俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、眷属を作る

 

 この世界にはつい最近までモンスターが跋扈していたため、孤児が非常に多い。そうしたのは俺だが、代わりに産まれてくる数も多い。死人が多い世界だと、それに伴って生まれてくる人数もまた多くなってくるもんだ。

 ただ、いくら生まれる数が多くてもそれ以上の速度で死んでいけば当然減っていく。殺されるだけでなく、病や事故、そして寿命でも人間は死んでいく物だからだ。

 

 だからこそ生物界においてはかなり弱い存在である人間達は、自分達以上の存在の庇護を受けようとする。そう言った存在はできるだけ大きく、そして自分たちにとって親身に接してくれる存在であればあるほどにいい。つまり、自分たちの種族から生まれた英雄、そして英雄から生まれた神格と言った存在が最も当てはまるわけだ。

 英雄と言っても大概は既に死んでいる存在であり、実質的には英霊と呼ばれる物となる。なかでも信仰を受けて英霊神と呼ばれる存在は、自身が生きていた頃に行ってきた様々な史実によって嗜好が変わるし、守ろうとする範囲も変わる。無辜の民草を守ろうとするもの。勇気ある者に加護を与えるもの。無力な者が蹂躙されるのを楽しむもの。人間に様々な奴が居るのと同じように、神にも様々な存在があると言う訳だ。

 

 そんな世界の中では、様々な町や村では捨て子や身売りと言う物が割とよくある。食べる物が足りなかったり税が重かったりして一家の全てが死んでしまうよりも、一人や二人を金にしたり口減らしを行う事で社会を保つ。動物のそれと何ら変わらないものではあるが、そう言った物は生物としては実に効率的な判断だと言える。

 要するに、そうして自分から売られる奴や自分の子供を売りに出してしまう奴の前に現れてそれなりの金で買ってやると、不思議なことに感謝すらされることが多い。なんとも不思議な事だな。

 そうやって買い集めた様々な種族の子供たちを、冒険者としてオラリオのダンジョンに放り込む。だが、そのまま放り込んでは何の成果もあげることなく死ぬことになるのは確定しているのでその前に本人達の意思確認と適性調査、そして訓練を付ける。

 まずは意思確認。ここでずっと生きて行くことになる訳だが、どうやって生きて行くか。例えばダンジョンに潜ったり、俺の作った畑で様々な作物を育てたり、畜産に手を出してみたり、あるいは俺の店で売り子をやってみたりとその道は様々だ。ダンジョンに行きたい奴もいるだろうし、ダンジョンで取ることができる様々なアイテムはそれを素材に様々な道具を生み出すこともできる。そう言った物を作る鍛冶師や薬師、道具作製師等も俺が教えられる範囲であれば道を用意してやることもできる。

 意思の確認が終われば、次にやるのは恩恵を顕在化させること。何もなかったところに新しく恩恵を刻んでいるようにも見えるから基本的には『恩恵を刻む』と言われることも多いが、実際には刻むと言うのは不正確だ。どうでもいい事かもしれんが。

 そしてそれぞれのやりたい事や適性に合わせて仕事を振り分け、知識を与えていく。ダンジョンの探索者となろうとする者にはダンジョンのモンスターと戦い、生き延びる術を。地上で暮らす者達には畜産や農耕と言った生活の術を。ダンジョンから出てくる物を加工する道に進んだ者にはそれぞれの道具と技術を。金が無いし、金があってもできる奴が居ないもんだから久し振りに作りに作った。その際、見本として打って見せた武器に魅せられる奴とかが出たりもしたが、まあ些細な事だ。

 だが、武器に関しては俺が権能を独り占めしていた頃に作った物の方が大分いい物だったりするんだがな。実際に人の身でこんな武器が打てるのかと思ってた奴に神としての力をフルに使って打った一振りを見せたらかなり驚いていた。まあ、人間の身体で人間にもできる技術だけで作った剣は、十分に凌駕できる可能性はある訳だ。武器の細かい性質とか、そう言うのが人に合うかどうかってのも重要だし。

 


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