてきたDVDで補完している感じだった

 

まぁ雪那が先を気にするということはそれなりに惹かれる内容があったということなのだろう

セリカとしては共有の話題が生まれたことが嬉しくなった

 

「以外ですね、雪那がこういうのに興味示すの 普段は時代劇とかしか観ませんのに」

 

「横でずっと流れていれば気にもなるさ ……で、続きは観るのか?観ないのか?」

 

そこでちょっと問題が起こる

確かセリカの記憶が正しければこの後の話には一部に一度観たものが混じっていてそのシーンは確か……

 

「ベッドシーンあるんですけど、いいですか?」

 

「……構わんよ」

 

そう、昼ドラにありがちなベッドシーン回が混ざっていたのである

セリカとしては飛ばす気だったのだが、気が変わった

 

どうせならベッドシーンを見て恥ずかしがる雪那が見たい!!!!

というよこしまな思いが胸を支配していた

 

鉄は熱いうちに打てとはよくいったもので、セリカは雪那の気が変わらない内に……と、休憩はなしに続けてみることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題のシーンに差し掛かった

やはり昼ドラらしいきらびやかな演出と生々しい音楽とともにベッドシーンが演じられる

 

それを観ていた雪那が、ふとちらっとこちらを見てきていたのをセリカは見逃さなかった

 

すかさずセリカは言う

 

「雪那」

 

「なんだ」

 

「したくなっちゃいました?」

 

確信を突くセリカの言葉に雪那は顔を真っ赤にしながら否定する

 

「真っ昼間だぞ!そんなわけないだろう!」

 

「えー でも雪那の視線から『羨ましいなー私もセリカとしたいなー』って無言の要求を感じましたよ」

 

「感じるな!無視しろ!というか察しろ!口に出すな!」

 

「そうやって恥ずかしがるのが見たかったのがありますし♪」

 

ぐぬぬ……と恥ずかしがる雪那にセリカはそっと近づいて耳元で囁く

 

「あのドラマより激しいのと優しいのどちらがお好みですか?」

 

その問いかけに雪那は答えなかった

答えの代わりに、セリカの首にゆっくりとその手を回す

 

「お誘いと見て、いいですよね?」

 

セリカの言葉に雪那は答えない

ただ視線は合わせないように顔を背けている

 

セリカは続ける言葉と共に雪那を自分の方に向けさせる

 

「ちゃんとボクを見て、雪那」

 

雪那は答えない

 

「硬い口を割らせるのは得意ですよ?」

 

その言葉と共に、2つの紅が重なった

 

End

 


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