その夜、ツナは寝れないでいた。アザゼルから禍の団が京都で暗躍しているということを聞かされたからである。もちろん不安なのはツナだけではなく、イッセーたちやシトリー眷属たちも一緒であるが、自分が禍の団に狙われる可能性があるとアザゼルに告げられたツナが一番不安であろう。一応、アザゼルはイッセーたちに『お前らは修学旅行を楽しめ、俺たち大人ができるだけなんとかする』と告げたが、これからどうなるかは皆目見当がつかない。
そしてツナはホテルのベッドに横になりながら愚痴をこぼしまくっていた。
「何で京都まで来てまで禍の団に狙われなくちゃならないんだよ…」
「お前は今までにだって狙われてきただろ、何びびってやがる。」
「それはそうだけどさぁ…」
隣のベッドで寝ていたリボーンが言うとツナは思い出す。まず最初に骸たちに狙われ、その次にボンゴレが誇る暗殺部隊ヴァリアーのボスのXANXAS。未来ではミルフィオーレファミリーのボスの白蘭、そして誤解があったもののシモンファミリーのボスの古里炎真からも狙われた。
「それにマフィアが狙われるなんて日常茶飯事だぞ。特にお前は世界最強のマフィアのボスなんだ、これから狙われるのが当たり前になるんだからな。」
「何でもかんでもマフィアと繋げるなよ!!それに今回はマフィアなんかよりやばい奴らなんだぞ!!」
「やばい奴らつっても相手は俺たちと同じ人間なんだぞ、どおってことはねぇだろ」
「いやいや!!相手はテロリスト!!いくら相手が人間だってやばすぎるって!!あー京都なんか来なきゃ良かった…来なかったら、小猫ちゃんとデートできてたかもしれないのに…」
早くも現実逃避し始めるツナ。だがどう足掻いてもこの世界最凶の家庭教師から絶対にツナは逃れることはできないのは目に見えている。嘆くだけ無駄なのである。そんなツナにリボーンが溜め息をつきながらこう言う。
「いつまでもウダウダ言ってんじゃねぇぞ。相手が人間って言っても、あいつらより恐ろしい人間がいると思ってんのか?」
リボーンの言うあいつらとは勿論、ツナが今までに戦ったマフィア関係者のことである。復讐者に至っては人間ではあるが、見た目は人間と呼んでいいのか怪しいレベルである。
「そう言われば…いないね…なぜだか絶対にそう言いきれる自信があるよ…。」
「だろ?」
リボーンの言葉には納得してしまうツナ。だがツナは思ってしまう。その人間で一番やばい奴は自分の目の前にいたということを。可愛らしい顔をしているが、中身は超ドス黒い家庭教師であり、世界最強の殺し屋でもあるリボーンを。この世界には悪魔が存在するがツナはイッセーたちを本物の悪魔だと思ったことは一度もない。なぜならツナはイッセーたちに出会う前から本物の悪魔に出会っていたのだから。
「(俺から言わせれば大魔王だよ…。)」
最凶の風紀委員や爆弾魔などツナの周りにはマジでやばい奴らがいるが、ツナから見てリボーンは恐怖の象徴でしかないのだ。
「ていうかそういうお前だって、狙われてもおかしくないだろ。」
ここでツナは気づいた。見た目は赤ん坊でもリボーンも人間であり、凄腕の殺し屋であるのでリボーンも禍の団に狙われる可能性があるということに。
「俺がテロリストごときに負けるわけねぇだろ。」
「テロリストごときって…。」
「テロなんてしょうもねぇことをやって時点で3流以下だ。相手が英雄の子孫だがなんだが知らねぇが、俺はそんな格下に負けるほど俺は弱くねぇ。」
「…」
禍の団を3流と言ったリボーンにツナは驚いて言葉も出ない。だがこれは慢心ではない、おそらく本当のことであろう。リボーンは虹の代理戦争で復讐者のボスであり、夜の炎を創りだした歴代最強の虹のバミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインの短距離走瞬間移動を勘だけで避けるという、神業といっても過言ではないことを、当たり前のようにやってのける男である。途中からバミューダがリボーンの裏かき、ダメージを受けたとはいえ、おそらくこんなことができるのは、ほぼいないと言ってもいいだろう。
「まぁともかくテロリストが攻めてこようが、ボンゴレ式修学旅行はこのまま続行だ。明日もあるしもうそろそろ寝…zzz」
リボーンはいつも通り目を開けたままスピーと寝息をたてて眠ってしまう。
「相変わらず寝るの早いなおい!!」
いつものようにつっこむツナ。リボーンのお陰で禍の団に狙われる恐怖や不安はなくなった。だが禍の団よりリボーンが行うボンゴレ式修学旅行のほうが恐ろしく思えてきてしまった。
まだまだ始まったばかりのボンゴレ式修学旅行。次は一体どんな試練が待ち受けているのだろうか。恐怖の修学旅行はまだまだこれからである。