俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、相談される

 

 以前にも言った気がするが、子供を作ると言うのは大変なことだ。特に母親となる者からすれば、自身の体内に一つの命を宿したままそれなりに長い時間を過ごさなければならない。それは非常に労力のかかることであり、同時に新たな命を産み出すためには絶対的に必要なことでもある。

 それには愛情が必要だ。けして俺がロマンチストだからそんなことを言っているわけではなく、単に愛情を持っていなければそんな苦行をしているうちに身体も心も参ってしまう。子供と言うのはある種の宝だ。子供が居なければその生物は減っていくのみ。そうでないのは一部の神だけだと言える。

 不老。不死。そんな力を持つ存在の多くは神か、あるいは神の血を引く存在である。怪物の中には神の血を殆ど引いていないにもかかわらず不死に限りなく近い存在もいるが、しかしそう言った存在は不死であり、不老であっても不滅ではない。やはり不死不老にして不滅の存在と言えば、神しかいない。

 ギリシャ神話の神々は全てが不死にして不滅の存在だ。つまり、封印して表舞台に出ることを禁じることはできても、その存在そのものを消滅させることはとてもとてもできはしないと言うことだ。子供を作れば作るだけ増える。それが神と言う存在なのだ。

 

「……で、もう一度言ってくれ。―――なんだと?」

 

 俺の前にはゼウスとヘラ。二柱はどうにも後ろめたそうな表情のまま俺を見ている。そして、代表してゼウスがもう一度口を開いた。

 

「……宴会で酒に酔って、つい勢いで……子供、作った」

「それはいい。重要なのはその次だ」

「…………育て方が、わからないから……手伝いが欲しい」

「一つ飛んだな。その前だ」

「………………堕ろすための方法を―――」

 

 ゼウスの首から上が消し飛んだ。否、正確には消し飛んだとしか見えないほどの速度で拳に殴り飛ばされ、文字通りに頬の肉が弾け飛ぶ。一部に血が飛び、大地が赤く染め変えられるが、しかしゼウスはその両の足で未だ立っていた。

 

「はっはっはっはっは。まさかそれを俺に聞いてくるとは―――実に良い度胸をしているじゃねえか。なぁ?」

 

 いやいやまったく、確かに俺はこいつにまだそっち方面の教育はしていなかった。だがもうこいつには妻がいたし、子供はできていないにしろすることもしていたはずだ。本人から聞いたのだから間違いない。

 しかし、孤児の守護者たる俺に向かって堕胎の方法を聞いてくるとは、何とも度胸のある話だ。

 

「……堕胎させる方法は確かにある。色々と薬を作ってきたし、そのせいで権能も得た。自分で作った薬も、そうでない物も、一目見ればおよそどんな効果があるかはわかるし、自分がこれから作りたい薬を思い浮かべればどんな材料が必要になるかもわかる。だが……堕ろさせるつもりは欠片も無い」

「……姉さんなら、きっとそう言うと思ってた」

「極当然の話だな。想像できていたなら止めろと言いたいところだが……何故だ?」

「酔っててうまく動けなかったし、判断もできなかった。私には今のところ、ゼウス相手に男としての魅力は感じていないし、愛情も持っていない。だから、きっと私は姉さんが私たちにしてくれたようにこの子に愛情をもって接してあげることはできない。産まれてきて不幸になるくらいなら、産まれてこない方が良いかもしれないとほんの少し思ってしまったから……相談しに来た」

「……成程。理解はした」

 

 理解はした。理解『は』、な。

 だが、全く欠片もこれっぽっちも納得はできんな。やってることはクロノスのそれよりよほどどうかと思うがね。

 

「まあ、話は分かった。だがさっきも言った通り、堕ろさせるつもりは無い。薬はやらないし、ゼウスに暴力を振るわせて無理やり流産させると言う方法を取らせるつもりもない」

「そんなつもりは無い」

「そう信じるよ。さて、そこで代替案だが―――」

 

 その子供、俺に寄越せ。

 




 
 はいこの展開予想してた人挙手~
 居たらすごいと本気で思います。

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