時間は3時
おやつ時、お茶の時間、一息入れる時間など言い方は様々
そんなこんなでセリカと雪那も一旦休憩してお茶でも入れようかとしていた
「そう言えば今日はこれがあったな」
そう言って雪那が冷蔵庫から出してきたのは小さな包装に一つ入っていて、そのビニール袋の包装にこう書いてあった
『生クリームたっぷり、生クリームきなこわらび餅』！！
名前を見てわかるだろう 俗に言うコンビニスイーツというものだ
最近の雪那はコンビニスイーツの和菓子にお熱だったりする
新商品が毎月何か出るので楽しいのだそうな
それでも和菓子が出るのは珍しいので今回は喜び勇んでこれを買ってきた次第であった
ただ一つ問題が
「……雪那、洋菓子系嫌いですよね？生クリームはいいんですか？」
「ま、まぁ和菓子に合わせた甘さになってるかもしれないしな」
あはは、と笑ってごまかす雪那
そうなのだ
雪那は洋菓子が苦手なのだ
本人曰く「甘さに品がなく雑味が多い」とのことらしいのだがセリカには全く理解出来なかった
まぁ、腹に入れば同じ
和菓子がメインなら味覚の多少の食い違いは気にしないのだろう
というわけで雪那好みの玉露の緑茶を入れていざ実食……となったがここで問題が
クリームが、こぼれるのである
一口で食べるには少々大きいので二口ほどに分けて食べるのだがその際にクリームが手にこぼれる
生クリームたっぷり！！と銘を打っているのには間違いはないようで二人そろって初っ端から盛大にクリームをこぼしてしまったのだ
とりあえずセリカは何か拭くものを、と流し台に布巾を取りに行った
そこで残された雪那は思った
このクリーム意外と悪くない
わらび餅の涼しさと合うように少し甘みを抑えて作られたきめの細かいこの生クリームは単体で食べてもきっと美味しいのだろう
和菓子屋と違って手作りではないにしろ、それなりに作る人の手間がかかっているものだろう
それがこのまま食べられずに拭き取られてしまうのにはあまりに勿体ないと
そんな考えが頭の中をぐるぐると巡る
そこで雪那が至った発想は
「……何やってるんです」
「あ……いや、これは、だな」
セリカが流しから戻った時目に映ったのは自身の手をさも美味そうに舐めている雪那の姿だった
どうやら勿体ないと思ったらしくそのまま手を舐めてクリームを舐めとっていた様子である
その様子は子供のようでもあり、雪那の細く白い指先が白いクリームで彩られて、それを舐めとる赤い舌がなんとも淫靡に見え、セリカは正直ムラっときた
「意外と子供っぽいところありますよね、雪那って」
「うるさい……あーもう、拭くからそれをよこせ」
そう言った雪那の指に少しクリームが残っているのを目ざとく発見したセリカ
「―――勿体ない」
「は……？っておい！」
流れるような至って自然な動作で雪那の指を咥えるセリカ
そのまま指にわずかに残っていたクリームを舐めとる
しかし、それだけでは足りずに指に舌を這わせる
ゆっくりと、指の関節一つ一つをなぞるように、丹念に舌を這わせていく
咥えて、吸って、舐めて、しゃぶって、じっくりと雪那の指を味わう
「ふ……っうぁ」
「ん……ちゅ……はぁ……」
もうクリームはなくなっているのに、僅かに甘さを感じるのはなぜだろうか
女の子は砂糖とかお菓子とかその他素敵なもので出来ている、という話があったような
ならきっと雪那は白無垢の砂糖菓子なのだろう……と考えていたところで無理矢理指を引き抜かれた
「何を……やってる！」
「何って指フェ」
「言わんでいい！！」
顔が真っ赤な雪那と、いたっていつも通りの飄々とした態度のセリカという構図が対照的だ
「だって雪那がクリーム舐めてるところにムラっと来ちゃいまして」
「事務所だぞ！場所を考えろ！」
「事務所じゃなければいいんですか？」
そういうと雪那はうっ、とたじろぎ
「とにかく、場所は弁えろ！」
というとセリカから布巾をひったくり手を拭き始めた
心なしか、セリカが舐めていた部分を重点的に拭いているような
「そういう事されると凹むんですけど……」
「うるさい」
お前の唾液がついてると考えるだけで指が燃えそうだ、というのは雪那は口には出すまいと思ったのだった
End