俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、押し付ける

 

 契約と言うものは、時に理不尽な物である。本人にはそんなつもりは無かったと言うものでも、一度契約として結ばれ、効力を持ってしまった物を撤回させるのは物によっては非常に難しい。それが法に則って作られた物ならばなおさらのことだ。誰もがその法の効力の下に生き、その法が当然の物として存在している中で、効力を有する契約が結ばれたにもかかわらずそれを無視していたならば、よほどのことが無い限りその契約を無視した存在はそうした社会からはじき出されてしまうものだ。

 そう言った法がしっかりと作られていなかった頃では、力さえあれば契約などはいくらでも破ることができた。当然、破る度にそもそも契約を結んで関わり合いになろうとする者は減っていくのだが、それでも力さえあればどうとでもなる範囲。前世では武器が発達し、個々の能力における殺傷能力の差が縮めやすくなったことから数こそが力となり、そう言った力によって契約が一方的に破棄されることこそ減ってきていたが、それでも権力次第で破棄したと言う事実を……否、契約の内容そのものを書き換えてしまうと言う事すらよくあることとなっている。

 神代における契約でも同じことが言える。契約を守るのは、契約を守らせようとする存在が契約している者よりも強いからこそ契約による拘束力が産まれるのだ。では、今回の場合。成人し、主神と呼ばれるに相応しいだけの実力を有しているゼウスが、姉とは言え畑違いの結婚と言う権能しか保有していないヘラが証神(しょうにん)となる契約など、態々守ろうとするだろうか? それも、ギリシャ神話の神格と言うことで相手は相当奔放な性格をしている。力も強い。ゼウスが力任せにそう言ったことをすると言うならば、いったい誰がそれを止める事ができるだろうか。

 

「解答.俺」

「がっはぁ……ば、かな……」

 

 対消滅炉と言う炉がある。それは内側に取り込んだ物質を完全にエネルギーへと変えることができる炉で、最大効率の縮退炉と同じ効率を誇る、人間だった頃の俺の時代では理論的に可能であると言うだけで実際には技術が追い付いていなかったために使われていない炉だ。

 これの良いところは、質量を純粋なエネルギーに変えると言うところ。つまり、敵を燃料に質量分のエネルギーを放出することができると言うことだ。

 

 ……さて、ここで古代のギリシアにおける世界観を説明しよう。

 世界とは、大地、海、空を含むものであり、天界と冥界、そして冥獄とも呼ばれるタルタロス等から構成されている。

 しかし、ギリシャ神話的に世界と言えば、神々の住むオリュンポス等を含めた神界と、人間や数多くの生物の生きる人界、そして海と星々の浮かぶ空を指し、同時に空とは一枚の天盤に幾つも小さな星がくっついているような物だと思われていた。

 その空の果ては、大地からタルタロスの底に着くまでと同じ距離と言われ、銅の板を九日間落とし続けた距離と言われている。

 

 つまり、世界を焼き払ったゼウスの雷やテュポーンの炎は、それだけの範囲を焼き焦がす程度のエネルギーをもってすれば相殺できるわけだ。

 そんなエネルギーをどこから持ってくるか? それは実に簡単だ。

 まず、雷とは電子の放出現象だ。マイナスの電荷を持った電子が、プラスの電荷を持った別の何かに向けて走ることで電気的平衡をとろうとする自然現象なのだ。

 つまり、対象がマイナスの電荷を帯びていれば雷は自分から避けるように走り抜けていくし、プラスの電荷を持つものが近くにあればそちらに向けて誘導される。また、電子とは物質であるがゆえに質量を持つ。

 そこで自身にマイナスの電荷を帯びさせながらプラスの電荷を縮退炉なり電子炉なりに帯びさせれば、相手の雷は勝手に燃料になってくれるわけだ。しかも電気のな。

 

 そうなれば、雷撃を操る天空神はその雷撃を無力化されて生身での戦闘を余儀なくされるが、こっちは電子炉や縮退炉、対消滅炉からのバックアップを受けて強化された状態で望むことができる。ついでに言えば相手は成長して力は強くなったものの経験は全く足りていない、いわば逆コナ○君状態と言うわけだ。

 そんな状態でぶつかり合えばどうなるかの答えが、今の俺とゼウスの状態と言うわけだ。

 

 さて、こいつには約束通りに『何でも』やってもらうとしよう。具体的には主神の座についてもらってから仕事をしっかりとやらせる。ギリシャ神話の神に仕事らしい仕事は無いから、そこまで忙しくはならないだろうがな。

 

 


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