俺は竈の女神様   作:真暇 日間

37 / 330
竈の女神、弟と会う

 

 いつも通りに飯を作っていたら、突然見知らぬ男が現れた。

 

「……誰だあんた」

「儂か? 儂はゼウスと言う。この辺りにクロノスがいると聞いてきたのじゃが……」

「……ゼウス? マジか。なるほど。わかった、ちょっと待ってろ」

 

 俺はその場で振り向いて、レアーに世話を焼かれているのを大人しく受け入れている二柱に視線を向ける。

 

「おーい、おふくろさん!ゼウスが来てクロノス(クソオヤジ)出せってよ!」

「説明よろしくー!」

「おいコルァ!子供にそんな面倒事を押し付けんのは母親としてどうなんだオイ!」

「ヘスティアならできるわ!」

「できるだろうけどめんどくせえって言ってんだよ!」

「待った。少し待ってくれ。聞きたいことができた……ヘスティア?」

「あん? なんだよ」

「……もしや、私の姉か?」

「その通りだがそれがどうした」

 

 ゼウスは俺の言葉を聞いて固まってしまった。面倒臭いのでとりあえず家に上げて、そのままリビングでいちゃついているおふくろさんとクロノス(クソオヤジ)の前に放置。俺は飯を作るのを再開することにした。今日は月に一度のカレーの日。今日のために世界の様々な所で思い思いに過ごしている兄弟たちが全員集まることになるのだが、まさかゼウスがこの日に来るとは思ってもみなかった。

 少々面倒だが追加で材料を用意し、作り始める。色々と手間ではあるが、そんな手間もまあ悪くは無い。説明? 固まってる相手に何を説明しろと?

 

 と、そこでゼウスが再起動した。

 

「どういう状況だ!? まるで意味が分からんぞ!? 兄姉達を吐き出させるためにネクタルまで用意してきたと言うのに何がどうしてこのような事態に!?」

「あ、俺が内側からクロノス(クソオヤジ)の腹をぶち抜いてついでに股間も吹き飛ばしておいた。戦闘意欲とか全部失ってるから、主神になりたいならなれば?」

「訳が分からんぞ!?」

 

 やれやれ、五月蠅い奴だ。いったい誰に似たのやら。

 それに、訳がわからないからと言って現実に起きていることが変わる訳も無し。意味がわからないと嘆いている暇があるならその時間でまた別の事をしてみた方がいいと思うんだがな。

 理解できないことと言えば、なんでゼウスは老人とも言えるような年代の姿をしているんだろうな? ギリシャ神話が全盛の頃の平均寿命と言えばおよそ40程度。人間の最盛期がおよそ25から35程度までと思われていた時期なのだから、今のゼウスの年齢は結構な年だと扱われるはずだ。

 ついでに身体がある程度以上老いると、感覚が鈍ったりすることもあるはずだ。飯を食べても繊細な味を感じることができにくくなったりするし、老いることに意味があるとすれば威厳を出すくらいの理由しかないと思うのだが……。

 まあ、良い。別にゼウスが威厳を出すためにあのくらいの年代の姿でいようが、実は趣味であろうが、なんであろうが構いやしない。俺はいつも通りにカレーを作って弟妹達の来訪を待つだけだ。

 

 ……ゼウスの分の椅子や食器も用意しておく必要がありそうだ。陶器や磁器を作るには時間が無さすぎるし、錬金術でそれらしいものをでっち上げてやればいいか。本番はまた今度と言うことで。

 で、食事のついでにこれからどうするつもりなのかを聞いてみるか。流石に今の状態のクロノス(クソオヤジ)をどうこうしたりはしないと思うが、もしもやる気なら自分一柱でやってくれと言うつもりだ。俺は別にギリシャ神話がいつまでたってもオリュンポスの神々が支配する神話にならなくたって構いやしない。むしろそんなもんになったら仕事が増えて面倒なことになりそうで嫌だ。面倒臭すぎる。畑の雑草を引き抜いてまとめて肥料になりやすいように切り刻んで微生物が活動しやすいように温めている地面に埋めに行くのを毎日毎日繰り返すのより遥かに面倒臭い。

 

 はぁ……。まあ、なった物はなったで仕方ない。現実を変えるなんてことはそうそうできやしないのだから、なんとかして平和的に話が終わるようにしとかないとな。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。