これはあくまで人から聞いた話であり、必ずしも俺自身の意見であるわけではないと言うことを先に伝えておくとしよう。
この世界には順番と言うものがある。例えば俺が今世に生まれ変わったヘスティアの存在するギリシャ神話において、初めに存在していたのは何も存在しないという概念のような物のみだったと言われている。空間すら存在せず、時間の流れもなく、ただ何も存在しないと言う事実のみ。
しかし、ある日そこにひょっこりと突然存在が現れた。正確には存在したのかどうかもわからない。なぜならその存在は『空隙』と言う、いわゆる空間そのものと言う存在だからだ。
今まで何にも存在することのなかった世界に何かが存在し始めたことで、世界は急速に新たな存在を生み出していく。
先に現れた空隙そのものが世界に初めて生まれた神であり、原初神とも呼ばれることとなったカオスと呼ばれる無限の神。何も存在しない、果てすら存在しない世界に突如現れたそれは、文字通りの意味で果てのない世界の全てを覆いつくす存在となった。
そしてそのカオスの中に、新たに
そして地母神ガイアは自身の力のみで天神ウラノス、海神ポントス、暗黒神エレボスを産み、原愛の神エロスの働きの下で天空の神ウラノスと婚姻を結び、夫婦となってさらに多くの子を成した。
ガイアがウラノスとの間に成した子は、オケアノス、コイオス、クレイオス、ヒュペリーオーン、イーアペトス、クロノス、レアー、テイアー、テミス、ムネーモシュネー、ポイベー、テーテュースの十二柱。総じてティターン十二神と呼び、それぞれが大きな力を保有していた。
……ここまでの事でわかるだろうが、ティターン十二神の中にはヘスティアの父親であるクロノスがおり、さらに
そんな中でわかるのは、神々の王が移り変わっていく中で、一番初めはともかくとして主神が変わる時には常に当時の主神の末の息子がその座に座っていると言うことである。
つまり、このギリシャ神話の中では末の息子になることが主神に成り代わるために必要なことの一つだと言えよう。順番が大切とはつまりそういう事でもある。
しかし、兄弟、あるいは姉妹であると言うことは、ギリシャ神話の中では特に珍しいことでもない。なにしろギリシャ神話における神々の中で血縁のない神など文字通りに数えるほどしか存在しないのだから。近親婚を平然と繰り返すし、浮気はするし、本当にギリシャ神話の神々と言うのは人間臭すぎるほどに人間臭い。
だが、だからこそ順番が大切と言う事にもなるのだ。
父としての役割は、多くが子供たちの目標となることだ。
そう聞かれた時、とある男はこう答えたと言う。
「弟や妹の恥ずかしい黒歴史を集めて脅迫するために兄や姉と言うのは先に産まれてくるんだよ」
と。これもまた何ともクズの言う事らしいが、ある意味では間違ってはいないと思う。完全に正しいと言う気もないが、ある意味でそれは実に正しい。早く産まれれば確かにそういう事だってできてしまう。早く産まれると言うことは得なことだが、同時に一つの責任を負わなければいけなくなる。
「兄貴と言うのは、普段弟や妹達を弄っていい代わりに、何かあった時に弟や妹を守ってやらなくちゃならない」
……つまり、私が何を言いたいのかと言うと、だ。
「ぅああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あーはいはいよしよしよしよしいい子だから泣き止んでおくれデメテル。悪いけど俺は乳も出なけりゃ食事も作れないんだよ。ここ生き物は何もないから材料もないしな」
……経験皆無で殆ど成長できないまま新しく腹の中に送り込まれてきてしまった妹のおしめでも替えてあやしてやればそういったのはもう弱みカウントにしてもいいよな? と言うことだ。
神だから食事はいらないにしても、流石にこれは酷い。酷すぎる。俺が
……とりあえず、鉄を集めてほっそい糸にして布編んでおんぶ紐でも作るかな。金属系統しか材料が無いのが本当に嫌になるね。クソオヤジ殺す。ケツの穴に暴走寸前の小型太陽炉突っ込んでカエル爆竹みたいにしてやる。俺は執念深いんだ。覚えてろ? やると言ったらやるぞ? 俺が出て行った後に原形留めてたらの話だがな。