IS 女尊男卑の世界に転生しちゃった俺は兵器開発で逆転を狙いたい   作:砂糖の塊

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しばらくシャルロットは出てきません。前々話以来モヤモヤしてる方も多いと思いますが、もうしばらくお待ちください。


20話

 

4月に入り、とうとうIS学園に入学する日がやってきた。自室で荷物を纏めていた俺はパソコンの方に目をやった。デスクトップパソコンは流石に重くて持っていけない。というか原作では確か、寮の部屋に1人1台パソコンが置いてあった気がする。

必要なソフトやデータはUSBメモリに移したし、ノートパソコンだけでいいだろう。ネットの海から拾ってきたお宝画像や動画コレクションも既にハードディスクに移した。この俺に抜かりはない。

 

ということでしばらく使わないことになったデスクトップパソコンのケーブルを抜きながら、ふとフランスにいる友人兼契約相手のことを思い出した。

相変わらずフランスのシャルロットからは連絡がない。森本さんをはじめとした情報部の人達に調べてもらっているが、未だ有力な情報は入ってきていない。

確かにシャルロット達の住む場所を決める権利はデュノア社側にある契約だが、だからといってこちらからの接触に干渉する権利まで渡した覚えはない。こっちがIS新興企業だからって舐められてるのか?近々森本さんを通して抗議するつもりだ。

 

というかちゃんと入学してくるんだろうな……?

 

一抹の不安を抱えながら、俺は部屋着代わりのスウェットからIS学園の制服へと着替える。白を基調として赤いラインの入ったジャケット。大きな黒い襟が特徴的である。というか、ちょっとデカすぎるんじゃないか?襟にコウモリ付けてるみたいにならないですかね……。女子の制服は可愛いイメージだったんだけどな……。

一応着替え終わった俺は部屋に置かれた姿見に自分を映してみた。まぁ、母さんのおかげによるイケメン補正によってかっこ悪くはない……よな?

そういえば今のところIS学園の男子制服は俺と織斑一夏の2着分しか作られていない。原作では1着しか作られなかったことを考えると、少し感慨深いような気持ちになる。

 

「秀人ぉ、準備できたか……おぉ、なかなか似合ってるじゃねぇか」

 

背後の襖が突然開いて、父さんが部屋に入ってきた。後ろにはふくれっ面をした母さんも一緒だ。

 

「うん。いつでも出発できる」

「秀人……本当に行っちゃうの?今からでも入寮の話は辞めにして───」

「母さん、もう決めたことだから。また夏休みになったら帰ってくるよ」

「うぅ……絶対だからね?危ないこともしちゃ駄目よ?」

 

結局、俺がIS学園の寮に入ることに母さんは最後まで首を縦に振らなかった。俺のことを心配してくれるのは嬉しいが、IS学園は全寮制の学校だ。入学するには寮に入るしかない。それに、俺ももう15歳、いつまでも家族にべったりというわけにはいかない。

 

「秀人、頑張れよ」

「元気でね、また連絡するから」

「うん……いってきます」

 

 

両親に手を振りながら、俺は荷物とともに車の後部座席へと乗り込む。車はゆっくりと駅に向かって走り出す。小学生の頃から俺を送り迎えしてくれた運転手さんともしばらくはお別れだ。

 

 

駅で運転手さんに別れを告げ、モノレールの発着するホームへと向かう。臨海部から少し離れた人工島の上にあるIS学園にはこのモノレールを使ってしか行くことができない。

それは『IS学園の敷地はどの国の領土にも属さない』という鉄の規則があるからだ。余裕で日本の領海内にはあるんだが、まぁ形式だけでも独立性を保っているということなんだろう。本当に海のど真ん中につくられても不便だろうし。

 

モノレールの中にはIS学園の制服をきた生徒が結構乗っていた。俺と同じように大きなキャリーケースが傍に置いているのが恐らく新入生だろうな。乗り込んだ途端に一斉に俺の方を見てくるのはやめてほしい。確かにIS学園の制服を着た男子なんて目立ってしょうがないだろうけど。前の世界で言うところの女の子が学ランを来て出歩いてるようなものだし。

 

「ね〜、貴方が世界で初めてIS動かせた男の人〜?」

 

周りの視線にそわそわしながら席に座っていると、突然隣から声を掛けられた。

 

声のした方に顔を向けると、もはや萌え袖と呼べないようなぶかぶかの制服で口元を隠し、眠たそうな瞳をした女の子が座っていた。

 

この子、知ってる……。いや、実際には初対面だが、確かに俺は目の前の小動物系の彼女の名前を知っていた。布仏本音さん……通称『のほほんさん』だ。

 

あだ名の通りのほほんとした牧歌的な雰囲気を漂わせながら、彼女は返事をしない俺に首を傾げた。

 

 

「もしかして〜……コスプレ?」

「こ、コスプレちゃうわ!」

 

慌てて否定する。いや、入学生でもないのに、わざわざIS学園の制服を着てIS学園行きのモノレールに乗車するわけないだろ!?

そんな強者が果たして存在するのか?どんな変態だよ……。

 

突然の鋭い突っ込みに目を丸くする布仏さん。

 

「こほん……ごめん、驚かせちゃったね。コスプレじゃなくて俺もれっきとしたIS学園の入学生だよ。ただ、俺は世界初じゃなくて『2人目』だけどね」

「そうなんだ〜、えへへ、びっくりした〜」

 

落ち着いて自己紹介すると、ようやく布仏さんは笑顔を取り戻した。照れたように制服の袖で後頭部をカリカリと掻いている。

 

「私も今年入学だよ〜、布仏本音──のほほんさんって呼んでね〜」

「俺は紺野秀人、よろしくねのほほんさん」

「よろしく〜、おんなじクラスになれるといいね〜」

 

初対面とは思えないほどの距離で話しかけてくるのほほんさん。なんか一緒にいると昼寝がしたくなるような子だ……。

 

「そうだね〜」

 

若干彼女の話し方に毒されながら、俺はのほほんさんと会話を続ける。

 

それにしても……男性操縦者って2人目が見つかったときも大分ニュースになってたような気がするけど……あんまりニュースとか見ないのかな?

 

終点であるIS学園前に到着したモノレールからは、わらわらと乗客が降りていく。

 

「こ、こんちゃ〜ん、待って〜」

 

困ったようなのほほんさんの声に振り返ると、彼女は自分の身体と同じくらいの大きさのカバンを網棚から降ろそうとしているところだった。

むしろどうやって網棚に上げたんだ?という疑問を飲み込みつつ、俺も降ろすのを手伝う。サイズの割に重量はそれほどでも無かった。中身は着替えとかだろうか。

 

「俺が持とうか?」

「えっ!?凄く重いし、わ、悪いよ〜」

「重さはともかく、これ背負うのは中々大変そうだし」

 

ちょっとした登山家みたいになるし。

 

「う〜ん……」

「なら、俺のカバンと交換しようよ」

 

中々引き下がらないのほほんさんに俺は肩に掛けていたショルダーバッグを外し、彼女に差し出す。中にはこれといって重要なものは入っていない。せいぜい寝間着替わりのジャージくらいだ。別に2つ持っても3つ持っても俺的にはさほど問題ないけど、これでのほほんさんの気が楽になるならいいだろう。

 

しばらく自分のカバンと俺のショルダーバッグを交互に見比べていた彼女だったが、ようやく俺のショルダーバッグを受け取ってくれた。そして袖で口元を隠しながら嬉しそうに微笑む。

 

「……あ、ありがとう〜、こんちゃん……」

「どういたしまして……ところで『こんちゃん』って?」

「あ、あだ名だよ〜、紺野くんだからこんちゃん……駄目かな〜?」

「い、いや構わないけど」

「こんちゃんとかんちゃんって似てるね〜、あっかんちゃんって言うのは私の友達のことなんだけど〜」

 

多分、かんちゃんも知ってる。更識簪のことだろう。それにしてもまさか初対面で俺もあだ名を付けられるとは……。のほほんさんのコミュ力の高さに驚きつつ、俺達は改札の方へと向かう。

キャリーケースとのほほんさんのリュックを背負っているからか、さっきより視線が集まっている気がする。まぁ、傍目から見たら夜逃げしてきたみたいに見えるかもな……。

 

 

改札を出ると、列が出来ていた。

 

「……これ、何の列ですか?」

 

近くに立っている係員らしい女性に尋ねる。

 

「ここは荷物検査場です。生徒の皆さんから1度荷物をお預かりして、危険物や怪しい物がないかチェックします」

「へ〜、結構厳しいんだね〜」

「まぁ、色んな人が集まってくる所だからね……」

 

のほほんさんに笑い返しながら、俺は内心震えていた。HDDの中、怪しい物で溢れてるんですけど大丈夫ですかね……それだけで言ったら俺もテロリストみたいなもんなんですけど。

 

「X線検査だけですので。検査の終わった荷物は各自寮のお部屋まで運びますから、名前と生年月日を受付に伝えてください」

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか、係員のお姉さんは説明を追加してくれた。心なしか俺を見る彼女の目が鋭くなっていたのは気のせいに違いない。

 

 

その後、順番を待ち荷物を預けた俺達は手ぶらの状態で、大ホールとやらに向かう。そこで入学式があるらしい。体育館でやらないあたり、流石世界中から来賓が集まってくる天下のIS学園といったところか。

 

「誰か探してるの〜?」

 

誘導に従って新入生席へと歩きながら、きょろきょろと辺りに目をやる俺を、のほほんさんが不思議そうに見てくる。

 

「ちょっとね、友達が1人入学する予定で……」

「へ〜、どんな人なの〜?」

「フランス人で、ブロンドの髪が綺麗な子だよ」

「外国にお友達がいるなんてすごいね〜」

 

のほほんさんのキラキラした目に苦笑いしつつ、俺はその『ブロンドの髪の友達』を探す。勿論、シャルロットのことだ。結局半年ほど前から今日の入学式に至るまで連絡をとることが出来なかった。報告ではデュノアの本社にこもりきりだったらしいが、メールくらいは返してもいいんじゃないかと思う。

 

『それでは、新入生の皆さんは席についてください』

「あっ、そろそろ座った方がいいみたいだよ〜」

「……そうだね」

 

結局、シャルロットの姿は見つけられなかった。まぁこれだけ人が多いし、クラスに行ってから探すか……。

 

入学式自体は割と普通の学校と同じような内容だった。ただ、来賓の挨拶がPTA会長なんかから国連のスタッフに代わり、市長からくるような電報が各国首脳から来ていたくらいだ。

各国のIS学園、引いてはISに寄せる関心の高さが伺える。

 

入学式が終わった俺達はぞろぞろと1年生のフロアへと向かう。思ったより外国人らしい生徒が多くて驚いた。まぁ代表候補生は大国だけから集まってくるわけじゃないし、日本の生徒だけ多いっていうのもパワーバランスが崩れるか。

 

途中、人混みの向こうに織斑一夏を見つけた。知り合いが居なくて不安なのかしきりにキョロキョロと辺りを見回している。後で話しかけに行こう。なにせ、アイツは世界で唯一ISを『ちゃんと』動かせる男だからな。仲良くなれば、紺野重工の実験なんかも引き受けてくれるかもしれない。

 

「あっ、こんちゃんと同じクラスだ〜」

 

教室のドアに設置されたクラス名簿の表示されるディスプレイを見て、のほほんさんが嬉しそうに言う。

 

俺もディスプレイに目をやると、確かに紺野秀人と布仏本音の名前があった。ここは1年1組。ということはシャルロットや織斑一夏とも同じクラスになるはずだ。そう思い、名簿の名前を探す。

 

確かに織斑一夏の名前はあったが、シャルロットの名前がない。他のクラスなのか?原作では1組に途中で転校してくるはずの彼女だが、この世界では普通に入学してくる手はずになっている。それに俺という追加要素もあるし

、もしかしたら違うクラスに編入されているのかもしれない。

 

探しに行くか?

 

「こんちゃん、早く教室入ろ〜」

 

そう思った俺だったが、のほほんさんに手を引かれ1組の教室の扉を潜るのだった。

 


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