俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の眷属、死にそう

 

 ヽ(゜∀。)ノ アビャー

 

 ……はっ!? お、俺はいったい何を……?

 確か、俺はいつも通り地下の鍛錬場で修業をしていたはずだ。そこで―――

 

『新しい修行だ。受けてみろ。本気でやれば強くなれるぞ?』

 

 そう、神様に言われて新しい修行をしてたんだ。

 ……そこからの事を思い出そうとすると、頭痛がする。思い出してはいけないことのような気がする。手が震える。膝が笑う。

 ただ、それでも内容だけはしっかりと頭に入っているし、身体に染みついている。いったい何がどうなったのかはわからないが、ともかく神様の言うことに嘘はなかったということだろう。

 それに、いつ更新したのか覚えがないが手に握っていたステイタスを写した紙の内容が覚えていた最後の物より遥かに進んでいた事からもそれが伺える。

 

 一番伸びたのは耐久。次が敏捷でさらに次が器用だ。魔力と力はそれらに比べれば伸びていないが、それでも暫くダンジョンに籠ったくらいには延びている。

 ……それと、発展アビリティが何故か伸びている。発展アビリティってのはレベルが上がらないと伸びないって聞いてたんだが、なんだこれ。伸びる物なのか? いや、伸びてるんだから伸びるんだろうが、ここまで一気に伸びるのか。いや、ここまで一気に伸びたからこそ発展アビリティも伸びたのかもしれないが。

 

 しかし、耐久が一気に伸びる修行か……どう考えても相当痛めつけられたとしか思えない。敏捷が伸びていることからして、物凄い速度と量で小型の魔法でも撃ち込まれたんだろうか。そうすればよけきれない分は耐久が伸びる方に働いて、よけるのに敏捷と器用が必要になるんだろうが……いったいどんなものを撃ち込まれたんだろうか。貫通されたような痕は無いし、火傷の痕も無い。まあ、エリクサーがあれば簡単に治ってしまうんだが、あれは値段が値段だし修行で使うようなことは無いだろう。回復魔法なら……まあ、あり得るか?

 ……回復魔法が使えるような奴がこのファミリアにいただろうか? いなかった気がするが、まあ神様が自ら使ったのかもしれんな。

 神様はおよそ何でもできる。なにしろ自称ではあるが『およそ全能』と言っていたのだから。あの神様は決して嘘はつかない。嘘のようなことを言っていたとしてもそれは別の方向から見れば真実であり、かつ何らかの形で言い逃れの言葉を用意しているのだ。

 例えば、枕詞として使われる『あくまでも可能性の話ではあるが』という言葉。『可能性』という言葉は嘘をつくときに非常に便利であるらしい。何しろ人間に想像できるあらゆる現象はその全てが実際に起こりうる出来事であり、可能性としてまったくもってあり得ない、つまり完全に0であるとは言えないのだとか。そして完全に0でなければ無いとは言えず、どれだけ微量の可能性だとしてもそれは『ある』として扱われる。つまり、『可能性がある』と言われればそれは嘘にはならないわけだ。かなり卑怯臭いが、それでも隠し事をするのと嘘をつくのは違う。嘘をついていることや、隠し事があるということは大体の神にはわかってしまうが、内容についてごまかせないわけではない。

 この世界においては、神とは完璧な存在ではない。特に、人間と変わらないように能力を抑えている状態では。

 

「考え事は終わったか? 昨日の続きだ。今回は少々辛いかもしれんが、まあ今なら死にはしないだろう。気を抜かなければ」

 

 目の前に鉛色の巨人が降り立ち、岩のような武骨な大斧を振り回す。

 

「『尋常なる十二の試練』。互いの命を合計十二として命を削りあう。最終的に命のストックが0となった時、より多く相手の命のストックを減らしていた方の勝ちとなる。……『非情なる十二の試練』はまだ早かったようだからな。こっちに切り替えた。さあ頑張れ」

 

 ………………………………。

 

  ヽ(゜∀。)ノ アビャー

 

 


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