恐竜が滅びた大きな原因は、氷河期によって起きた大寒波と言われている。寒波によって本来なら大量に生育していた植物が失われ、植物を食べて生きていた草食竜が死に絶え、肉食竜も飢えて死に、地上には恐竜と後に呼ばれることとなる生物のほどんどが居なくなった。
居るのは、小さな哺乳類や爬虫類のような環境適応能力の高い種。それと、巨大な群れを率いていた幻獣と呼ばれる類の種のみだった。まあ、ごく一部の龍の中には深海に潜って冷気から身を守ったり、元から空高くの寒い場所を飛び回っていたことで寒冷に耐性が付いていた種はそこまで被害を受けていなかったりもするが、殆どの種は死に絶えてしまっている。
そして、原因の原因。時期としての氷河期だけではなく、その氷河期がより酷くなった理由。それは未来においては巨大な隕石の直撃によって起きた地殻変動と粉砕された地殻の霧によって太陽光からの熱を受け取ることができず、氷河期がより酷く、より長くなったと言われている。
それは、ある意味では正しい。実際に隕石のようなものが地表に衝突し、地上の土が噴き上がって霧状になったせいで断熱効果を強く持ってしまい、地球の生態系は無茶苦茶なことになってしまった。
「……で、何か申し開きがあるなら聞くぞ」
聞くだけな。聞いたからと言って処理が変わるわけじゃないが、もしかしたらどちらかが完全に悪くてもう片方がなんとかそれを止めようとしていたんだとすれば、止めようとしていた方には情状酌量の余地くらいはあるだろう。
まあ、無いのは知っているが。
「まずはポセイドン。なんでこんなことをした? 言え」
「ゼウスが俺の分のカレーを食べたのが悪い。ヒートアップしすぎて地球がやばくなったのは俺も悪いが原因についてはゼウスにあると言わせてもらおう」
「そうか。まあ安心しろ。ゼウスについては向こう三十年貞操帯をつけてそのカギをヘラに管理させることになってるからな」
ちなみにアダマス製。だからいくら雷ぶち込んでも溶けない壊れない。鎌なら何とかなるかもしれないが、失敗したら自分のを切り落とすことになる上に傷つけてしまったら自分で何とかしない限り治らない。まあ、代わりに金的に対しての耐性を得ることができるが、金的されたらされたでやばいんだがな。内側の針が刺さるようになっているし。
「で、ゼウス。言いたいことは?」
「儂は主神じゃぞ」
「今までのことを考えると主神を去勢すると新しく主神になれるみたいなんだが、ポセイドン辺りに譲ってみる気は無いか?」
「ごめんなさい儂が悪かったです何でもするから去勢は勘弁してください」
まあ、こいつはあと三十年はそう言った行為ができないようになっているから今去勢してしまうと罰が罰じゃなくなるんだよな。
ちなみに、ヘラに渡した鍵は本物だが、貞操帯の鍵穴の方に仕込みをしておいたのでヘラが持っていないと開けられなかったりする。俺でも開けられないことは無いし、やろうとすればピッキングで開けられる程度のちゃちな鍵だが、今の神に鍵開けの神や盗賊の神は存在しな―――あ、うん、俺だわ、鍵開けの神。今なった。盗賊の神にはなってないが、今回のことを考えると盗賊の神はゼウスが相応しいような気がするな。天空と盗賊の神、ゼウス。主神にはさせてられない権能だな。
まあ、懲りずに『何でもする』と言ってくれたことだし、今回の罰もしっかり受けてもらう事にしようか。なぁに、神の精神は人間のそれに比べてよほど強靭であることが多い。しっかりできるかどうかはともかく、少なくとも気を強く持っていれば壊れる事だけは無いだろうさ。人間だって三十年以上精を漏らさないで生きていられる存在がいるんだし、大丈夫大丈夫。
……まあそいつらは仙人だとか呼ばれてる類いの『世界に自分一人きりだったとしても平然と何も変わることなく生きて行くことができる精神破綻者』だったりするんだが、問題ない。精神破綻者と言う点では神の精神も似たようなものだ。どちらかと言うと精神破綻者と言うより性格破綻者と言う言葉の方が合っている気もするけどな。