俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、見付ける

 

 歌には様々な種類がある。簡単に出てくるものだけでも、ロックやらバラードやらなにやらかにやらともう鬱陶しいと言いたくなるほどに多くの種類がある。

 俺は短調系統の曲を聞いたり弾いたりするのが好きだが、特に好きなのが『旧支配者達のキャロル』だ。響きに混じる絶妙な気持ち悪さと美しさ。歌詞の内容とリズム。非常にいい曲だと思っている。

 前世の俺は人並み程度にしか英語を話すことはできなかったが、歌の歌詞と言う形で覚えることはできたのでよく歌っていた。流石にデメテル達の子守唄にこれを歌ったことはないがな。しないと思うが発狂したら困るし、変な神の存在を信じてしまったらそれが作られてしまう可能性もある。神の思い込みとはそういう風に現実にも影響を及ぼすのだから恐ろしい。そして面倒臭い。さらに同時に便利でもある。

 

 そんな音楽だが、人間にはそれぞれ好みと言うものがある。自分が聞いてもどこが良いのかわからないような音楽を楽しんで聞いていたり、逆に自分がとてもいいと思った音楽が他の人に理解してもらえなかったり、そう言ったことは日常茶飯事だと言える。

 当然それは個人差であり、精神的な成長の仕方の違いやそれまでの経験、聞いている時の気分でいくらでも変わっていくものだ。

 さて、そんなわけで暇潰しに始めたちょっとした演奏会は、たった一柱だけの観客とも言えない相手に大受けしている。世界の全てを司ると言ってもその世界が作られた当時に音楽と言うものは体系化されていなかった。人間が音楽として体系化するまでは、音楽と言う概念は存在すらしていなかったのだ。

 だからこそ全てを司る地母神は音楽を司ってはいないし、音楽の神としての権能は宙ぶらりんになっていた。そこを俺がひょいとかすめ取っていったわけだな。

 同じように料理や鍛冶といった『不自然な物を作り上げる』と言う行為に関してはそれを現す概念が存在していない以上一番初めにそれを行ったもの勝ちだ。つまり、俺は今様々な製作系の権能を保有していると言うことになる。

 クロノス(クソオヤジ)がアダマスの鎌なんてものを使っていた時点で鍛冶辺りは誰かが使っているものだと思っていたが、どうもあれは大地と農耕を司る神として作り上げた農具としての扱いだったようで、武器としても使えるが武器として作ったわけではないらしい。

 作り方も鍛冶ではなく、農具を作り出すと言う権能で作った物。それでは鍛冶の権能は得られるはずもないだろう。

 こうやって行動次第で権能を得られると言うことを知ってから、俺は色々と権能を習得していった。それは音楽だったり、作曲だったり、鍛冶であったり、魔術であったり、数学であったりと幅広く。何しろ時間はたっぷりとあったし、多くの神は自分の権能を得るとそれ以外のことをあまり極めようとはしなくなるのがある意味では幸いした。デメテル達でさえ趣味として色々やってはいるが権能を得ようと行動することは無いし、実際に新しく権能を得ていない。自然に存在しない物を存在させるようにするのは発想の転換が必要となるが、俺はその辺りを色々と反則的な未来の知識で覆しているからな。

 ……まさか電子回路を作って超簡易的なパソコン作って核融合炉で電気作って動かしてみたら電子の神としての側面を得るとか予想外にもほどがある。やってみた俺も馬鹿だったとは思うが、できてしまったこの世界がある意味では一番馬鹿かもしれない。

 ちなみに電子の神としての権能でパソコンなどを使って作る絵や文章にかかる製作時間が減ったし、電子機器を作る時の労力が一段減った感覚がある。発電機が作れたことだし、今度はバイクでも作ってみることにしよう。エンジンはもちろん太陽炉で。

 

 ちなみにだが、料理の神の権能も俺の物だ。農耕の神の権能はクロノス(クソオヤジ)の物だが、作った物を俺が一番うまく扱えると言うのが中々に気分がいい。美味い食事は心を豊かにしてくれる。権能など無くとも農作はできるし、俺の作った家の近くにはクロノス(クソオヤジ)の睾丸が埋まった畑があるからな。農耕の神の祝福(笑)があるんだろう。持ってきておいてよかったよ。

 


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