俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、排除する

 

 知らないものを我慢するのはたやすいことだ。なにしろその行為、あるいは物の事をそもそも知らないのだから、我慢しているという認識すらないまま我慢を続けることができるだろう。

 しかし、一度知ってしまうとそれを我慢するのは難しくなる。その行為、あるいは物が魅力的であればあるほどに欲は募っていくものだからだ。それは人間であろうと神であろうと変わらない。美味い物を食ったことのない神格が初めて本当に美味い物を食うと、それをひたすら求めるようになったりもする。人間も同じく。

 それはつまり、俺の作った世界の中で初っ端から神の力をかなり強く使ったせいで世界から弾き出された目の前の神格は、これからどれだけ急いでも数百年は俺の作った世界には入れないということになる。せっかくなかなか面白いことをやっていたのに、残念だったな。

 

「頼む!俺をまたあの世界に入れてくれ!」

「何度も言っているがあと二百年は見てもらうぞ。権能の欠片から作った式はその権能の元の持ち主がこちらの世界に戻ってきたときに情報と一緒に持ち主に戻るようになっている。要するに、もう一度作るのには時間がかかるし、短期間に何度も引き剥がしてくっつけてを繰り返すと権能が本格的に剥がれ落ちて縮小するからお勧めできん」

「それでもいい!だから頼む!」

「それに、お前は自分の失敗で戻ってきたんだろう? 残念ながら俺にはこれから新しい客を入れていかなくちゃならんのだ。横入りはだめだぞ?」

「うぐ……わ、わかった。もう一度並べば入れてくれるんだな?」

「ただ、次は時間がかかるぞ? なにしろお前は一度違反をしているわけだから、そのあたりのことを調べておかないと入れることもできん。まあ、俺の世界のことだし当然の話だと思うが」

「……わかった。並ぶ。整理券をくれ」

「はい毎度」

 

 いやはや全くぼろい商売だ。式を作るときにやってる権能の解析でいくらか使い方が増えたし、ついでに権能の欠片から出る波動その他を使ってちょっとしたいたずらもできる。具体的には人除けとかそういうのだが、最近の人間はちょっとした試練なら結構超えてくるからな。ちょっとしたとかそういうレベルじゃない試練を用意しないといけないんだが、それをやると周りに被害が出る。ただでさえゼウスから『アタマオカシイヨ・・・』と言われるようなペットがそこそこいるんだから、そいつらに任せればいいのかもしれないが……あまり生き物に任せるのは好きじゃないんだよな。

 ここはやっぱりゴーレムか。あるいは昔にヘファイストスが作った青銅の巨人みたいなものを俺が作るってのもありかもしれない。俺が作るとなんでか奇妙に性能が上がるんだが、鍛冶神と太陽神、電子機器の権能なんかがかかわってるのかね?

 


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