俺は竈の女神様   作:真暇 日間

93 / 330
竈の巫女、改装する

 

 劇的ビフォーアフターにより、俺の店は生まれ変わった。見た目は全くと言って良いほどに変わっていないが、中身は凄まじく変わってしまっている。

 神としての権能を魔法と技術でいくつか再現し、結果的にはかつて神の身体で作り上げた別荘には及ばないものの、人間の作ることができる物とは思えないものを作り上げる事に成功した。

 

 まず始めに紹介するのは店の内装。これは一見何も変わっていないように見えるが、実際には術式が練り込まれることで耐久性を増し、喧嘩っ早い神が殴り合って吹き飛ばされて壁に直撃しても早々壊れず、また例え壊れたとしても材料さえあれば簡単に修復できるようにもなっている。

 これは清掃時にも活用され、油汚れや塵はあっという間に材料として壁に取り込まれて再利用されることになる。

 

 次に調理場だが、水を生む術によりお冷やのサービスができるようになっている。水のついでに氷も生むことができるし、氷を使った原始的な冷蔵庫も作ってみた。これでアイスが食べられるよ!やったねイシュタル!

 ……どこからか『おいやめろ』と言う声が聞こえてきた気がしたが、気のせいに違いない。気のせいでないわけがない。そういうことにしよう。

 

 竈などはほとんどそのままだ。へす印の大釜に自作の竈。燃料が魔力と言うところ以外は普通の竈と全く変わらない。

 

 それから二階だが、一階部分の壁や天井を頑丈にすることで多くの神が入っても問題ないようにした。空間を拡げてあるが、それについても問題はない。少なくとも今は神話の時代。魔力はそこら中に溢れているのでそれを使えば俺に負担はかからない。俺自身の魔力を使っても負担はほとんど無いが、在ると無いとじゃ大分違う。1と2には大差はないかもしれないが、0と1には圧倒的と言う言葉すら霞むほどの差が存在する。

 日本語的に考えれば、『差』とは引算の答えの事を言うので1から2を引いたものも0から1を引いたものも同じ-1でしかないが、俺が言いたいのはそう言うことではなく概念の話だ。

 概念的に考えれば、ほんの僅かであっても存在するならばいくらでもやりようはある。たとえば、月を司る女神が太陽光を司ることは可能だし、重力を扱うことも可能だ。月の光は太陽光を反射したものなのだから当然太陽光を使えるし、月自体にも重力は存在するので使えないわけはない。

 しかし月では植物は育たないため豊穣の権能は得られないし、月自体に破壊の権能は持ちようがない。だが、無理矢理に繋がりを作ればいくらでもどうにかなるのが概念だ。

 月の光は太陽から来るもの。太陽光は植物を育てる。だから月でも豊穣の権能は取れるし、破壊の権能についても直接的には取れないと言うだけで間接的にならばいくらでもやりようはある。竈と言う凄まじく限定されたものからでもあれだけの概念が持ってこれるのだから当然の話だがな。

 

 さて、そして最後の改装だが、この店は変形して船になる。これでノアの大洪水の元ネタとも言われるエンリルの裁きも怖くない。転覆しても問題ないように潜水艦にもなるようにしたし、やろうとすれば竈ロケットで空も飛べる。燃料? そんなもの石でも何でも放り込んで対消滅させれば簡単に賄える。最悪俺の魔力でもいいしな。

 まあ、流石にこの機能を使うようなことには早々ならないだろうし、本当に使うことになったら色々やばいが少なくとも俺は生き延びる事はできるだろう。神ならぬこの身体では普通に死ぬからな。ギリシャ神話の神は死なないが、ギリシャ神話では半神程度なら割と簡単に死ぬ。メソポタミア神話では神すら死ぬ。気を付けなければならない。

 

 改装も大体終わったし、装い新たに開店するとしよう。どうなるかはまだわからんがな。

 

 




へっ様、『絶対魔獣戦線バビロニア』参加決定(嘘)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。