大規模侵攻から数日の時が流れた。三門市を謎の侵略者はボーダーと呼ばれる一団による侵攻者の駆逐にされ町に平穏が訪れた。
八幡は大規模侵攻終結間際にボーダーによって救出され奇跡的に命をとりとめ、現在はボーダーのもと保護されている。
あの日から一週間、長い眠いから八幡は漸く覚醒した。
「知らない天井だ」
それが八幡の第一声だった。起き上がろうととするが、全く体に力が入らない。一週間近くもの間ベットの上で眠りについていたから無理もない。体力、筋力も落ち、何より疲労が回復しきれていないのだろう。仕方なく唯一動く首を動かし視界を動かすと、隣のソファには母が腰かけて眠っていた。
「かぁさん」
聞こえるか聞こえないかわからないくらい小さく掠れた声しか出なかったが、どうにかして起きた事を訴えるために八幡は声を振り絞り母を読んだ。
「ん……あら寝てしまってたみたい……はちまん?八幡!!気づいたのね」
「かぁさん…こ……こ…?」
「今は安全な場所で治療を受けてるのよ。それよりあなたが目が覚めて安心したわ。あなた一週間も眠ってたのよ?」
一週間?あれから一週間も経ってたのか。そう思うと何か忘れているような。その時八幡はあの場で起きた事を思い出す。確かいきなり家が崩れて命からがら小町とともに逃げ延びて救助を待っていたんだ。
そしたら瓦礫から見たこともない化け物が現れて……
「あっ……」
「どうしたの八幡?」
「母さん、こっ小町は?親父は!?俺は、いったい」
「八幡?」
「あっ…あぁぁぁ、うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
八幡は思い出してしまった。自分を庇って化け物に腕を食い千切られ血の海に沈んだ父の姿を。
「八幡落ち着いて!!」
母親は急に暴れ出した八幡を必死にベットに押し付ける。無我夢中で叫び苦しむ八幡の力は女性とはいえ大人の人間では太刀打ち出来ずに母親は床に放り出されてしまった。
「くっ…誰か!誰か来てちょうだい!!」
八幡の母は一人では押さえつけられないとわかり誰か大きな声で人を読んだ。すぐさま駆けつけた二名の男性によって八幡は多少強引にベットに押さえつけられたが、それでも八幡は尚暴れてがつけられない。
「仕方ない、迅私が押さえているから彼を殴るなりさせて気絶させてくれ。比企谷さん、よろしいですね?」
「えっえぇお願いするわ」
「悪いな少年」
迅と呼ばれる青年は八幡の鳩尾に拳がめり込む。
「ぐふっ!?」
その衝撃で八幡の意識は刈り取られおとなしくベットに体は吸い込まれる。
「ふぅ…なんとかなったな。すみません、比企谷さん大事な息子さんなのに」
「いえ、今のはしょうがなかったわ。ここには常駐の医師がいないし。素人が安定剤を射つのもかえって危なかったから。ありがとう、忍田さん、迅くん」
「いえいえ、この実力派エリートがお役に立てば幸いです」
「調子に乗るな迅」
迅と呼ばれる青年は得意気な顔をするのを忍田と言う男性が諌める。
「迅くんがいなかったら今ごろ家族は近界民によってもうこの世にいなかったかもしれません。本当にありがとうございました」
八幡の母は感謝の意を込め迅に向かって深く頭を下げる。それを見た迅は慌てて自分もいつも御世話になっているとお辞儀をして礼を返す。
「それに、俺が駆けつけたときにはもうトリオン兵は倒された後でした」
「どういうこと?あのトリオン兵は迅くんが倒したんじゃ」
「いえ、俺ではありません」
「ではいったい誰が?比企谷さんは片腕を失って最早戦える状況ではなかったはずだが」
「どうなの迅くん!!」
「どうなんだ迅!!」
「ふっ二人とも落ち着いて!?えぇ、これ言わなきゃダメなの?」
迅は忍田と八幡の母に問いつめられたが、何か隠したいのか言うのを躊躇った。しかし、二人の放つ重圧に根負けしてしまい仕方なく真実を話すことにした。
「実はあの時トリオン兵を倒したのはそこで眠ってる少年、八幡くんなんだ」
衝撃の事実に二人は固まってしまった。そんな二人を他所に八幡はまた深い眠りについてしまった。
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