俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、家族会議

 

「来たわよ~……誰?」

「来た……誰?」

「来たよ……誰?」

「アァァァァァネキィィィィィィ!かるぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇヲォォォォォォォクレェェェェェェェェェ!」

 

 約一名以外がゼウスが誰だかわかっていないようだった。残りの約一名はそもそも視界に入ってすらいなかった、あるいは視界に入っていたかもしれないが認識を全くしていなかったので無効票扱いとするが、まあ、そりゃあ実際に顔見知りでもないしわからないのも無理はない。

 

「これでも食ってろ」

「カレェっ!匂いがするぅ……カレェェェェっ!うめぇ!カレーゼリーうめぇ!」

「ほんとに食いやがったよ罰ゲームのつもりだったのに」

 

 せめて一瞬くらい躊躇いを見せろ。ゼウスとか引いてんじゃねえか。

 

「あ、ちなみにこの見た目おっさんはゼウスな。俺らの弟だそうだ」

「へー……あ、私デメテル。よろしくね~」

「……ヘラ。よろしく」

「ハデスだよ。よろしくね」

「冷えたカレーもうめぇぇぇぇ!!」

「……そこのカレー馬鹿はポセイドン。僕の弟で、君のすぐ上のお兄さんだよ」

「……あ、うむ、ゼウスだ」

 

 ちょうど自己紹介も終わったところだし飯にしよう。……しかし、ゼウスとクロノス(クソオヤジ)だけおっさんで他の奴等が全員若い見た目だと、一番歳食ってるのがゼウスかクロノス(クソオヤジ)のどちらかに見えるな。実際一番歳食ってんのは……確か、ウラノスとガイアの間にできた子供の末っ子がクロノス(クソオヤジ)だったはずだから、レアーが一番歳上なのか?

 まあ、どうでもいいこった。とりあえず食うとしようか。

 

「……なんだこの気味の悪いものは? 食物なのか?」

「おいゼウス。次カレーを馬鹿にするような言葉をその口から垂れ流してみろ。その口を三叉矛でかっ捌くぞ」

「ゼウスは面白いことを言うね。石榴食べる?」

「……」

「あははははは───餓えに苦しめ」

「怖っ!? ちょ、疑問を呈しただけでなんでそこまで!?」

「そうだぞ。ゼウスはただ聞いただけだろう。と言うか確かポセイドンにはそれ以上の事を言われたような気がするんだがな」

 

 一応止めると食卓の空気はいつもと変わらない物になる。しかし、どうにもゼウスは圧力を感じているようでそれを誤魔化すようにカレーを一口。

 

「───なんだ、これは……ッ!?」

 

 ───その瞬間、ゼウスの脳裏を電流が走り抜けた。

 

 舌に走る辛味。濃厚な野菜の風味。米の甘味。全てが混然一体となってゼウスの舌を直撃した。

 

 ゼウスは言葉を発することもなくひたすらに匙を動かし、自身の口にカレーを運び続ける。その姿を周りからにやにやと眺められていることにも気付かず、ひたすらにがつがつと、まるで砂漠で遭難し、水も食料も無くしてから数日間ずっと彷徨い続けていた旅人が偶然見つけたオアシスで脇目も降らず水を口にするように、他の一切に視線を向けようとせず一心不乱にカレーを貪った。

 

 ゼウスの意識が戻ったのは、自分の皿からカレーが姿を消してから。まるで舐めるように皿の上のカレーを綺麗に平らげてしまったゼウスが顔を上げると、そこにはにやにやと自分を見ながらカレーを頬張る顔が並んでいた。

 

「……なんだ」

「得体の知れないものは美味いか?」

「いやいや、得体の知れないものが美味しいわけないって」

「なるほど、心情的に得体の知れないものは食べたくないよな」

「そうそう、得体の知れないものなんて食べたがる奴いないって」

「「そう言うわけでお代わりは代わりに食べといてやる」」

「ごめんなさい儂が悪かったですお代わりさせてください何でもします」

 

 言質とった。神相手の約束を破れると思うなよ? しかも結婚と言う限定的な形ではあるが契約の神の目の前での出来事だ。破るならゼウスは間違いなく永遠に結婚相手が見つからなくなるだろう。

 主神が結婚できない神話……それも面白そうだが、結婚しなくとも子供は作るのがギリシャ神話の神々なんだよな。面倒なことに。

 

 まあ、何でもするといっているんだし、ティターン神族と争いになるかどうかは怪しいが主神になってもらおうか。仕事はしっかりしてもらうぞ?

 

 


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