君とボクと   作:律@ひきにーと

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【 左手はあいてますから、飽きるまで繋いであげますよ。ま、離すつもりないですけど。飽きさせませんし? 】

「とりあえず今日の夕飯の食材はこれで全部ですね」

 

「あぁ」

 

今日は二人で仕事帰りにスーパーへ買い物に来ていた

 

いつもなら食料はまとめて買ってしまう派の二人なのだが、今日は朝冷蔵庫にたまたま何も無いことに気がついたのでこうして買い足しに来た次第だった

 

「今日は雪那の当番でしたよね 何作るんですか?」

 

「最近冷えてきたからな 今日は湯豆腐だ」

 

「湯豆腐ですかー なかなかいいですね」

 

等と今夜の夕食に関しての雑談をしながらレジへと歩みを進める2人

その足取りは軽い

 

今日は緩やかな日だった

仕事も無く依頼人も来なかったのでただ事務所に居ただけで一日が終わっていた

 

たまにはこんな日もいいだろう、とセリカは思っていた

す流石にこのまま依頼が来ないということはありえないだろうが万一の時は貯金を切り崩せばいいし……という考えだ

 

実際セリカの口座には使う予定のない預金が唸るほど入っていた

それもこれも「大変だろうから」と、毎月毎月丁寧に仕送りをしてくれるお祖母様のおかげなのだがセリカはあまりそれに甘えるのは良くないと考えていた

 

なので、極力そのお金には手をつけないできたのだ

意地というのも若干あったりもするが

 

仮にも『家』を出た身としてはそれに甘えるのはあまり良くないのではないか、という考えと

お祖母様の言った「好きに生きて好きに生きなさい その為の手伝いはしてあげる 今までの償いとしてね」

という言葉が頭を巡っていたのだ

 

まぁ、考えすぎてもしょうがない

その時になってから判断すればいいのだ

それに悩むのは自分らしくない、とセリカは考えるのをやめた

 

そしてレジに着く

今日は空いているのかすんなりレジを通ることが出来た

いつも通りレジのおばさんに茶化されながら軽く談笑して二人は店を出た

 

夜になればもうすっかり冬の気候である

身の芯からせり上がってくる寒さと肌を刺すような空気が体にしみる

 

スーパーからマンションまではそう遠くはないので二人はゆっくりと歩いて帰る

 

その時なんとなく、雪那の右手が空いていることが気になったセリカは

 

「お手、空いてますよ」

 

と、ナチュラルな流れで手を握った

自然すぎて雪那がしばらく繋がれたことに気づかなかったくらい

 

「随分あっさりと繋いでくるな」

 

「あ、お嫌でしたか?」

 

いや、と雪那は言うと

 

「気恥ずかしさで手が出せなくてな」

 

と、ふふっと笑った

 

「言ってくれればいつでも繋ぎますのに」

 

「お前みたいに何でも素直に言える性格じゃないんだ」

 

「知ってます だからボクがこうして気持ちを汲み取ってあげないと」

 

と、セリカは言うと少し手に力を込めてぎゅっと握った

 

「飽きるまで繋いでましょう 飽きさせるつもりは毛頭ありませんが」

 

「お前といて飽きることなどあるものか」

 

と、二人で夜道を歩いていくのだった

 

End

 

 


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