俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、時を進める

 

 空間と時間には密接な関係があると言うことは、2016年代以降ならば小学生でも知っていることだろう。算数で習ったり、漫画で出てきたり、様々な形でそう言ったことに触れることができるはずだ。

 それを初めて知った時には何の話か分からなくなったかもしれない。時間と空間。その二つに共通するものなんて『間』の字しかないとすら思う者もいる。漢字が同じと言うだけで、他には何の関わりもない。そう言うものだと認識してしまうものは、後々に詳しい説明を聞いた時に納得するまでに少し時間がかかってしまうものだ。

 俺もそうだった。空間と時間。その二つに関わりがあることを知っていたとしても片方を少しだけ扱えたところでもう片方に繋げることなど無理だと勝手に考えていた。

 

 だが、逆に考えてみればいい。家庭とは、父と母、そして子による人間社会における社会の最低単位でもあるが、同時に家を中心とする場所、つまり空間そのものを指すことでもある。だからこそ俺は家の敷地と外の境界に結界を張ることができるのだし、家の中と言う小さな空間においては俺は様々なことをすることができる。

 では、家庭と言う僅かな空間そのものを、大きさはそのまま(・・・・・・・・)縮めることができたら(・・・・・・・・・・)どうなるか(・・・・・)。それはつまり空間の圧縮であり、時間の短縮。本来一の距離を移動するのにかかる時間が一であるところを、一の空間を移動しているのにも関わらず、速度も変えず、時の流れを一よりも短くすることができる。

 つまり、俺は極僅かではあるが時間を扱うことができる。同時に、空間を捻じ曲げて広げることができるわけだ。

 

 そしてもう一つの発見。カオスと言う空間を司る神と、クロノスと言う時間を司る神が存在していることは有名だが、時間ではなく時刻を司る神としてカイロスと言う神がいることはあまり知られていない。クロノスの司る時間とはカオスの司る空間と対になって世界を成立させるものであり、同時に常に流れていく時のある一点から別の一点までの流れの事を言う。カイロスの司る時刻は、そうして流れていく時の中のほんの一点、無限に連続するたった一点だけを司る。言ってしまえば、空間を広げたり縮めたりすることはカオスに。時間を進めたり巻き戻したりはクロノスに。そして時間を止める事に関してはカイロスにやってもらうのが一番だと言う訳だ。

 さて、ここでもう一つ。空間を数字で表すにはいくつかの方法があるわけだが、ユークリッド空間だとかリーマン空間だとか言われてもわからないものが多いだろうし、俺もあまり詳しく覚えていないから割愛させてもらうが、カオスが司る空間、そしてクロノスが司る時間にはある一部が欠落している。アニメとかを見ていれば時々出てくるのだが、流石にそう言った物は言語化されていないどころかそもそもこの現実世界、俺がまだ人間として生きていた頃の科学では一度も観測されたことのない物だ。

 それは、虚数空間。そしてクロノスの司っていない時間とその境界だ。

 虚数空間に関しては、まあ現実的には存在できないが理論的には存在する空間であり、普通の空間から接続する方法は無いと思ってもらっていい。そしてクロノスの支配していない時間とその境界と言うのは、クロノスと言う神が産まれるより以前の時間と、クロノスと言う神が産まれた時間との境界面。カオスと言う神が存在したと同時にカオスから生まれた神で、しかし時と言う存在を認知することのできない存在であったからこそ多くの神がその存在を全く知らない神である彼の産まれる以前に、ほんの僅かではあるが時間が存在するはずなのだ。

 だから俺は、その境界を司ることにした。元から家庭とその外側、国家とその外側などの境界と言うものに注意してきたからか、それなりに難しくはあったができない物ではなかった。そして同時に、俺は存在する空間と存在しない空間を境界で繋げてやることができるようになってしまった。

 確か、こんなことができる妖怪がどこかの作品に居たような気もするが、もう気にしないことにする。気にしたところでできると言う事実は変わらないのだから、気にするだけ無駄と言うものだ。

 

 


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