迅さんの『ぼんち揚げ食う?』はアニメに会わせて『揚げ煎食う?』にしてます。私的にはそっちの響きのが好きなんで。
では本編スタート
半年前のあの日、私の人生の転換期。いつものように平和な休日の朝は一変して地獄と化した。
折本かおりの告白に動揺を隠せない八幡の表情は固かった。何せあの日の出来事を思い出してしまったからだ。折本はあの日親父に助けられ、その後親父は右腕を犠牲に死ぬ気で八幡を守ったのだから。
「あの日、比企谷のお父さんがいなかったら私たち家族は今はもうこの世にはいなかった」
「親父が…」
八幡の父、七曜が八幡の元へ駆けつける前に折本一家はトリオン兵の残党に襲われそこをたまたま通りがかった七曜の助けにより難を逃れたのか。そしてその時にトリオンが切れて換装が解けたか。
あの日の情景が一瞬頭を過った。それを思いだした八幡の体は震えていた。
「比企谷?」
顔色が悪くなり様子がおかしいと思い折本は八幡に声をかけるが返事が返ってこない。
「折本さん、どうやら比企谷の体調が悪くなったから話はまた今度にしないか?」
「えっ?そっそうだね。ごめんね、急に変なこと言い出して」
「大丈夫だよ。俺もこいつも大規模侵攻経験してるし、そう言った話には慣れなきゃならないから」
本牧も何処と無く顔が苦しそうであるが、平気だと言って八幡を連れて店を出た。
「かおり、あんた地雷踏んだんじゃない?」
「いや~こんな風になるなんて、ごめん。私明日ちゃんと比企谷に謝る」
「そうしなよ。さっ私達も出よ」
かおりと千佳は頼んでいた紅茶を飲み終え店から出た。
一方、体調不良から先に出た八幡と本牧はボーダー本部へ向かっていた。今日は非番なので訓練がてら来てみたと言うのもあるが、先程の会話に二人とも思うところがあるだろうから、気分転換と言う意味もあってきた。
「はぁ、さっきは取り乱して悪かった」
「気にするな。お互い様だろ」
「お前の場合は俺よりきついだろ。あまり顔に出てなかったっぽいけど」
「まぁ俺は慣れたから。そうじゃなきゃこんなサイドエフェクトと付き合ってられないよ」
本牧牧人はサイドエフェクトを持っている。彼のサイドエフェクトは『完全記憶能力』。簡単に言えば見たものを瞬時に記憶し一生忘れず記憶として蓄積していく能力だが、一見万能そうに見えて欠点がある。
それは見たもの全てを鮮明に記憶として蓄積してしまうこと。極端な話それはどれだけ悲惨な惨状すら記憶として一生忘れないと言うことだ。彼は大規模侵攻の際に祖父を目の前で亡くしている。祖父は家に潰され見るも無惨な死に様だったと言う。
彼にとって記憶することはどんなに辛く忘れたい過去すら忘れられない事がトラウマとなって記憶され続けていくのだ。一時はその忌まわしい記憶がフラッシュバックしてパニック症状を起こしていたが、ボーダーに入ってサイドエフェクトと向き合うことで徐々に克服していった。
それにこのサイドエフェクトは何も悪いことだけではない。記憶する事が常人の何倍も優れているため、色々な経験を覚えることが早い。
だがただ早いだけでは意味がなく、その理を理解する力がなければ意味がない(例えばだが、数学の問題の答えを丸暗記しても数式を解く理解力がなければテストでは何の意味を成さない)。
彼の場合は真面目な性格のお陰で理解しようと更に勉学に励むため日常生活では大いに役立てていると言う。
それを聞いた八幡は以前にそれなんてチート?と揶揄されたほど、本牧のサイドエフェクトは優れている。
「相変わらずチートだよな」
「ならなってみるか?代われるものなら代わってほしいんだがな」
「いや丁重にお断りする」
「言うと思ったよ。んで気晴らしに模擬戦でもする?太刀川さんいるけど」
「いや、絡まれたくないから他いこうぜ」
ブース内では既に太刀川が模擬戦をやっていた。既に何人か絡まれて屍?の山が築き上げられている。変なのに絡まれたくない二人はブースを出ようとした。
入り口かはサングラスをかけた胡散臭い青年が二人の前に現れてこう言った。
「揚げ煎食う?」
「「うわっ迅さん!?」」
二人は驚いて後ろに下がった。急に現れては何か場をかき回すこの青年は迅悠一。未来視のサイドエフェクトを持つ自称実力派エリートを名乗るボーダーの古株だ。
「よお比企谷、なんかいい出会いでもあったのか?青春だな」
「迅さん、あんた視えてたのか。お袋に言って仕返してもらおうかな」
「ちょっとちょっと!!俺は何もやってないよ!?ただちょっと先が見えただけだから」
「その言い方が益々胡散臭い。あとで天罰でも下ればいいのに」
「ひっひどい!?」
八幡が迅に当たりが強いのはボーダーに入る前ならいじり倒されていたからだ。その度に色々羞恥な目に合わされていたため八幡は迅が苦手である。まぁ根は優しく親切なので憎むに憎みきれないからお返しに辛辣な態度を取っているのだ。
「んで迅さん何しに来たんすか?」
「いや、ちょっと野暮用」
「どうせ暗躍でしょ。そうだ、今なら太刀川さんいますんで相手してあげたら?」
「うーん、それはまた今度にしようかな。太刀川さんと模擬戦すると日が暮れても帰してくれないから」
それは違いない。八幡もいつだったか一日中付き合わされた。それでまったく疲れた色を見せないから質が悪い。あの人本当に戦うこと以外はダメ人間まっしぐらだからな。そのせいで風間さんがいつも頭を痛めては太刀川さんの横暴を止めている。
「んじゃまたな」
手をヒラヒラふってヘラヘラ顔して迅は二人のもとから去っていった。
-???-
「お前の言っていた未来とはこのことだったのか?」
「まぁそんな感じですかね。あの日に視た未来のその先の分岐点が今動き出しそうなんすよ」
「そうか、俺の右腕一本でどうにかなれば安いもんだ。あの日からあいつには辛い思いしかさせてなかったからな」
「貴方がいなければ彼は今この世にはいません。それにあの少女も」
「本当にボーダーに入るのか?」
「彼女が入ることでこの先さらに未来は変わっていく。でもそれは必要なことなんです。彼のためにも、彼女のためにも」
「わかった。なら俺はその行く末を見守ろう。俺に出来るのはそれくらいしかないからな」
「父親ってそう言うものなんですか?俺、母しかいなかったし、母さんはもういないから。父親ってどう言うものなのかよくわからないんですよね」
「お前の師匠と似たようなもんさ。親ってのは子が何より愛しいのさ」
「それ、八幡に言ってやってくださいよ」
「今さら恥ずかしくて言えるか。そう言うのは母親の務めだ。男親は不器用なくらいの接し方がちょうどいいさ」
「はぁ、あの人八幡のこと好きすぎでしょ。変にからかうとお礼参りの如くトリガーで報復されるんすよ」
「母さんはボーダー最強の女だからな、下手に逆らうと後がこわい」
「比企谷さん見たまんま奥さんには尻に敷かれるタイプですもんね」
「うるせぇ、お前も家庭を持てばわかるようになるさ。まぁお前が結婚するなんて想像できないがな」
「あぁなんか侵害だな。この実力派エリートはボーダー内外でもモッテモテなんすから」
「嵐山のやつよりか?」
「いやありゃ別格です」
「まぁ何にせよ楽しみだな」
彼女の入隊まであと一ヶ月…
-Dangerの系譜-
八幡「由比ヶ浜、お前『danger』これなんて読むかわかるか?」
由比ヶ浜「ちょっとヒッキー超失礼だよ!これくらい私だって読めるよ!!えっと、えっと」
「だっダンガー?」
八幡「」
雪ノ下「」
本牧「」
仲町「」
折本「ぶっ!ダンガーwwwウケるwww」
由比ヶ浜「ふぇ?あっあれ、違ったかな?」
たぶん由比ヶ浜ならダンガーって読むだろうな。