俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、一つ学ぶ

 

 サッカーと言うスポーツがある。十一人を一チームとして扱う球技で……実は俺もよく知らん。知っていることと言えばオフサイドと言うめんどくさいルールがあるとか、必殺シュートで人を吹き飛ばす高校生が居たりするとか、自分の身体より大きなタイヤとのぶつかり稽古でゴールを守る神の手を生み出したりする英雄的なプレイヤーがいるとか言うことくらいだ。多分アニメや漫画の知識が混ざってるが、日本の国技であるSUMOUのことを考えれば普通かもしれない。まあ冗談だが。

 だが、そんなことを言うと本気にしてしまう者達もいる。日本びいきで忍者がまだ存在していて、アニメで見るような魔法じみた忍術を使えるのが忍者だと思っているような奴らにこういうことを話してしまうと、色々話した末に納得してしまうのが多いのだ。

 例えば、相撲と言うのは本来國津神と呼ばれる日本の土着の神にその年に取れた一番いい作物などを奉納する際の演武から来ているものであり、一昔前では人間でありながらその身に神を降ろしていたRIKISHIが存在していたとか、現代に残る相撲において審判役である行司がなぜ宮司に似た姿で現れるのかと言う理由に神の前で行われることなのだから大きく動く必要のない行司は正装で、同時にRIKISHIは神々に隠さなければいけないようなものは一切所持していない、これは正々堂々と行われる儀式であると周知させ、同時に神の歓心を買うためにも最低限隠すべき場所以外は隠さないあの姿で現れるようになったのだとか、正式な記録は残っていないことになっているが大昔に戦いの神と闘争の神が互いを高め合うためにしていた武器を使わない稽古を見た人間がそれをSUMOUとして広め、年に一度の収穫祭で祀る神に『貴方様の庇護の下、こうして今年も生きていられます』と見せると言う役割にも変化していったと言われているだとか……まあ、そう言った冗談のような事でも本気にしてしまう者はいる。

 そして何が怖いって、できて当然とばかりにちょっとした非常識な技術を見せてやるとそれを熱意でクリアしてくることがたまにあると言う点だろう。思い込みの力は凄いと言うこともあるが、いくら思い込みが凄いからと言って当然のように無音無動作からの寸勁とかできるようになってるってマジでどうなんだ。確かに俺は普通にできたし教えたのも俺だけどさ。

 

 何が言いたいかと言うと……冗談でも『カレーには中毒性があるから一月に一回は食べないと身体が腐るよ』とか言うもんじゃないってことだな。神々の場合、思い込みでマジで身体が腐り始めやがる。精神生命体相手に本気で騙す感じの嘘は良くない。一つ賢くなった。

 そして俺は月に一度、カレーを作って弟妹達に食べさせている。そうしないと弟妹達の指先がマジで一度腐りそうになってしまったからだ。以前言ったのは冗談だと言ったはずなのに、一番驚いたのは俺だと言う自信がある。冗談だったはずなのに、なんでそんな冗談を真に受けて本当にするくらいまで思い込んだのやら……。

 

「カレー……かれぇ……かるぇぇぇぇぇぇ……」

「……よく食うなぁ……おかわりは?」

 

 六つの皿が俺に差し出される。多い分はヘタレたクロノス(クソオヤジ)とおふくろさんの分だ。ポセイドンへのご褒美としてカレーを作った時、色とか形態が気持ち悪いと言われてつい『カレーは若返り効果がある』と言ってみたらおふくろさんが全力で食べたいと言い始め、いつの間にかこうなってしまった。ゼウスがこの光景を見たらいったいどう思うんだろうなぁ……などと考えつつ、俺はぱぱっと皿に白飯を盛り、ルーをよそっていく。俺はまだ一口も食べていないのに何故だろうな。作っておいたカレーが無くなりそうだ。クロノス(クソオヤジ)もおふくろさんも俺たちの体格に合うように化けているってのに、本当によく食う奴らだ。

 ……と言うかデメテル、こっち来い。口の周りが凄いことになってんじゃねえか。まったく、いつまで子供気分なんだよ。飯くらいちゃんと食べられるようになってくれ。材料がもったいないだろ。

 それとハデス。お前何をどうしたら顎の先に飯粒がくっつくんだよ。箸で食わせてるわけでもないんだからそんな所についたらわかるだろ普通。

 

 やれやれ、結婚もしていないのに図体ばかり大きな子供が増えた気分だ。

 

 

 

 オリュンポスの神→カレーを食べないと死んじゃう病(マジ)患者

 


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