俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、宙を作る

 

 宇宙の始まりはビッグバンと呼ばれる大爆発であったと言うのが近年の定説だ。ギリシャ神話においては恐らくそれこそがカオスの出現にあたり、カオスの中でガイアが、タルタロスが、エロスが産まれたのだと思われる。

 さて、そんなビッグバンだが、あれは様々な物質にひたすら圧をかけて行った結果として反応を起こし、爆発を起こしたものだと考えられる。凄まじく多量の物質が、凄まじい圧力によって体積を縮められ、原子核同士が触れ合って反応して爆発する。物は少し違うが核の反応とよく似ている。

 

 さて、ここに核の権能と圧力の権能と物質の権能を持った女神がいるだろう? 箱として竈を用意して、それに結界と虚数空間による隔離を行うことで場所を作るだろう? その中で物質を作り出し、圧力を加え、じっくりと核反応を起こさせてやると―――

 

 ……ほぼ無限遠に存在する虚数空間によって減衰して音は聞こえなかったが、ここに小さな宇宙が出来上がった。原子核そのものが圧力によって縮小し、俺のいるこの世界から見てもさらに小さな世界。箱の中だけで完結する宇宙はゆっくりと広がりを見せているが、箱の中を無限遠とする虚数空間で満たすことで問題なく拡張されている。

 虚数空間が使えなかったら、恐らく箱の縁に届きそうになる度に箱の中身の大きさを縮小していく術式を組まなければいけなくなるところだが、虚数空間とはやはり便利なものだ。そんな面倒なことをしなくても十分にできているのだから。

 これで俺も創造神だ。そしてこの世界をぐしゃぐしゃっと混ぜ合わせることで混沌の権能を、混ぜ合わせた世界を綺麗に整頓することで調和と秩序の権能を得る。そして最後に文字通りに外側の箱である竈ごと壊して消滅させれば破壊神の権能を―――あれ、俺もう破壊神の権能持ってるじゃん。いつ取ったっけなこんな権能。クロノスの腹をぶち抜いた時か? ガイアに思いっきり蹴りかまして顔面崩壊させた時か? ガイアは世界そのものだから、ガイアのツラをぶち壊せたら世界が壊れるってことで破壊神になったのか? よくわからねぇな。

 

 さて、こうして俺も創造神になったわけだが、とりあえず今まで材料不足で作れなかったカレーライスを作ることにした。カレーと言えば単体で食うのも美味いしパンで食うのもなかなか行けるが、やっぱり個人的には米だと思う訳だ。これについての反論は随時受け付けるが、これはあくまで俺個人の意見であって、最大限ぶっちゃけてしまえば個人的な好みの話だ。ナンで食べるのが最高だと言う奴もいるだろうし、単体で行くのが好きな奴もいる。そこを否定するつもりは全くない。

 ただ、俺は米でカレーを食うのが好きだ。個人的な好みとして、そう思っている。

 スパイスはある。だが、必要最低限の物であって全てがあるわけではない。今食わせている物でも一応日本で売り物になると思われる程度の物を作れてはいるが、しかしそれは最高の一品でもなければ究極の一品と言う訳でもない。あくまで最低限の味。最低限家族と思える大切な相手に食わせてもいいと思うことができる味。それが今のカレーだ。

 と、言うことで、俺はこれからカレーの改良を行うことにする。最終的にはどこぞの漫画のように口からレーザーを……いや、確かポセイドンは普通に口からレーザー出してたな……食った時にあまりの美味さに服が弾け飛ぶような……クロノスが食った時には全身の筋肉が盛り上がって内側から弾け飛ばしてたなそう言えば……リアクションと言うのは難しいもんだ。

 それに、スパイスだけじゃなくて他にも色々と必要になるものはある。ヨーグルトやら蜂蜜辺りも欲しいところだが、なりたて創造神の俺に作ることができるか? 確かに日本蜜蜂は蜂球と言う方法で敵であるキイロスズメバチやら何やらを蒸し殺したりすることで竈の権能と繫がりがあるし、一つの群れが巣を作って国家とも家庭とも言える社会を作り上げることから家庭の守護者である俺を信仰している種の一つでもあるし、実際にタルタロスに放した蜜蜂の古代種は俺のことを信仰して年一で俺のところに蜜を届けてくれたりするし、関係が無いわけじゃないんだが……あ、作れた。よしこれで練習用のは作れるな。他人に食わせる時には自然からできた蜜を使って、練習時には味を同じにした自作の蜜で頑張ってみるとしようか。

 ……鶏肉を焼く時、表面に蜂蜜を塗り付けて香辛料を振りかけると、非常に香ばしい匂いがするんだよな。やっぱり蜂蜜は料理に必要不可欠だ。


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