俺は竈の女神様   作:真暇 日間

312 / 330
竈の女神、町作り

 

 少しずつダンジョンのある地が回るようになってきたので、俺は少しずつ手を引いていく。鍛冶も、調薬も、どんどんと俺の手から離れている。実に良いことだ。

 俺はのんびりとやりたいことをやって、そして眷属たちは同じ眷属を家族のように扱い、家を守る。

 まあ、俺のファミリアはホームが狭いが、新しく裏手にもっと大きいのを建てようとしている最中だから今以上に増えても問題ない。実際に増やすかどうかはまた別の話だが。

 

 で、今使っているホームが旧ホームになったら、そこを完全に食事処にでもしようと思っている。魔法を使って空間を少々弄って、時間も多少偏らせて早く過ぎる場所と遅く過ぎる場所の二つを作って食料の保存及び発酵などの調理を進める場として使う予定だ。結界で区切ってからその一部を減速、別の一部を減速させた分だけ加速させることで、結果的に結界内での時間的な齟齬を調整していたりする。このようなちょっとした工夫で世界に対しての誤魔化しをかなり楽にできたりするんだが、神の中でも研究者気質な奴でもない限りはそんなことは知らんとばかりに力任せにやっていたり、元々時間を司る神格でそんなことを考えなくとも時間が意思に従うような奴だったりするから必要のない思考だったりするからな。俺みたいに無駄に長生きしているくせに妙に密度の濃い神生送っているとそういったことも知れてしまう。何でも知りすぎてしまうと世界から色が失われてしまうとか言われることもあるが、世界の何を知った気になっていると俺からは言わせてもらいたい。

 知っても知っても後から後から知りたいことが出てきてしまう。賽子で狙った数字を出す方法からダーツやカードなんかの賭け事関連の物、実際の戦闘にも使えるちょっとした豆知識、武術と舞踊などの共通項から導かれる人を魅せる行動。知ろうとすれば本当に様々なことが知れるし、知るための努力にも果てはない。神であろうと技量で成長することはできるし、それまで全く知らなかったことを自身の権能に関することとして取り入れられるものであれば取り入れていけば、さらに成長していくことができるだろう。

 生きてさえいれば……否、存在さえしていれば、その存在は未だ途中の存在だ。それが完了する時は、それが存在しなくなった時だけだ。成長のためにはそういった自覚が必要だ。

 

 そんなことを考えつつ、俺は久し振りに布を織っていた。ダンジョンから採れたドロップアイテムの糸を織り、布とする。魔物由来の糸から作られた布は頑丈で、鎧下としては非常に良い物となる。下着としてもな。

 ここに刺繡やら何やらをすることで布に魔法的な効果を込めることもできたりするんだが、迷宮に入り始めたばかりのひよっこに良すぎる装備は命のやり取りを忘れさせ、無謀な行動を取るようになりかねない。だから俺は基本的にそいつらの実力に見合った装備をくれてやっている。

 本当ならそいつとの間に契約を結び、持ち主と共に成長していく装備が一番ではあるんだが……まあ、そういう装備は無茶をしやすい新米にはあまり合わないからな。

 あと、ダンジョンを中心として少しずつ街を作っていこうと思う。ダンジョンから手に入れたものを、すぐに受け取って加工し、道具へと変えていく探索者の町。そういう町が一つか二つあったほうが色々とやりやすい。

 今はまだ規模も小さく、町というより村……どころか集落と言えればまあ良い方という程度だが、それはこれからに期待することにしとこうか。

 ちなみにだが、ゼウスはヘラから逃げ回っているためにこの場所にはなかなか寄り付こうとしない。月一でカレーを食べにくる以外はできるだけ来ようとしないし、その月に一度のカレーも時期が少々不規則になっている。浮気なんてするからそうなるんだと言ってやりたいが、言ったところで何も変わらないだろうしまあどうでもいいか。いつものことだ。

 

 いつものこといつものこと。いつもどおり、この場所を豊かにしていくとしようかね。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。