ルガルバンダとニンリルは、俺の店での逢瀬を続けた。俺は俺でこの一人と一柱に対して色々と便宜を図ったりもした。わざわざ俺の店に来て一杯のカレーを一つのスプーンでお互いに食べさせ合ったりするのを見てもスルーしたし、その光景を見てイギギギギギと歯ぎしりをする独身者に異性を紹介して平和にしたり……その結果、まさか俺が縁結びを司るようになるとは思ってもみなかった。しかも正式にメソポタミア神話に神として登録されるとは……今の俺は人間のはずなんだがなぁ……。
まあ、問題は無い。ちゃんと神格は本体であるヘスティアの方に献上と言う形で譲渡しているし、この身体自体は人間のままだ。Lvは上がったが。
そう言った感じで人間と女神の交流は続き、なんとこの度、子供が生まれる事になった。名前はビルガメシュ。俺の居た時代の日本で有名な発音で言えば、ギルガメッシュ、と言う事になる。
できればどこぞの作品の世界のギルガメッシュのように子供の頃は賢君だったのに大人になって暴君になるようなことにはならないでほしい。ギルガメッシュ叙事詩では子供の頃は割と暴君で、大人になってエンキドゥと大喧嘩してから賢君になったはずなのに、どうしてあの作品ではああいう風になったかなぁ……面白いしキャラが立ってるから悪くは無いんだが。
だが、妊娠中にもカレーを食べに来て、しかもそれ以前よりも親密度が増しているってどうなんだよ? はっきり言って色々キッツいんだが。
「誰か男でも紹介しましょうか?」
「いらね。それに俺、この近くで襲われそうになってそいつの玉袋蹴り潰してから畏怖と恐怖の目を向けられることも増えたから余計に肩肘張ることになりそう」
「……」
「ついでに、こういう仕事をやる前は色々と無茶しててな。服で隠れちゃいるが肌には大量に傷跡が残ってるんだよ。あんまり男受けしない訳だな」
「消せないの?」
「消せるが消すつもりは無い。男避けにはちょうど良くてな」
「なに、男嫌いだったりするの?」
「恋愛対象には無いな。男も女も関係なく、だが」
わかる。俺は別に心を読む権能を持っているわけじゃないが、今イシュタルは『それって絶対今まで恋をしたことが無いだけだろ……』とかそう言う感じの事を思っているのがわかる。
だがな。一応俺は恋をしたことはあるぞ。人間だった頃だがな。
ちなみにその恋は叶わなかった。何しろ人間だった頃から人外染みていたもんで、女からそういう目で見られることも無かったわけだ。残念無念、と。
そうそう、Lvだが、ニンリルが常連となったことで一つ上がった。まさか本当に上がるとは思ってなかったんだが、上がるもんだな。
だが、これを人間に刻むなら簡単にLvが上がってしまってはつまらない。何かLvが上がるのに必要なフラグのようなものを用意しておいた方が良いかもしれない。
そうだな……何らかの偉業をフラグとすればいいかもしれない。鍛冶師ならば画期的な武器の作成であったり、強力な武器の作り方の確立であったり、今まで使い道のなかった金属の使い道の発見などが当てはまる。他にも料理人としてならば今の俺のように有名な人物を常連に引き込んだり、商人ならば莫大な売上金などもフラグとして作ることができるかもしれない。
勿論、戦闘者としての偉業も忘れてはいけない。戦争において無数の敵を打倒する事であったり、強大な敵を倒すことであったり、武芸を極めて王となることでもいい。善であろうと悪であろうと偉業であれば内容は問わない。
……と言うか、善悪で偉業かどうかを分けていたら敵対する神か味方の神かで大きく結果が変わってしまう。ついでに神にも善神悪神が存在するのだから、わざわざ分けていられない。
どのくらいなら人間に刻んでも問題が出ないのか、マイナーダウンを繰り返して行かなきゃならんってのは少々面倒だな。ゲームの運営ってのは面倒な物だと相場は決まっている物だから仕方ないんだが。