漆黒の剣風と金色のせせらぎ   作:クリュネル

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なかなか書く手が進まないなぁ...
自分の中での感覚は、編んだ紐を解いてそれを他のものに編みなおすような感覚に
近いのかなぁなんて思いつつ

書きたいことが多すぎて書ききれない!?
今回も途中で切れる可能性大!
それではどうぞ!


未だ遠き世界の果て、少しずつでも

アリス side

 

 

私は扉が開け放たれる刹那に気づいた。

 

それは癖だった彼___キリトがボスに速攻を仕掛けるとき、

最速で間合いを詰めるときの。

 

つま先で地面を数回叩き僅かに体制を低くする

その動作に気が付いた。

 

それを見たのは多分癖だったのだと思う。

かつてはキリトのわずかな挙動を見て自分の最善の行動を起こすというのが当たり前のように

出来ていた。

無意識に彼のことを目で追っていたあの頃の私の当たり前だった癖。

 

それに気づいたのは彼に追随し剣を振りかぶった時だった。

多分キリトはこっちを一度も見ていなかったと思う。

 

それでも微かに見えた気がした。

彼を追い越すとき彼が、キリトが仄かに笑っていたのが

 

私はそれを見て言葉にできない感情が心の中に生まれた。

その感情は胸から登り頭に到達するとある言葉を伴って紡がれる

 

「「スイッチ!」」

 

信じて、頼って何度も祈るように、確かな温度に包まれていた

何度も紡いだこの言葉は...

 

私があの日から一度も発せず、彼としか紡いだ祝詞は

再び時を動かすように空気を震わせた。

 

 

 

アリス side out

 

 

キリト side

 

 

 

俺の中で渦巻いていた高揚感がようやく少し薄れ

アリスから体を離すとそこに鋭い叱責が飛んでくる。

 

「二人とも、何をやっているの!

 勝手に突撃するなんて...何かあったらどうするのよ!」

 

「その何かがなかったからいいだろ?

 それに、あのボスは時間が経てば経つほど厄介になるからな...」

 

一言で副団長様の叱責を流し視線をボスに移す。

ボスは技を受けた衝撃から回復し、こちらの様子を窺うように

じりじりと距離を詰め始める。

 

「...とにかく、さっきみたいな自滅覚悟の突撃は止めて頂戴」

 

「自滅する気はさらさら無いけどな」

 

「ちょっと~、キリトさんもアリスもいきなり突っ込んでいくから

 ボクびっくりしちゃったよ」

 

俺たちが油断していると見えたのか、ボスが腕を伸ばし攻撃を仕掛けてくる。

相手が持っているのは二本の槍と四本の刀、そしてあれは片手斧だろうか

どれも見た目は粗雑な業物だがあれらには俺たちを殺す力を纏っている。

 

俺以外もさすがは攻略組の一員というべきか、

すぐさま気が付いて三方向に散開する。

 

「キリトっ!」「キリトさん危ない!」「ちょ...っ早く避けなさいっ!」

 

俺が動かず静止しているため彼女らは声をかけてくる

しかし、それはすぐに聞こえなくなる

俺にはもう迫りくる刃とボスの醜悪な顔しか見えない。

 

少しずつ動きも鈍化していき色を失っていく

 

それでいて思考はクリアで情報が脳内で高速で飛び交っているような

感覚も覚える。

その思考は俺という境界を越え戦域へと拡大される。

 

『最初に来るのは黒い刀二本の左右切り払い』と

本能と思考回路が俺に囁く。

 

それに従い上体を限界まで倒す。

一コンマ遅れて刀が宙を薙ぐ

俺は右に薙ぎ払われる刀の背を掴み刀とともにボスの側面に移動

次に振るわれた片手斧の振り下ろしを難なく躱し

残りの刀は斧に少し遅れ打ち下ろされた。

 

槍に視線を向けると淡く青に光り始めている

ボスは二槍を地面に突き刺しそこを起点に衝撃波が走る

 

確かあれは、長槍重範囲攻撃ソードスキル〈グランドクエイク〉

 

それによりボスが決定的な隙を晒す

そこをみすみす見逃すほど優しくはない。

 

硬直が短く素早く移動できる〈レイジスパイク〉を咄嗟に

発動しダメージを与えつつ正面へ移動

 

硬直が解けるとようやくそこで感覚が全て戻ってくる。

それを頭の隅で知覚しつつ剣を迷わず振るう。

 

まず狙うは最大の攻撃力を有するであろう片手斧の腕

まず手首のあたりに狙いを定め銀の軌跡を残し斬撃を放つ

 

「...っ!」

 

赤いダメージエフェクトが敵の体に奔る

 

「セィっ!」「てやぁ!」「はぁぁあ!」

 

その数コンマ後に背後から剣をふるう風切り音と鋭い声が響いた

背後に視線をチラリと向けると三人の少女たちが俺の行動の意味を悟ったのか

それぞれ一本ずつに相対している。

 

「予測より幾らか早かったな...

 流石は攻略組でトップを担うだけのことはあるってことか...」

 

さして驚くことではない。

彼女たちの信念や性格からしてすぐさま攻撃に切り替えるのは

不思議じゃない。むしろ当たり前だ

 

それでも反応の速さは三人とも目を見張るものがある。

剣速、正確さ、力強さ、それぞれの剣に宿る思い

今の俺の剣に欠けている全てを持っている。

 

だが、俺にだって譲れないものはある

俺が欠けたものを持っていようとそれをすべて束ねれば

いつかは頂に届く刃になるはず。

 

それを振るい、この世界から解放され自分を見つけるという俺のささやかな願い

 

そこまで考えてその思考を停止させ戦いにシフトする。

 

ボスは先ほどの連続攻撃の技後硬直が未だ続いている。

体感的にはおよそ十秒弱位だろうか

 

普通のソードスキルの硬直に比べると長すぎる

恐らくさっきの攻撃全てに、ソードスキルの判定があったのだろうか

 

それしか考えられない。

それでもチャンスはチャンスだ。

すぐさま思考を行動へ移行させる

 

ほぼ反射で俺はスキルの構えをとる。

俺が今使えるスキルの中でも最高の連撃数を誇る

片手直剣上位六連撃技〈フルンディング・イミテーション〉

を放つ。

 

技後硬直は二.三秒と少し長めだが、

四種の斬撃と二撃の突きで構成されたスキルで二つの物理属性で

攻撃ができる

 

スキルの最後の一撃、上段からの切り下ろしと同時にボスの体が

少しずつ起き上がる。

 

「...チッ、硬直まで間に合わない...ッ」

 

視界の端で回避を始めようとする三人

俺にはまだ気づいていない。

 

「ハッ...でもまぁ、こんなところで諦めるほど軟じゃねぇよ...」

 

こんなことで諦めていたらソロも攻略組もやっていない

 

 

俺は腰のベルトにもしもの時のために刺しておいた

短剣に手を伸ばす。

まだスキルの最後の一撃は振り下ろされていない

ならば賭けに出る。

 

短剣の柄を握り___振り下ろされ始める。

留め金を外し___ボスの腕にダメージエフェクトがドット単位で現れる

一気に抜き放つ_____

 

 

 

スキルが止まる。

俺の視界には警告のウィンドウが映し出される。

そこには、装備異常の文字の羅列

 

 

それにより俺は硬直をする___僅か0.8秒

俺は自分の試みがうまくいったことで口角が少し上がる

 

 

俺の試み______スキルでの硬直ではなく、装備異常状態での硬直

それは一部のスキル硬直よりそれを短縮させることのできる裏技だった。

 

呪縛から解放され即座に回避する

二秒前までいたところに方手斧が突き立てられる。

 

ギリギリの回避だった

少しでもしくじっていたらあれの餌食になり

HPをゼロにしていただろう。

 

俺の今のレベルは67でどのステータスも軒並み上がっているが、

レベルアップのボーナスポイントはほとんどAGLとSTRにつぎ込んでおり

防御性能などは皆無に等しい。

一応の保険として武器防御スキルは会得しているが

ボスなんかの攻撃をまともに食らいなどしたら一撃でゲームオーバーになりかねない

そしてそれの副産物として現実での死が待っている

 

「はぁ...厳しいな...あまり削れてないぞ」

 

「あれだけやったのにボスのHPバーが一本目の大体十分の一

 しか減ってないってかなり厳しいよ~」

 

「そうね...私たちだけだと圧倒的に手数も何も足りない」

 

「ねぇ、アリス...キリト、私たちだけでだと、無理なのよね?」

 

「確かに副団長様の言うとおりだが...何が言いたい?

 もったいぶらずに言えよ...あまり余裕はないんだからな」

 

「だから、私たち以外にも人がいれば攻略は可能なのよね?」

 

「援軍か?そんなのここじゃ呼べもしないだろ...

 って、お前まさか!」

 

「街にいる間に召集の号令をかけたの!?」

 

「えぇ、団長からは一時間半で向かうって返事が来ていたはずよ」

 

そこまで聞いて俺は逆算を始める。

 

(どれだけ急いだとしても迷宮区を抜けるのにおよそ二十八分、

 準備にはおそらく彼女たちだと五分もあれば十分...そしてアリスたちと会ってから

 大体二十四分。つまりメッセージを送ってから五十七分)

 

残りは三十三分、それまでに何かしらの攻略の手がかりを掴まなければならない

でなければ攻略組に死者が出てしまう

 

攻略組にはゲーム開始の初日に俺が見捨てた

ナツやユキ、クラインもいる。

彼らもこんなところで殺させるわけにはいかない

 

彼らや彼女らを生かして未来へ繋げることこそが

俺の役目であり俺の生きた証になるだろう。

それを残していてもさして罰は当たるまい

それほどまでに俺の命は軽いものだから。

 

「...じゃあ、俺は死ぬ覚悟で挑んでやる。

 俺の命は肉壁にぐらいはなるからな...でもまぁそれくらいじゃないとこれから来る

 あいつらへの償いにはならないからな...」

 

そう呟くと剣を構え直す。

二~三度深呼吸___この体は酸素を必要とせず呼吸は必要ないが

して、目を瞑り気持ちを落ち着かせる。

 

大丈夫、心配はない思い残すこともない。

だから、俺は無慈悲な刃としてこの場に立とう

敵を殺すだけのただ切り裂き貫くだけの冷たい刃だ

 

その考えが俺を満たすと俺から温度が熱が遠ざかる

戦場の空気だけが俺を満たす。

 

目を見開き敵の心臓を見据え___駆け出す。

 

 

敵の一挙一動がスローモーションのように遅い   見える。

 

敵の六つの武器すべてを潜り抜け刹那のうちに多分四~五撃位入れただろうか

足には幾らかの赤いダメージエフェクトが奔り

ボスを形どっているデータの残滓が幾らか剥がれ落ちるかのように、

生物を切り刻み血が噴き出すかのように

赤いポリゴンの欠片が舞っている。

 

「鈍いんだよ...デカブツ

 と言っても、俺が今【疾走】のスキルを使ったから

 俺のスピードが二秒間だけ跳ね上がっただけだがな」

 

誰に聞かせるでもなく俺の声は響く

 

___【疾走】スキルは俺が第六層の時に手に入れたスキルで

    片手直剣や索敵、武器防御、体術のスキルにはやや劣るものの、

    熟練度500を超えるそこそこ使いこなしているスキルの一つ

 

さっき使ったのは『疾風』

スキル発動から二秒間SPDが二・五倍になるスキル

 

普通であればこのスキルは逃走時や回避時に多く使用されるものだが

これを使えばソードスキル並みの速さで攻撃できることに気が付いた俺は

それを組み込んだ剣技を編み出した。

 

それが今のものだ。

 

顔を上げボスの体力を確認する

今の攻撃ではあまり削れず大体数ドット分しか削れなかった。

 

『疾風』のクールタイムは高性能なスキルながら

二十秒と少し短めで後十数秒で再度発動できる

 

それを確認し、俺はストレージから今の愛剣とは違う剣を取り出し

潜り抜け背中側にいる俺はすぐさま接近する

 

そのがら空きの背中に取り出した剣を思い切る突き立てる。

すぐ離脱して今度は二メートルほどの槍を取り出し

投擲スキル『シングルシュート』で追い打ちを仕掛け

 

パッシブスキルの『クイックチェンジ』ですぐ愛剣を握りしめる。

同時に剣、槍も消える。

スキルも発動可能になっていることを確認すると

接近してスキル発動

 

無防備な背中に新たに傷が刻まれる。

スキル終了とともにソードスキルを発動。

 

「ヘイトは俺が受け持つ!

 隙を見てお前らも攻撃しろ!俺のソードスキル終了と同時に始めろ!」

 

叫びながらスキル___片手直剣水平四連撃技『ホリゾンタル・スクエア』の一撃目を叩きつける。

 

「スキルも技能も全て出し惜しみなしだ...

 誰も殺させないためになぁ!」

 

 

キリト side out




書き終わって思ったけど、ボスの体力ゲージ一本目すら
削り切れていないという話の展開の遅さである。
あとこの話何話続くんだろうか?

作者にも予想がつきませぬ。
というか一話に全部収めようとしたら余裕で一万字超すのではないだろうか...
恐ろしい...
まぁこれからもできるだけ早く皆さんに届けられるように
頑張ります!

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