俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、子を抱く

 

 神格を持つ子供とは、非常に聡い生物だ。神として人の嘘を見抜く事ができ、人として神の嘘を見抜くこともでき、人と神の良いところと悪いところを同時に持つ。人としての視点で見る世界と、神としての視点で見る世界。二つの価値観を同時に持ち、そのどちらにも従いながら生きて行くことは相当な苦しみを持つことになるだろう。俺だったらそんな人生は御免被る。

 俺はよく自分自身の在り方として、と言うが、それはあくまで今の俺、つまり神格であるヘスティアとしての在り方を指している。そうしなければ人間としての顔を出してしまい、神としての在り方と人間としての在り方のギャップによっていろいろと頭の中が面倒な事になるので口にしているのだ。

 人間としての俺だったら、別に孤児を救おうだとかそんなことは考えやしない。孤児が居ました、あっそう、で終わりだ。

 だが、そういう生き方をしてきた前世では、基本的に俺の周りに居た奴らは人間としてどこかおかしくなっていた奴ばかり。だから、今回の生では生き方を変えてみようと思ったわけだ。ちょうどいいことに、今生の俺の身体は神格である竈の神ヘスティアだった。だからこそ、神話に残るヘスティアとしての生き方を取り入れて生きてきているわけだ。

 

 そうした努力の結果か、あるいは俺以外にも神と言う超常的な能力を持つ者が周りに多かったせいか、今の俺の周りには多くの存在がある。前世でも後悔の無いよう楽しく生きてきたつもりだが、今生も方向性こそ違えどそれなりに楽しく生きていく事ができている。

 それに、今生では妹の子を抱き、育て、そして嫁にいくところまでを見届けた。また、知り合いの子を抱くこともできた。若くして死んだ前世ではできなかった事だ。

 そして今も、知り合いの王の子を抱いている。生物としての格は今の俺の方が高いが、この子は約半分……いや、確か三分の二だったか? それくらいが神であり、残りの三分の一が人間であると言う存在だ。神の腕に抱かれる資格は無いとは言えないだろう。

 

 ……しかし、どこかで見た覚えのある顔だ。具体的にどこかと言われると困るが、恐らく前世だろう。前世で金髪に紅い瞳の奴なんて知り合いにはいなかったが、それでも知っている気がする。どこだったかね?

 …………いや、待て。そうだ、こいつはギルガメッシュだ。だったら俺が知っているギルガメッシュの中から何人かピックアップして、それを三次元に引っ張り出してやると……ああ、なるほど、知っている気がするわけだ。

 ギルガメッシュ。古代ウルクを、そして世界を支配した最古の英雄王。俺が人間として生きていた時代では、そう言った英雄や偉人を題材に様々な話が作られた。その中の一つに、このギルガメッシュとそっくりな存在がいる。某運命の名前を冠した作品だな。昔過ぎて即座に出てこなかった。

 最近使っている人間だった頃の知識は、なぜか食事のことに関連する物ばかり。身体が変わってもやっぱり俺は日本人なんだなと心の底から認識し直した。

 

 それはそれとしてギルガメッシュだが、外見は運命のまま性格を某最後の物語のようにしてみると言うのはどうだろうか。流石にパチモン聖剣の件まで再現することは無いだろうが、中々楽しそうなことになるかもしれん。やるかやらないかはまだ決めていないし、本当にやるとしても実際にそんなことができるかどうかはわからんが、考えるだけならタダだ。面白そうだと言う意見については間違ってないしな。

 しかし……神の血の混じった人間か。しかもそれがギルガメッシュとなれば荒れることは間違いない。常連の一柱がこっぴどく振られてグガランナを地上に降ろして凄まじい被害が出るはずだから、今のうちにそれに耐えられるだけの準備はしておこう。

 とりあえず、変形と走行、飛行機能はつけておきたいな。機動店舗か……ロマンだな。うん。

 


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