私はあの日、彼に一生消えない傷を負わせてしまった。
私があの時助けられさえしなければ、彼の瞳から光が消えることがなかったのかもしれない。
私は一生償っても償いきれない罪を犯したのだ。
私が比企谷八幡を知ったのは小学生の頃だ。家が近くて学区も同じだったから小学校は一緒だったけど、クラスが同じになることは一度もなく、接点は特になかった。そんな私が比企谷と本格的に交流し出したのは中学に上がってからだ。
大規模侵攻がなければ私と比企谷を結びつけることはたぶんなかったのかもしれない。私が今こうして生きているのは比企谷がいたからこそである。
その日、私と友達の仲町千佳は放課後三門市の街を練り歩いていた。少し感傷に浸りながら、警戒区域の外から大規模侵攻での爪痕が未だ残る放棄された住宅街を見て感慨に浸っていた。そんな矢先に、市街地付近で門が開いた。私たちがいるすぐ目の前に近界からの化け物が門を通じてやって来た。私と千佳は逃げた。しかし、化け物達は私たちに気づき直ぐ様私たち目掛けてその鋭く光る牙を向けて襲いかかってくる。
私と千佳はもうダメだと目を閉じて身構える。しかし、一向に待てど痛みと衝撃は訪れることがなかった。恐る恐る目を開けるとそこには化け物と対峙している少年がいた。後ろ姿だが、すぐに少年が誰かわかった。私達と同じ中学校にいる比企谷八幡。
学校ではいつも一人でいて、根暗で無口。あまり人と関わりを持とうとせず、話しかけても返事くらいしか返ってこない変わったやつ。それは中学に入ってからも変わらない。私も何か用がなければ話しかけようとも思わなかった。いや、本当を言えば話しかけようとした。でも彼が纏う干渉を一切拒むような雰囲気に誰も彼に声を掛けられないでいた。
大規模侵攻後、久しぶりに見た彼は変わり果てていた。同じ年の子供が見せる活気に満ちた目が比企谷のその瞳にはなく、あるのは全てを拒む研ぎ澄まされた野生の獣のような鋭く射殺すような殺気に包まれた目であった。初対面なら気圧されて裸足で逃げたくなるような、寂しい瞳。でも彼がそうなってしまった一端は私にある。
「どうしてこんなところに?」
「えっ?」
「ちっ、今はそんな場合じゃなかったな。お前ら、そこの瓦礫に身を隠してじっとしてろ」
「わっわかった」
私は千佳の手を引いて瓦礫に身を潜めた。比企谷は私達に危害がないよう庇うように背を向けて化け物に応戦する。私達はその姿を瓦礫の隙間から隠れて様子を伺っていたが、相手は2体もいて比企谷は素人の私から見ても分かるくらい劣性だった。何故なら防戦一方で攻めに出れないからだ。私達を庇うあまりうまく踏み込めない。なんとか凌いでいる状態が続き、比企谷の動きはどんどん鈍くなるも、なんとか全ての攻撃をいなし防いでいる。
「早く、早く来てくれ」
どうやら比企谷は仲間の援護を待っているようだ。300メートルくらい先で、他の隊員が違う化け物と応戦しているのが見える。しかし、一人の隊員が複数を相手にあちらもなんとか耐えるのに必死であった。
「ぐあぁっ!?」
「比企谷!!」
比企谷の持つ武器が弾かれてしまった。
そこに出来た隙を逃さず、鋭い爪が比企谷を襲う。絶体絶命のピンチ、だがそこに一筋の斬撃が走った。
「旋空弧月!!」
衝撃が走る。何かよくわからないけど化け物が真っ二つに切られたのだ。
「はぁはぁ、太刀川さんナイスタイミング」
「おぉ、比企谷よく耐えたな」
「ありがとう、ごさいます」
比企谷は疲れはてたのかフラッと倒れてしまう。私は瓦礫から走って比企谷の元へ駆け寄った。比企谷はただ緊張が抜けただけで意識はあった。私は安心して胸を撫で下ろす。
「本部、トリオン兵全機機能停止、残敵なし。民間人2名の無事を確認。これより保護する、回収班を回してくれ」
『了解、お疲れさま。比企谷君は大丈夫?』
「あぁ、別に問題ない。気が抜けて倒れただけだ。意識はあるからそのまま帰還できる」
『わかりました。引き続き警戒してください』
「了解した。比企谷、お前は回収班と一緒に帰還しろ。よく耐えたな」
「風間さん……比企谷了解」
こうして、私と友達の千佳は無事ボーダーに保護された。
そして、あれから半年後、私達はボーダーに入隊する。
日を追う事に当初予定していた話とはかけ離れていきそうです。当初はほのぼのボーダーライフにしようとしたのに、今ではキャラクター一人一人にトラウマを抱えさせようとする始末。
次回、折本かおりと仲町千佳がボーダー入隊!!比企谷隊誕生秘話?いやなんかもう明るく進めたい!!
あっちなみに本牧君にサイドエフェクトつけます。サイドエフェクト持ちはつらい過去や心の闇を抱えている。彼もその闇と戦うためボーダーに入った、と言う風にします。まぁ半分はレイジさんの筋肉の洗礼を受けたからによるものなんですけどねwww
それではまた次回