進化。退化。繁栄。衰退。繁殖。絶滅。繰り返される命の連なり。産まれ、育ち、食い、食われ、生き、死に、いつかの様に地球は生命で満たされた。
大量絶滅と、それを生き延びることができた種の繁栄。それは既に既定の路線であり、同時にただ眺めるだけでもそれなりに楽しめる神々のアトラクションのようなものでもあった。
畑で取れた硬いトウモロコシを炒めて弾けさせたポップコーンをつまみながら、砂糖水に二酸化炭素を溶け込ませた物を飲む。残念ながらコーラのような風味は無いが、これもそれなりに神々の間では好評だ。まさか炭酸の神とか言う権能まであるとは思わなくて驚愕してしまったがな。
……もうちょっと味に深みが欲しいんだよな。炭酸とか作るにしてもそう言った上はいくらでもあるわけだし。
まるで映画を楽しむかのように長い時は進んでいく。様々なことがあったし、面倒なこともあった。失敗もしたし、成功もしたし、もう本当に色々とやり過ぎなんじゃないかと言うこともやった。
例えば、ゼウスの浮気によってヘラが怒ってゼウスと閨に半月ほど籠っていたことがあった。俺はちょくちょく料理を運んで休憩させてやっていたんだが、二柱が出てきた時にはゼウスは本格的にガリガリに痩せ細り、ヘラも少し腰のあたりが辛そうではあったがゼウスとは逆に満たされたと言う顔をしていた。何があったのかは察したが、自業自得と言うものだろう。神でも腹上死することがあるのかどうか知らないが、まあ残念なことになっている。具体的にはカレー味のポップコーンを貪りつくし、炒めていたフライパンからカレーの匂いがすると顔を突っ込んで舐めたせいで舌に火傷をしたギリシャ神話の二代目海神くらい残念だ。
ちなみにだが、ギリシャ神話において初代の海神はポントスと言う名前であり、二代目の名前はポセイドンだ。今ではポントスは表に出ない深海の支配をしており、ある程度表層部分の海はポセイドンが治めると言う分担作業をしている。深海は静かで大きな事件が起こるようなことは早々なく、気楽に治められていいと言う理由だったが、ポントスはきっと枯れているに違いない。
……ちなみにだが、ギリシャ神話の世界観では大地は平面であり、海の果てでは水が常に流れ落ちていると言う描写がなされているが、それはあくまでも人間がそう言うものだろうと予想して書き上げた世界の図であるためこの大地は球形である。
つまり、世界に西の果てなど存在せず、西の果てが存在しない以上そこで天球を支えるアトラスはおらず、むしろアトラスはその体格から宴会芸として行う手品がバレバレすぎて大笑いされつつ最後に行う手品では『なんで他のでもそうやって上手くやらなかったの』と聞きたくなるような芸術的とも思える技術を見せつける不思議なネタを持ちネタとしている気の良い神だ。体格が大きすぎるために用意が色々と大変だが、だいぶ前からまともな人間程度……いや、まともな人間の中でもかなり大きい部類に入るだろうが、ともかく人間として存在しないことは無いだろうとギリギリ思えるくらいの身長になってからはよく宴にも参加している。
いつになれば人間が産まれるのかはわからないし、わざわざ未来を読んで楽しみを減らすようなことはしない。代わりに、それまでの過程をのんびりと楽しませてもらう事にする。
最近は権能の増加も緩やかになってきていて、そろそろ拡大解釈のネタも尽きてきた。文字の神としての権能や文化の神としての権能をひっくり返すと文字通りに世界を滅亡させることができてしまうと言うことが分かってから安易に試してみると言うことができなくなったし、実験するにもちゃんとある程度の予想を立ててからじゃないと最悪神殺しすらできるようになる可能性がある権能すら持っているのだから気軽に試せない。
それに関しては、薬を作る権能をひっくり返して毒を作る権能にして、上手くいけば神をも殺せる毒を作ってみたらそれを飲んだ蛇が奇妙な変化をして凄まじいことになったりしたし、予想ができてもそこから派生した出来事に関しての予想まではできないので本当に注意が必要だ。