俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、確信する

 

 人間が産まれるには、どれだけの時間が必要となるか。恐らく人間の前身となるだろう猿のような生き物は生まれてきているし、長くともあと数百万年程度だろう。

 そうなると、そろそろ出てくるはずだ。俺のいるギリシャ神話と言う神話体系の他に、神々のいる神話体系。

 例えるならばインド神話。例えるならば日本神話。宗教名で言うならユダヤ教や仏教など、世界の様々な場所で神話が産まれてきてもおかしくないはずだ。むしろ、俺のいるギリシャ神話よりも遥かに昔に作られた神話すらも存在するかもしれない。

 俺は未来における知識から科学的に考えてユダヤ教の唯一神ヤハウェが世界を作ったのはせいぜい十数万年程度と予想したが、インド神話ではそうした予想ができない。そう言った情報が無かったし、もともと存在していた最古の書から考えて紀元前1500年ほどにはすでにある程度形ができていたことはまず間違い無いだろうが、だからと言ってその世界の始まりがその頃であるとは言えない。

 

 インド神話にも創造神話はあるが、元々世界とも言えない何かが存在していて、そこから生まれた一番初めの神格が世界を作り上げたと言う話になっていたはずだ。つまり、インド神話において世界そのものを作り上げたのは神ではない。もともと存在していた世界の中に形ある物を作り上げていったのがインド神話における『世界創造』なのだ。この時点で世界と言う空間そのものであるカオスが産まれた事で宇宙が産声を上げると言う所から始まるギリシャ神話より早く産まれたとは考えにくい。

 

 北欧神話では、世界が九つあると言われている。アースガルズ、ヴァナヘイム、ミズガルズ、アルフヘイム、スヴァルトアルフヘイム、ニダヴェリール、ヨトゥンヘイム、ムスペルヘイム、ニヴルヘイム。この九つだ。

 それらは神が住む世界、人が住む世界などと完全に分けられていて、それらは世界樹ユグドラシルによって結ばれているが、重要なのはそこではない。創世の部分だ。

 まず、北欧神話において初めは世界は灼熱の世界であるムスペルヘイムと極寒の世界であるニヴルヘイムの二つしか存在せず、その二つの世界の灼熱の空気と氷が触れ合ったところから始まる。つまり、神は世界より先には存在してはいなかったのだ。これによりインド神話と同じように北欧神話が実在したらまず間違いなくギリシャ神話より発生は遅いことになるだろう。

 もしかしたら、世界樹ユグドラシルに生った実の一つがカオスと言う神による世界なのかもしれない。そして、ユグドラシルと言う世界樹の、北欧神話とは違う枝に存在しているのかもしれない。もしそうだとすると、俺が北欧神話に遊びに行った場合、マジでヘイムダルがギャラルホルンを吹き鳴らしてラグナロクが起きる可能性もある。そうなった場合、恐らくこちらの言い分は聞いてもらえないだろうし間違いなく面倒事になるので向こうから関わってこない限りは放置させてもらおう。

 ただ、俺がそんなことをしないでも十字軍辺りが来て同じようなことが起きそうな気がするんだがな。そうなったら多少の手伝いはしてやるつもりだ。なにしろ相手が十字軍となれば放置しておいた場合こっちにまで被害が来ることは間違いない。某ナイトの言葉を借りるならば『確定的に明らか』と言う奴だ。放置しておくより叩ける時に叩いておくのが一番だろう。

 

 そしてケルト神話では、そもそも創世神話が伝えられていない。原因はローマ帝国の侵略とキリスト教への改宗強制によるもので、俺が知っているケルト神話はその大部分が削がれて消えてしまった物でもある。

 ちなみに有名なアーサー王物語に出てくるエクスカリバーはこのケルト神話の英雄であるフェルグスの持つカラドボルグを元にしている、あるいはそのものを使っていると言われている。エクスカリバーではなく、アーサー王が王になる時に抜いたとされるカリバーン、あるいはコールブランドがカラドボルグだとも言われているが、カラドボルグとコールブランドの二つの剣がどちらも王が使った剣であると言う点で共通しているので王を選定するにはぴったりだと言える。

 

 まあ要するに、ギリシャ神話は古代ヨーロッパにおける宗教の中では確立された時期が非常に速い部類にある物だと言う確信が持てる、と言うことだ。ちなみにギリシャ神話とケルト神話には間接的にだが繫がりがあるので、もしもケルト神話が確立しているのなら一度見に行ってみるとしようか。


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