俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、発見する

 

 予想外の事態と言うものは得てして知らないうちに進行しているものだ。むしろ、知らないうちに進行しているからこそ予想外の事態につながると言ってもいい。

 予想外のことが予想しているうちに入ってこなければそれは予想には関わらないと言える。しかし、予想外の動きが広がって予想した範疇に入ってくるからこそ、予想は崩れて予想外が代わりに見えてくる。

 それは視野を広げてやればある程度予想外が予想に入ってきても落ち着いて行動することができるが、時にはいくら視野を広げても突然に現れる予想外と言うものも存在する。具体的には、二次元的に物を見ていたら実は三次元の方にも軸があって下から予想外が現れて塗り替えられる、とかな。

 

「で、お前ら誰」

「お、おでたつか?」

「そう、おめーら」

 

 数日ほどヘファイストスに鍛冶の基礎の基礎だけを叩きこんで寝かせてから畑に行くと、なんか居た。ティターン神族と同等かそれ以上に大きく見えるそいつらは……恐らくギガース、あるいは複数形にしてギガンテスと呼ばれる類の奴だろうと思われる。日本語的に言うと巨人あるいは巨人族だな。

 確か、こいつらギガンテスはティタノマキアが起きてゼウスに地底から引っ張り出されるまで地の底に存在するタルタロスに封じられていたはずだが……どうしてこんなところにいる? あと、言葉が訛りすぎていて聞き取りづらい。タルタロスに長いこと封印されていたのだろうから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが、聞き取りにくい物は聞き取りにくい。

 だが、そんな聞き取りにくい言葉をなんとか聞き取ると、次のことがわかった。

 

 元々こいつらはタルタロスで暮らしていたらしい。太陽も無く、そんな中で植物が育つわけもなく、植物がなければ動物もいるはずがなく、真っ暗な中で暮らしていたそうだ。

 神の血を引いているこいつらギガンテスはそんな劣悪な環境下でも何とか生き抜き、数を増やしていったそうなんだが……最近、とある神にタルタロスから出してもらったそうだ。

 その神の名は、ガイア。何でもゼウスが新しく主神となった時に半ば酔い潰れたゼウスを相手にギガンテスたちをタルタロスから出すと言う話をして許可を得たそうだ。俺はそんな話まったく聞いていないんだが、まあゼウスがそうすると決めた事なら別にどうでもいい。後悔するかもしれんがな。

 で、出てきたはいいものの何をどうすればいいのかわからず途方に暮れていたところ、ガイアに言われて俺のところにまで来たらしい。確かギガンテスってのはガイアとウラノスの血液でできた子供のはずだから、ガイアが気に掛ける理由もわからなくはないんだが……なんで俺に押し付けてくるのかね。自分で救ったのなら自分で最後まで面倒見てやれと言ってやりたくなるが、それも俺の我儘なんだろうか。

 

 ……まあ、とりあえずこいつらはもう家庭がある。親がいて、子がいて、妻や夫がいて、一つの社会を構築できている。だったら俺はこいつらに対して孤児の庇護者としての顔ではなく、家庭や国家など、つまり社会の守護者としての顔で対応するとしようか。

 

「……まあ、俺は別にお前らが何しようと構わんが……ここに住むならそれなりの対価は貰うぞ? ここは俺の農園だからな」

「のーえん? って、なんだべ?」

「食える物を自然に頼るのではなく、自分で作る場所、だな。意訳だが。ここらに生えているのは全部俺が食べることのできる物だ。だから、ここの物は勝手に持って行かれると困る。俺以外にもここの食材を食べる奴はいるしな」

「だども、おでたつでぎるこどなんでねぇし、なぬすりゃえぇがもわがらんのす」

 

 ……なら、とりあえずしばらくはここで面倒を見つつ適正やら好みやらを把握してそれに合った仕事を割り振っていくとするかね。その前にある程度小さくなってもらわないと食事量とかが大変だが。

 


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