IS 女尊男卑の世界に転生しちゃった俺は兵器開発で逆転を狙いたい   作:砂糖の塊

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お久し振りです。本格的な再開はまだですが生存確認がてら少しだけ更新。お待たせして申し訳ありません。


34話

 

「ほんとびっくりしたよー、急にシャッターががしゃーんっ!って降りてきて、出口も塞がっちゃってー」

 

全く緊張感の伝わってこない話し方で、のほほんさんが観客席の状況を話す。

 

「みんな助かってよかったじゃない。でも結局何があったんだろうね?」

「それを説明するために呼ばれたんでしょうが」

 

いつものほほんさんと一緒にいる2人────相川さんと谷本さんが話すのを聞きながら、俺は教室を見渡した。

 

1組の教室には、一夏を除いた生徒全員が集まっている。観客席のシェルターロックが解除された後、直接教室に向かうよう指示されたからだ。織斑先生は点呼をとるためと言っていたが、今回の未確認機襲撃についての説明がされるとみんな考えているらしい。

襲撃直後にシャッターが閉まり、後はずっと閉じ込められていたのだから、何が起こったか知りたいのは当たり前だろう。

一夏は、帯電を食らったあとすぐに医務室へと運ばれていった。医務室まで付き添った篠ノ之さんとセシリアの話によれば、気絶しているだけで命に別状はないらしい。さすがISの絶対防御。確実に搭乗者の安全を守っている。

 

「せっしーも戦ったんだよね?どんな相手だったのー?」

「えっと……織斑先生のお話を聞いてからの方が良いと思いますわ」

のほほんさんの質問に困ったような笑みを浮かべるセシリア。確かに未確認機の情報は今の所機密とされているから、簡単に言いふらさない方がいい。

 

「それもそうだねー」

 

のほほんさんも納得してくれたようだ。

「……ん?」

 

俺はふと、セシリアの様子が気になった。どことなくよそよそしいと言うか、俺に対して距離をとっている気がする。

 

「どうかしたか?セシリア」

「えっ!?い、いえ何でもありませんわっ!?」

「……ふーん」

およそ何も用がない人が取るものとはかけ離れた反応を見せるセシリア。何か言いたいことがあるに違いない。

「そういえばこんちゃんどこに行ってたのー?観客席に居なかったよね?」

「トイレに行こうとしたら、そのタイミングでシャッターが下りてきてさ。モニタールームで先生と一緒に居させてもらってた」

「そうだったんだ。千冬様に守ってもらえるなんてラッキーだったね」

 

相川さんが心底羨ましそうに俺を見てくる。どうやら彼女も織斑先生信者の1人らしい。

IS元世界王者の名は伊達じゃないということか。

 

「あ、あの……紺野さん?」

「ん?何?」

「少しお時間を頂いても───」

 

 

「みんな席につけ。点呼をとる」

 

セシリアが何か言おうと話し掛けてきたところで、丁度織斑先生と山田先生が教室に入ってきた。

 

ぞろぞろとのほほんさん達が自分の席に戻る。そんな中、セシリアは何か躊躇うように視線を揺らしていたが、やがて席に戻っていった。

 

結局何が言いたかったんだ?

 

 

「さて、今回の未確認機襲撃事件についてだが」

点呼をとり終えた織斑先生がおもむろに口を開く。

 

「詳しいことは未だ調査中だ。諸君には状況が明らかになり次第連絡する。だが、テロの可能性を踏まえてクラス代表戦は中止。それと全員、明日は学園から出ないように」

明日は日曜日。たまの休日を学園の中で過ごすよう言われた生徒の一部から不満の声が上がる。

「無断で外出したものには厳罰を与えるからそのつもりでいるように」

 

そう言い放った織斑先生は、足早に教室から出ていった。もしかしなくても、一夏のことで気が立っているのだろう。

 

「そ、それでは皆さん、今日は解散してください……」

 

織斑先生に代わり、申し訳なさそうな表情を浮かべる山田先生の一言でホームルームはお開きとなった。

 

「山田先生」

 

教室から出ていこうとする山田先生を呼び止めた。

 

「どうしましたか?」

「一夏の具合はどうですか?」

「つい先程、目が覚めたと医務室から連絡があったみたいで……織斑先生が向かって居られると思います」

「そうですか……ありがとうございます」

 

山田先生に頭を下げ、俺は後ろを振り向いた。案の定、そこには『一夏』というフレーズを聞いて山田先生の話に耳を傾けているセシリアと篠ノ之さんの姿があった。

 

「……医務室行くか?」

「もちろんですわ!」

 

力強く頷くセシリア。篠ノ之さんも小さく首を縦に振る。きっと2人ともホームルーム中からずっと一夏の容態だけを気にしていたに違いない。

少しホッとしたような2人の表情がそれを物語っていた。

 

 

***

 

 

「一夏さんっ!大丈夫ですかっ!?」

セシリアが勢いよく開いた医務室の扉の向こうには、ベッドで横になった一夏がいた。

 

「おぉ、みんな来てくれたのか?」

 

身体を起こした一夏が、嬉しそうに笑顔を見せる。動き方からして後遺症らしきものも残っていないらしい。

 

「どこか痛い所はありませんか!?頭がぼうっとしたり、耳が聞こえにくかったりは?」

「だ、大丈夫だから……ちょっと落ち着いてくれ」

「ご、ごめんなさい……」

 

矢継ぎ早に質問するセシリアに一夏が苦笑いを浮かべる。一夏と顔がくっつきそうなほどの距離で話していたセシリアが我に返ったのか、慌てて距離をとった。

「全く……心配させるな、一夏……」

「悪い……でもありがとな箒」

 

 

ぶっきらぼうに言う篠ノ之さんに、一夏は素直に謝った。無愛想な態度とは裏腹に、自分を心配して医務室にまで見舞いに来てくれたことに気づいたようだ。

 

「ふ、ふんっ。私は部活があるから失礼する。治るまではじっとしておくんだな」

「あ、おい……」

 

素直な一夏が予想外だったのか、篠ノ之さんは照れ隠しのように医務室から出ていってしまった。

 

医務室の扉が再び閉まると、一夏は俺の方に視線を移してきた。

「秀人もありがとな」

「いやいや……元気そうで良かったよ。お礼なんていい」

 

俺にも頭を下げてくる一夏に、慌てて両手を振る。

結果的には自分で感電した一夏だが、元をたどれば未確認機をEMPで倒そうとしたのは俺だ。責任の大部分は俺にある。一夏は俺が傷つけたといっても過言ではないのだ。

それなのに、一夏から感謝されるというのは、どうしても俺の良心が許さなかった。

 

「未確認機に不用意に接近するのは危険だとあれほどお話したではないですか!」

「ごめん……でも、俺は近接戦闘しか出来ないから……」

「そういう問題じゃないだろ?織斑先生にも怒られなかったか?」

「あぁ、さっき散々怒られたよ……」

 

俺の質問に一夏は顔を青くしながら頷いた。俺達が来る前によっほどきついお説教を受けたらしい。

 

「織斑先生、お説教の他には何か言ってたか?」

「えっと……なんかアリーナの電気系統のショート? とかであのISが故障したらしくて……ラッキーだったなって」

「へぇ……そうだったのか」

アリーナ設備のショートによる、偶発的な放電現象。それが現時点での学校側の見解らしい。EMPのことが疑われていないか、少し心配だった俺は内心胸を撫で下ろした。

 

まぁ仮に調査が進んでコンデンサが発見されたとしても、非常時の電力供給の為の設備として言い訳できる手はずにはなっている。当面は会場よりも未確認機の方の調査が進められるだろうし、俺自身が疑われることはない……と思う。

 

 

そんな矢先。

 

「あの、一夏さん」

 

突然、セシリアが口を開いた。

 

「ん?どうした?」

「本当に織斑先生は機械のショートだと仰っておられたのですか?」

「あぁ、実際に俺も感電したしな。それがどうかしたのか?」

「いえ……」

 

何か考え込むように顎に手を当てるセシリア。少し嫌な予感がした俺は、平静を装いながら2人に話しかけた。

 

「あれだけ広いアリーナだからな。そりゃ、ショートしたら結構な電気も流れるだろ」

「そうだな。俺も不注意だったよ」

 

一夏が頷く。セシリアはチラリと俺の方に視線をやっただけだ。否定も肯定もせずに何かを考えている。

 

これは……少しまずいかもしれない。

 

 

 

「織斑君、精密検査の用意できたわよ」

そこへ医務室の扉が開き、白衣を着た女の人が入ってきた。どうやらこの女性が医務室の先生らしい。

 

「検査ですか?俺は別に……」

「駄目よ、万が一のことがあっては遅いんだから」

「……はい」

「貴方達、申し訳ないんだけど今日はもう寮に戻ってもらえるかしら?」

 

一夏の説得に成功した医務室の先生が今度は俺達の方を向く。

 

「検査ってそんなにかかるんですか?」

 

げんなりする一夏。IS適性が判明したときの検査を思い出したのだろうか。心底嫌そうな表情を浮かべていた。

 

「夜には終わるわよ。えっと……紺野君だったかしら?織斑君の同室よね?そのつもりしておいてくれる?」

「分かりました。一夏、晩飯の用意はしておいてやるから」

「……あぁ、よろしく」

 

医務室の先生に俺が頷くと、一夏も諦めたのかベッドから立ち上がった。そして先生について医務室から出ていった。

 

 

「さて……俺たちも戻りますか」

 

さっきから何も話さないセシリアに声をかける。今すぐ考えることをやめてほしい。多分、その考えの先に俺が不利になる真実が隠されているから。

 

だが、現実は無情だった。俯いて考え込んでいたセシリアは意を決したように顔を上げて、俺の目を見つめてきた。

 

俺の少しの嘘も見逃さまいとする青い瞳。やがてセシリアは静かに口を開いた。

 

「紺野さん……少しお話があるのですが」

 

 

 

 


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