カレー。それは神秘の食べ物。
無数の香辛料を砕き、焙煎し、乾燥させ、あるいは生のまま潰して混ぜ合わせ、一つ一つの香辛料の味からは考えられないほどの美味を作り出す神秘の料理。俺がヘラに教えた嫁入り必須技術108式にも入っていたが、ヘラはどうにもそう言った細かい料理をするのが得意ではないようで挫折してしまった。ヘファイストスも作ることはできるが、それはあくまで最低限。どうも鍛冶にのめりこんでしまっているために料理にはあまり興味が無いらしい。実に残念だ。
そんなカレーには数多くの食べ方があり、無数とも言える種類が存在する。
カレーの味が同じだったとしても合わせる物の味によって相当食感は変わってくる。米、ナン、そして麺。米は炊く時に混ぜ物をしてやれば風味を付けられるし、ナンも果物の果汁を使ったり塩の種類を変えてみることで味を変えられる。麺も同じように、幅広にしたり細目にしたり、麺を捏ねるときに混ぜ物をしてみたり、小麦粉以外の物を使ってみたりとできる工夫には限りが無い。
当然ながらカレーのルーへの工夫もあるし、それに合うように主食を作り替えるのならばその数は数十億では足りなくなることは間違いない。物によってはほんの僅かな量でも味の感覚をガラッと変えることがある香辛料。そして香辛料以外に使われる材料。スープストックに使われる出汁の強さや種類、具として入れられる肉や野菜、魚などなど、それこそ文字通りの意味で無数と言えるほどの種類の工夫がある。
それをどうするか。それを考えるだけで日が変わるくらいの時間は簡単に過ごせるし、時には年単位で時間を過ごすこともある。今回は香辛料を練りこんだパスタカレーを作ってみたが、もう少し工夫を重ねることができそうだ。
麺に練りこむ香辛料を変えてみたり、あるいは俺が人間だった頃に漫画だったかアニメだったかで見たカレーの再現も面白い。確か、カレーの隠し味に醤油を使い、麺を三層構造にして真ん中の空気に触れない層にチーズを練りこむんだったか。それでチーズのコクが出て美味いとかそういう話になってたな。
後はあれだな。えび尽くしのカレー。旨味成分が多量に含まれているエビの殻を乾燥粉砕して麺にもスープにもたっぷり練りこんでやるとか? 美味いのかどうかは知らんがな。
「…………」ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ……(カレーは飲み物とばかりに汁ごと麺をすするヘラ)
「…………」ジュルジュルジュルジュルジュルジュル……(うどんは飲み物とばかりに麺ごと汁をすするデメテル)
「…………」チュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル……(うどんもカレーも食べ終わってジュースをすするハデス)
「…………」トォゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル……(食べ終わって卵を掴もうとするも逃げ回られるゼウス)
「うまい」(完食してご満悦なポセイドン)
「麺ッ!おかわりせずにいられないッ!」(どこかで聞いたことのあることを言いつつ麺のおかわりを要求するタルタロス)
「ルー!おかわりせずにいられないッ!」(同、ルーのおかわりを要求するクロノス)
「おつけもの~」ポリポリ(付け合わせの福神漬けを美味しそうにかじるレアー)
「…………」モッシャモッシャモッシャモッシャモッシャ(ピタパンに野菜とカレーを入れて食べ続けるヘファイストス)
それはそれとしてこいつらのカレ中どうにかしないといけない気がしてきたが、どうすりゃいいんだろうな。中毒を軽減させるにはそれを摂取させないようにすればいいんだが、こいつらにそれやると身体が溶けるんだよ。しかも一回溶けた所が治るのにかかる時間は普通の怪我の数百倍。どうにもならん。
ほんと、どうすっかね。こいつら。