俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、世話をする

 

 適正と言うものは、時に人を苦しめる。自身の好みと適性が一致するようなことはとても少なく、それ故に求めた結果が付いてこないと言うことなど掃いて捨てるほどにありふれている。

 例えば、もしもヘファイストスが農作をやりたいと言い出したとしよう。産まれた時に元々持っていた権能を考えれば、ヘファイストスに向いているのは間違いなく鍛冶であると言ったが、逆に農作には全くと言っていいほどに向いていない。

 火山と雷。方や高熱に侵され形を崩すところまでいった溶岩を吐き出す灼熱の大地。方や膨大なエネルギーを孕んだ天空の火。どちらも植物を育てるのに全く向いていないどころか邪魔にしかならない権能と言える。俺の場合は権能ではなく性質から属性を当てはめてでっち上げたが、ヘファイストスにそれを実行させるとヘファイストスと言う神の存在が怪しくなってくるだろう。火山の権能から火の性質を抜いて、山から来る土の性質を意識的に強化してやればできなくはないだろうし、山と言うのは禿山でもない限り植物や動物の糞などで肥えた土があり、ある程度の高さまでは植物の育成にはそれなりに優れた性質を持っているが……火山は良くない。ほんの僅かな火の性質が植物を糧に燃え盛り、いつの間にやら全体が燃えてしまうことになるだろうからだ。いくら育てようとしても、育ち切る前にすべて燃え尽きてしまう。それでは俺でもどうしようもない。

 まあ、神としての権能を一切使わないならできなくはないだろうが、文字通りに人間が行うそれと全く同じになってしまうためお勧めはしない。俺は神の権能を使ってるから無茶が効くが、そう言った人間から見て反則と言えるものが無い農作業はやっていないからな。魔術で代用できるが。

 

 そう言う訳で、巨人達には本人の意思と適性を見て開拓及び農作業組と鍛冶手伝い組に分かれてもらう事にした。開拓が必要な理由は……まあ、人数が増えれば食べる量が増えるため今までの畑では面積が足りなくなってしまうからだ。

 ガイアとウラノスの血を引く巨人達は、大地と天空の権能を得る下地を持っている。しかし巨人はあくまで人間に近いもの。いくら神の血を引いていたとて、神ではない。神でないからこそ権能を得ることはできない。もしも権能を得ることができたとすれば、それは神々に存在を認められ、神として神界に招かれた時だろう。

 神の権能が欲しいと言われてもそれを俺が渡してやることはできない。だから、俺はこいつらがせめて飢えで苦しむことのないように、何かを食べたいとふと思った時に最低限の物だけはその手元にあるように、畑の作り方と維持の仕方を教えるとしよう。

 鍛冶の方は、手に職をつけておけばくいっぱぐれることは無いと言うのと、ちょうど鍛冶の助手をつけてやりたいと思っていたからちょうどいいと言う二つの理由があってのことだ。向き不向きで言えば、植物に対して燃料として燃え盛る火と、切り倒し、成長を阻害する金属の属性を強く持っているものはあまり農作業に向かない。ただ、金属の中にはほんの少量ならばむしろ植物の生育を促進する物もあるため、地の属性と地から僅かに生まれる金の属性ならば問題なく農作に励むことができるだろう。

 

 ……しかし、こいつらを全員食わせていくとなると相当な広さの農園が必要になってくる。地上でそんなことをしていては色々と面倒だし、何か良い場所は無いだろうか。

 具体的には、植物が生育できる大地があって、大気があって、勝手に開墾しても誰にも責められる事のない、広大な土地。そんな場所かあればすぐさまそこを手に入れに行くんだがなぁ……。

 

 ……ん? 大地と、大気があって、開墾しても問題ない場所……。

 

 あるじゃん。

 


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